はりぼてスケバン

あさまる

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その後のある日

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「……ふふふ、本当に覚えててくれました?」
ニヤリ。
妖艶な笑みを見せる華子。
黒龍高校の生徒達なら、彼女のこの仕草だけでやられてしまうだろう。

「本当だよ、本当。……前も可愛かったけど、凄く可愛くなったね。」
彼は、大人の余裕とでも言わんばかりにあっけらかんと言ってのける。

「……っ!?そ、そう……ですか……。失礼しました……。」
見事なカウンターを受けてしまった。
真っ赤になり、言葉が上手く出てこなくなっていく華子であった。

「さ、席へ案内するね。」

「……は、はい。……お願い……します……。」
華子は俯き、そそくさと彼の後に着いて行くのであった。


「じゃあ、いつもので良い?」

「はい!いつもので、お願いします。」

案内された席へ腰掛ける華子。
そして、以前のようにお気に入りのココアを注文する。


数分後、彼女の元へ運ばれて来たのは、ココアだけではなかった。
大きなパフェ。
まるでデジャブ。
厳密に言えば違う。

しっかりと、以前にも経験したことだ。
入学式の日。
あの時と同じことが起きているのだ。

「はい、おまたせ。」

「ありがとうございます。……うん?」
デジャブ。
彼女の視線の先には、ココアとパフェがあった。

「これは俺からのサービスだよ。」

「そ、そんな!また頂くなんて出来ません!今度こそ払います!いくらですか!?」

「だから大丈夫だって。」
以前と同じく笑みを浮かべている。

「そんなわけには……。」
何か祝うようなことはないはずだ。
今度こそ、無料というわけにはいかない。

「今回はお祝い……ってのもあるけど、記念かな?」
なにやら含むもののある言い方だ。

「記念……?」
一体何のだろうか?
華子には皆目検討もつかなかった。

「そう、記念。とても大事な記念だよ。」

「そ、それって何のですか?」
ここまで言われては気になってしまうのも仕方がないだろう。
華子の口から素直な質問が出る。

「まぁ……それはいずれ分かるよ。さ、こういうのは素直に貰うものだよ。」

「は、はい……。ありがとうございます。」
心司とは違う。
しかし、どこか逆らえない雰囲気に、ただただ従わざるを得ない華子であった。


彼の言っていた記念。
それは、本来彼が知るわけのないものに対してのものであった。

黒龍高校の番長。
それに、彼女が就任したことに対しての記念だ。
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