甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「い、いえ……。」
もたれかかられた女子生徒。
心なしか耳が赤い。
そして、小声ではあるが、裏返ったのも翔子には聞こえた。

あぁ、恥ずかしい。
やってしまった……。
穴があるなら埋まりたい。
翔子は、自身の顔が真っ赤になっているのが、その熱で分かった。


時が進み、入学式が終わった。
経過した時間が早いのか、それとも遅いのかは分からない。
立ちあがり、教室へ向かう新入生に紛れて歩いていく翔子。

先ほどぶつかってしまった彼女は、クラスメイトとなる子なのだろうか?
もしそうだとすれば、少し気まずい。
変な生徒だと思われているだろうか?
それとも不真面目な者だと思われているかもしれない。
そんな思考が翔子の頭の中をぐるぐると回る。


あっという間であった。
彼女のクラスの前に到着してしまった。
周囲には、既に何人かで固まっている生徒達がいる。

皆、新一年生だ。
そのはずなのに、もう数名ずつでかたまっている。
驚きを隠せない翔子。
吐き気がするほどの不安を抱き、室内へ入る。

平穏な学園生活。
ひっそりとしたもので良い。
目立たなくて良い。
翔子は刺激ではなく、平和を望んでいた。

教室に入った翔子。
その途端、今までそれぞれ話していた者達の視線が一手に集まる。

そこまでされてしまえば、多少鈍感な翔子にも分かってしまう。
今、自分は注目されている。

どうしたのだろう。
なぜ皆の視線が集まってしまうのだろう。
皆目検討のつかない翔子。

自身の席に座る。
すると、そのまま俯いてしまうのであった。
これ以上見られないようにと願うのであったのだ。


担任教諭がやって来た。
リクルートスーツに身を包んだ女性だ。
眼鏡をかけたキリッとした若い彼女を見て、翔子は少し緊張した。

背筋を伸ばし、真剣に話を聞く姿勢になる。
なんてことのないオリエンテーションだ。
今後の流れと彼女自身の自己紹介、そしてクラスメイト達の自己紹介の時間となった。

翔子の番になった。
心臓がうるさい。
立ち上がると、足がガクガクと震えていることを意識してしまった。

「……あ、海部江翔子です。よろしくお願いします。」
ぼそり。
小さな声で言う。

緊張で上手く話せなかった。
後悔する翔子。
しかし、その態度が、むしろ周囲には良い印象であった。

クールビューティー。
高嶺の花。
翔子は、周囲にはそのように見えていた。
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