甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「海部江さん。おはようございます。」

「あっ、雨枝さん、おはよう!」
ガタッ。
無表情が一変。
笑顔で立ち上がる。

翌日の教室。
真優が来た時には、既に翔子は自身の席に座っていた。

昨日までこんなフランクな挨拶をしていなかった。
そんな気のする二人。
しかし、昨日起きた放課後の一件で一気に距離が縮まった。
そのことにより、こうして挨拶をするようになった。

前の席に座る翔子。
後ろにいる真優へ顔を向ける。

ジッと真優を見る翔子。
その視線に気がついた真優。
「うん?……どうしました?」


「え?なんでもないよ?ふふ。」
何も話していない。
それなのに、微笑む翔子。

嬉しかったのだ。
クラスメイトとこうして普通に挨拶を交わす。
そんな当たり前のことを、彼女は出来ていなかった。
しかし、今日はこうして真優と出来た。


その様子を見ていたクラスメイト達に衝撃が走る。
それは、翔子が笑った姿を見たことがなかったせいだ。

笑顔を見るどころか、おそれ多くて近寄れた者はいない。
所謂高嶺の花。
そんな存在になっていた翔子。

皆が遠巻きに見ていた彼女。
それが今朝急に真優と仲が良さそうになっているのだ。
不思議でならなかった。


授業が始まった。
今まで気にならなかったが、翔子には一つ気になることがあった。

後ろに座る真優。
翔子の妹である梨華と同じような体格だ。
中学生であるが、小学校低学年のような見た目。
そんな彼女と似た図体。
つまり同じように幼い見た目、そして小さいのだ。

そんな彼女が背の高い翔子の後ろにいる。
黒板の文字が見えないかもしれない。

すすす……。
上半身だけ少し右にずれてみる。
こうすれば、後ろの真優にも前が見えるだろう。
翔子はそう思ったのだ。

「……?」
一方の真優。
翔子の思いなど分かるわけがない。
その為、急に斜めに偏り始めた彼女に疑問を浮かべるだけであった。

少し腰が痛くなってきた翔子。
すすす、すすす……。
今度は左に傾くのであった。


以後、その繰り返し。
そして、一時間目が終わった。

「……い、痛たたた……。」
腰を擦る翔子。
その顔は痛みのせいで少し険しいものになっていた。

つんつん。
そんな彼女が肩をつつかれた。

翔子が振り向く。
すると、それは真優がしたことだと分かった。
机に突っ伏し腕を彼女の方へ伸ばしていたのだ。
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