甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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空いている席はないだろうか。
キョロキョロ。
二人がそれぞれ辺りを見渡す。

運が良い。
調度二人が座れる席が空いた。


一安心。
なんとか席に座れた。
そんな時にふと、翔子に対して思うことが出た。
新たな心配事だ。
レジでろくに注文も出来ないような翔子。
そんな彼女は、今までどう生きてきたのだろう。

「ちなみに、今までって注文はどうやってたんですか?」
もしかしたらとても失礼なことかもしれない。
しかし、それでも真優はそのことが気になってしまった。

「今までは、その……梨華ちゃんにお願いしてて……。」

梨華。
聞いたことがあるな。
あぁ、思い出した。
彼女の妹か。
納得する真優であった。

「そうなんですね。」

「……だから、雨枝さんがいてくれて良かったよ。ありがとう。」
にっこり。
笑みを浮かべる翔子。

「っ!?」
声にならない短い息が真優の口から漏れる。

ドクン。
心臓が口から出そうなほどに跳ね上がる。
そして、急激に顔が熱くなる。

何だろう。
理解出来ない。
分からない。

彼女の笑みなら何度も見た。
しかし、今回のものは何かが違う。
その何かが分からない真優であった。

その正体は分からない。
しかし、それ自体は彼女にとって好ましいものではあった。

「あ、雨枝さん?」

おっと、いけない。
ハッと我に帰る真優。

そうだ、今は翔子と二人きりなのだ。
二人きり……。

「あっ、いえ、だ、大丈夫ですよ……。さ、早速食べましょう!……い、いただきますっ!」
慌てて取り繕う。
そして、真優はいそいそとハンバーガーを口へ運ぶのであった。

「うん、いただきます。」
翔子も続く。
先にジュースから口にし、フライドポテトから食べ始めた。

「んぐっ!?」
しまった。
勢い良く口内へ入れ過ぎた。

喉が詰まってしまった真優。
ドンドンと自身の胸を叩いている。

「こ、これっ!これ飲んで!」
彼女へ慌てて差し出す。
それは、先ほどまで自身が飲んでいたジュースだ。

真優は、ろくに確認せずにそれを受け取る。
そして、勢い良く飲んだ。

口一杯に広がる蜜柑の酸味。
オレンジジュースだ。


「助かりました……。ありがとうございます。」
話せるくらいに余裕が出来た頃に、真優はそう言った。

「うん、どういたしまして。」
役に立てたようだ。
そう思い、上機嫌な翔子であった。
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