甘え嬢ずな海部江さん。

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7ー6

いつの間にIDを登録したのだろう。
抜け目がないというべきだろうか。
何というべきなのだろうか。

なんとか頑張ります。
真優はそう打つと、そのまま卯佐子へ送信した。


薄暗い廊下。
そこをちょこちょこと歩く真優。
先ほどまで自身がいた部屋を通り過ぎ、隣の部屋の前までやって来た。


この先に翔子がいる。
その事実に妙に緊張する真優であった。

いつも教室で会う。
それに、彼女と二人で遊んだこともある。
それなのに、緊張してしまっていたのだ。
その理由は、彼女自身にも分からなかった。


「行くよ行くよー！」

「ちょ、ちょっと待って下さい！」

ガチャリ。
ドアが開かれた。
中にはクラスメイト達が何人もいた。
その中に、彼女もいた。

緊張しているのだろうか。
笑顔がぎこちない。
それに、身体がカチコチに固まっているようにも見えた。

これは助けないといけない。
しかし、どうするべきだろう。
彼女の両側は、既にクラスメイトが固めている。
スクールカーストの上位組だ。
下手な関わり方をすれば、余計な問題が起きるかもしれない。
そうなれば、彼女にも迷惑がかかる。

「真優ちゃんも何か曲予約しなよー。」

「……え？あっ、そうですね。」
どうしようか。
最近流行っている曲など分からない。
何か自分でも歌えるものはないだろうか。
検索していく真優。

ない。
違う。
知らない。
どうしよう。
……あった！

「おっ？あった？」

「はいっ！この曲です！……あの、どうやってその……予約？すれば良いんでしょうか？」

「うん、私やっておくよ。お、おう……随分珍しい曲を歌うね……。」

あ、引かれた。
しかし良かった。
無事に出来そうだ。

「……ううっ。」
ぶるっ。
身震い。

安心したからだろうか。
寒気がする真優。

「どうしたの？」
彼女の異変に気づいた一人。

「……すみません、ちょっと外へ行きたいのですが……。」
ばたばた。
廊下へ戻ろうとする真優。

チラリ。
翔子の方を見る。
笑顔ではある。
しかし、俯き加減で心配だ。

「今だったら真優ちゃんの曲まで時間あるから大丈夫だよ。」

「すみません、では……。」

翔子も心配だ。
しかし、今は自分のことを優先しなければならない。

「いってらー。」

ばたばた。
真優は背後でクラスメイトの声を聞き、慌てて廊下へ出た。