甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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人は接する者によって、態度を変えている。
それは、多かれ少なかれある絶対のもの。
皆そのはずだ。

どんな聖人君子でも、絶対の平等などありえない。
差別や区別、優先順位の有無。
それがあって当たり前なのだ。

多かれ少なかれ、二面性があり、それが共存して一つの人格となっている。
それは皆が持っているものだ。
そのはずなのだ。


周囲の視線。
それが一変した。

無責任な尊敬や羨望の眼差し。
それが、無遠慮な嘲笑や蔑視へ変わった。

人間とは、身勝手な生き物だ。
自身の抱いたイメージ。
それとかけ離れた者を見ると、一方的にそれを否定してしまう。

完璧主義の押し付け。
二面性を認めず、皆は彼女に完璧を求めた。
たとえそれが本人の嫌がる行為であっても善意の押しつけでそれを行うのだ。


君はそんな子じゃない。

あなたには似合わない。

君の為に言っている。


本人のことを本当に考えていないエゴの塊。
彼らは、そんな心ない言葉を振りかざすのだ。


海部江翔子は目を覚ました。
外はまだ暗い。
目覚まし時計のアラームが鳴るのもまだ先のことだ。

もう一眠りしようか。
そんなことを思った。
しかし、彼女はそれを実行しなかった。


四月一日。
彼女が今日から通う高校の入学式、その当日である。
今日寝坊するわけにはいかない。

フラフラと洗面台へ向かう。
鏡に写る彼女。

目元から頬にかけて、何かが伝った跡があった。

ため息。
その正体と、理由が分かったからであった。

「しっかりしなきゃ……。」
ぽつり。
自分に言い聞かせるように呟いた。


これ以上は成長しないだろう。
彼女自身はそう思っていた。
しかし、両親はそう思っていなかった。

少し大きめな丈の制服。
それを着る。
袖は手の甲が少し隠れるくらいで、スカートもやや長い。

身長は低い方ではない。
むしろ高い方だ。
それでもまだ背が伸びる。
そう思われていたのだ。


リビングに向かう。
両親に挨拶を交わす。
既に用意されていた朝食。
椅子に座り、それに手をのばす。
しかし、やはりというべきか、それを口にすることは出来なかった。

さすがに何も口にしないのは良くない。
そう思った翔子は、それらと一緒に置いてあったホットココアを飲み干した。


「あっ、翔子ちゃんもう起きてたんだね。おはよう。」
翔子へ向けられた可愛らしい幼い少女の声。
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