甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「えへへ……うふふ……。」
口元が緩んでいる翔子。

いつもは表情の変化があまり芳しくない翔子。
彼女は整った顔。
所謂クールビューティーである為、冷淡なイメージを持たれることや、近寄りがたい印象を受けるだろう。
しかし、今の彼女は違う。
クールな美少女ではなく、のんびりと優しく、穏やかなお姉さんのような雰囲気であった。

「すみません、今少しお話良いですか?」

「え?あの……。」

「すみませんっ!私達今急いでるので、とっても!」
そう言うと、真優はやや乱暴に翔子の手を握り、逃げるように彼女と小走りで退散した。

背後から何かを言っていた。
しかし、もうそんなことは真優の知ったことではなかった。


翔子が声をかけられ、しどろもどろになる。
そして、そこへ真優が割って入る。
今日だけで何度目だろう。

こんな様子では日が暮れてしまう。
しかし、一度言ってしまったことを引っ込めるのは格好がつかない。
仕方がない。


「それなら今日この後一緒に妹さんの誕生日プレゼント探しませんか?」

真優が教室で言った言葉。
断られることを前提にしたものだ。
しかし、真逆の返答が来た。
翔子は目を輝かせ、一緒に行きたいと言ったのだ。

あぁ、また見える。
嬉しそうにピコピコと動く耳。
ふさふさで、それでいて大きな尻尾。
それがゆらゆらと動いている。
そんな気がした。


「どこのお店行こうか?」
ニコニコ。
可愛らしい笑顔で言う翔子。

クラスメイト達が見たら嫉妬されそうな笑み。
それを今、真優は独り占めしている。

妙な気分だ。
今まで味わったことのない感覚。
それが真優の心を支配していた。

この気持ちを表現するのは難しい。
しかし、ただ一つ。
ただ一つだけ確実に分かることがあった。
それは、この感覚は彼女にとって決して嫌いなものではないということであった。

何なんだろう。
理解できない。
分からない。
でも、これを求めている。
それは分かる。


「……ん。……雨……さん!雨枝さんっ!」

「はっ!?え?あっ、はい。」
しまった。
意識が飛んでいた。

「大丈夫?ボーッとしてるけど……どこかカフェにでも寄って休憩する?」

「い、いえ。大丈夫です。さ、買い物を続けましょう。」

「うん。それで、何を買えば良いのかな?」

さて、困った。
どう返答すれば良いか分からない真優。
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