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その声を聞くと、翔子の曇っていた気持ちがパーッと晴れた。
それは、一時的なものである。
しかし、それは彼女にとって必要不可欠なものであった。
「梨華ちゃん!」
翔子の口から出る声が明るい。
梨華。
翔子の妹だ。
翔子とは真逆で背が低く、顔もそれに合う幼い見た目をしている。
彼女のことを知らない人間が一目見ただけでは、小学校低学年だと間違えてしまうこともあるだろう。
そんな彼女も様既に制服を着ていた。
地元の中学校のものだ。
翔子が椅子から立ちあがる。
そして、そんなのであった彼女へ駆け寄るのであった。
覆い被さるように抱く。
身長のせいで、梨華の顔が翔子の胸に埋まってしまう。
息苦しさを感じながらも、それを受け入れる梨華。
「しっかり寝れた?」
ぷはっ。
未だに抱きつかれながらも、翔子の胸から脱出した彼女がそう言うのであった。
「……うん……。」
目を背ける。
梨華は、背中に感じる翔子の両腕の拘束が弱くなったのを感じた。
そのことから、彼女が嘘をついていることがすぐに分かるのであった。
「今日頑張って学校行ったらご褒美あげるから。ね?」
優しく囁くように呟く。
「うんっ!頑張る!」
梨華の言葉を聞いた翔子。
今にも飛び上がりそうなほど喜ぶのであった。
それと同時に、彼女の腕の力も強いものに戻った。
良かった。
元気になってくれた。
ホッとする梨華。
「いってきます。」
玄関の扉を開ける。
まだ少し肌寒く、暗い。
街路樹には満開の桜が咲いた。
それは翔子の入学を祝っているようであった。
「いってらっしゃい。」
手を振る梨華。
その微笑みは、慈愛に満ちていた。
降り注ぐ桜の花弁。
肩や頭に乗るそれらを気にせずに通学路を歩く翔子。
まだ少し早い時間だからだろうか。
学生は全くいない。
それどころか、通勤するサラリーマンの姿すらちらほらしか見受けられない。
自宅付近の人通りが少ない地域はまだ安心出来た。
しかし、電車に揺られ、高校が近づくにつれて心臓がうるさくなっていった。
高校の最寄駅に到着する頃には彼女と同じ制服を着た学生が増えてきた。
その大半が真新しい制服を着ており、やや大きい。
ざわざわ……。
四方八方から話し声。
そんなことはあり得ない。
翔子はそのように自身に言い聞かせる。
しかし、皆が自分を見て笑っているように思えて仕方がなかった。
それは、一時的なものである。
しかし、それは彼女にとって必要不可欠なものであった。
「梨華ちゃん!」
翔子の口から出る声が明るい。
梨華。
翔子の妹だ。
翔子とは真逆で背が低く、顔もそれに合う幼い見た目をしている。
彼女のことを知らない人間が一目見ただけでは、小学校低学年だと間違えてしまうこともあるだろう。
そんな彼女も様既に制服を着ていた。
地元の中学校のものだ。
翔子が椅子から立ちあがる。
そして、そんなのであった彼女へ駆け寄るのであった。
覆い被さるように抱く。
身長のせいで、梨華の顔が翔子の胸に埋まってしまう。
息苦しさを感じながらも、それを受け入れる梨華。
「しっかり寝れた?」
ぷはっ。
未だに抱きつかれながらも、翔子の胸から脱出した彼女がそう言うのであった。
「……うん……。」
目を背ける。
梨華は、背中に感じる翔子の両腕の拘束が弱くなったのを感じた。
そのことから、彼女が嘘をついていることがすぐに分かるのであった。
「今日頑張って学校行ったらご褒美あげるから。ね?」
優しく囁くように呟く。
「うんっ!頑張る!」
梨華の言葉を聞いた翔子。
今にも飛び上がりそうなほど喜ぶのであった。
それと同時に、彼女の腕の力も強いものに戻った。
良かった。
元気になってくれた。
ホッとする梨華。
「いってきます。」
玄関の扉を開ける。
まだ少し肌寒く、暗い。
街路樹には満開の桜が咲いた。
それは翔子の入学を祝っているようであった。
「いってらっしゃい。」
手を振る梨華。
その微笑みは、慈愛に満ちていた。
降り注ぐ桜の花弁。
肩や頭に乗るそれらを気にせずに通学路を歩く翔子。
まだ少し早い時間だからだろうか。
学生は全くいない。
それどころか、通勤するサラリーマンの姿すらちらほらしか見受けられない。
自宅付近の人通りが少ない地域はまだ安心出来た。
しかし、電車に揺られ、高校が近づくにつれて心臓がうるさくなっていった。
高校の最寄駅に到着する頃には彼女と同じ制服を着た学生が増えてきた。
その大半が真新しい制服を着ており、やや大きい。
ざわざわ……。
四方八方から話し声。
そんなことはあり得ない。
翔子はそのように自身に言い聞かせる。
しかし、皆が自分を見て笑っているように思えて仕方がなかった。
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