はりぼてスケバン

あさまる

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「……。」
番仁朗は何も言わない。
ジッと彼女を見ているだけで微動だにしない。

「え、えっと……。」

「あぁ、ごめんごめん、座って。」

「はい……。」
促されるまま、用意されていたパイプ椅子に腰掛ける。

「そんなに緊張しないで。何か悪いことをして呼び出したわけじゃないから。」

「は、はい。」
安堵。
当たり前だ。
校則違反などしていない。

強いて言えば、先ほどの廊下を走らないというものだろう。
しかし、それはあくまで呼び出した後であるし、そもそもその程度ではこのようなことにはならないだろう。
それならばなぜ呼び出したのかという疑問が脳内に浮かび上がった。

上手く口が動かず、しどろもどろになってしまったからだろうか。
彼女の挙動が少しおかしく見えた。
それを、番仁朗が見逃さなかった。

「どうした?何かやましいことでもあるのか?」
低く脅すような声色。
生徒達とはまた違ったタイプの圧を感じる。

「い、いえ……そういうわけでは……。」

「ならなんだ?」

「そ、その……。」

「まぁまぁ、門屋先生、うちのクラスの生徒をあまり虐めないでやって下さい。」
あはは。
苦笑いで飛鳥が制止する。

「……いやいや、こいつが本当にここの番長がこの程度でビビらないでしょう?」

「それは……。」

「……え?」
ここの番長。
黒龍高校の番長。
そのことを、二人も知っている。
そんな事実に驚き目が泳ぐ華子。

「鼬原……実は、お前が黒高の番長という噂が流れているんだ。」

「それは……。」

「ただの噂……だよな?お前がそんなものになるわけないもんな?」

「……。」

「あはは……。その……根も葉もないとは分かっているが、あまりにも多くの場所で聞くからその……念の為にな……?」

「……すみません……。」

「鼬原、何謝ってるんだ?別にやましいことなどないんだろ?ほ、ほら、門屋先生が恐いだけだろ?」

「……おい。」

「失礼。……な、なぁ、鼬原、こんなのただの噂だろ?そう言ってくれ。」
番長ではない。
そう信じている。
直接言わないが、そのようなニュアンスがある。

「……。」

「鼬原っ!」

「すみません……。」

「な、何を……謝って……。」

「それ……本当なんです……。」

「そ、それって何のことだ?な、何が本当って……。」

「わ、私……黒龍高校の番長なんです……。」
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