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「……。」
無言な番仁朗。
しかし、それは今までのものとは異なるものであった。
「あまりうちの頭を困らせないでもらいたいな。」
鋭い声で、亥玄が言う。
「それは……すまなかったな。」
番仁朗の口から謝罪の言葉が出た。
普通なら、この状況において、そのような言葉が出るわけがない。
しかし、彼はそれを選んだ。
それほどに、亥玄の考え方を尊重していたということなのだろう。
「俺に謝れと言っているんじゃない。こいつに……うちの頭にだ。」
「あぁ、そうだな……。鼬原、すまなかった。」
「い、いえ!だ、大丈夫です!」
あわあわと答える華子であった。
「……なら俺は帰る。」
二人のやりとりを満足げに見て亥玄は踵を返そうとした。
「待て、鯉崎。」
番仁朗が彼を呼び止める。
「……?」
「……それ、掃除していけよ。」
番仁朗の視線の先には吹き飛ばされた扉、ガラスが散らばった床。
酷い有り様だ。
「……。」
視線を落とし、自身のやった惨劇現場を見る亥玄。
「おい。」
「っ!」
亥玄の無言ダッシュ。
少し遅れ、番仁朗が彼を追いかける形で室内から出ていった。
「さ、さて……仕切り直すとするか。」
疲労困憊。
そんな様子の飛鳥が華子へ言う。
「あ、はい。」
同じく疲れきっている彼女が返答する。
「鼬原が番長。それで合ってるってことなんだな?」
「……はい。」
「そうか。……その……意外だな……。」
絞り出したかのような言葉。
「あはは……多分、私が一番そう思ってます。」
「あはは……。それで、これからどうするつもりなんだ?」
「え?」
「あぁ、勘違いしないでくれ。別に圧力をかけるつもりはない。その……白辰と揉めてるんだろ?」
「そう……ですね……。」
「それについてはどうするつもりだ?」
「私は……その……。」
伝えよう。
きっと、彼が知りたいのはこれだ。
深呼吸する華子。
そして、胸を張り真っ直ぐに飛鳥を見る。
「……。」
「白辰との争いを……止めたいです!」
「……そう……か。」
「……はい!」
「良かった……本当に良かった……。」
「せ、先生……?」
「あぁ、すまない……。君のような優しい子がこの高校で過ごせていけるか心配だったんだ。……もし、不登校になってしまったら……もし、人の道に反するようなことをし始めたらどうしようかと……。」
無言な番仁朗。
しかし、それは今までのものとは異なるものであった。
「あまりうちの頭を困らせないでもらいたいな。」
鋭い声で、亥玄が言う。
「それは……すまなかったな。」
番仁朗の口から謝罪の言葉が出た。
普通なら、この状況において、そのような言葉が出るわけがない。
しかし、彼はそれを選んだ。
それほどに、亥玄の考え方を尊重していたということなのだろう。
「俺に謝れと言っているんじゃない。こいつに……うちの頭にだ。」
「あぁ、そうだな……。鼬原、すまなかった。」
「い、いえ!だ、大丈夫です!」
あわあわと答える華子であった。
「……なら俺は帰る。」
二人のやりとりを満足げに見て亥玄は踵を返そうとした。
「待て、鯉崎。」
番仁朗が彼を呼び止める。
「……?」
「……それ、掃除していけよ。」
番仁朗の視線の先には吹き飛ばされた扉、ガラスが散らばった床。
酷い有り様だ。
「……。」
視線を落とし、自身のやった惨劇現場を見る亥玄。
「おい。」
「っ!」
亥玄の無言ダッシュ。
少し遅れ、番仁朗が彼を追いかける形で室内から出ていった。
「さ、さて……仕切り直すとするか。」
疲労困憊。
そんな様子の飛鳥が華子へ言う。
「あ、はい。」
同じく疲れきっている彼女が返答する。
「鼬原が番長。それで合ってるってことなんだな?」
「……はい。」
「そうか。……その……意外だな……。」
絞り出したかのような言葉。
「あはは……多分、私が一番そう思ってます。」
「あはは……。それで、これからどうするつもりなんだ?」
「え?」
「あぁ、勘違いしないでくれ。別に圧力をかけるつもりはない。その……白辰と揉めてるんだろ?」
「そう……ですね……。」
「それについてはどうするつもりだ?」
「私は……その……。」
伝えよう。
きっと、彼が知りたいのはこれだ。
深呼吸する華子。
そして、胸を張り真っ直ぐに飛鳥を見る。
「……。」
「白辰との争いを……止めたいです!」
「……そう……か。」
「……はい!」
「良かった……本当に良かった……。」
「せ、先生……?」
「あぁ、すまない……。君のような優しい子がこの高校で過ごせていけるか心配だったんだ。……もし、不登校になってしまったら……もし、人の道に反するようなことをし始めたらどうしようかと……。」
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