はりぼてスケバン

あさまる

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その後のある日

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それは、華子が黒龍高校の番長になり、数日が経過したある日のことであった。
放課後。
久しぶりに一人で下校することの出来た華子。
しかし、そこまでの道のりが大変だった。

一人で下校したい。
そのように何度言っても、丸雄や亥玄が護衛として着いて来ようとしていたのだ。
彼らのことは、決して嫌いというわけではない。
しかし、華子もたまには一人になりたい。
二人をなんとか説得し、今に至る。


「……。」
すでに疲労困憊な華子。

フラフラ。
右に左にと不安定。
そんな歩き方で、最寄駅から出て来た。

決して、喧嘩をしたわけではない。
きっと、もしそんなことがあれば、彼女は疲労だけでなく、怪我を多数拵えていた頃だろう。

疲弊している理由。
それは、今の立場になり多くの者達と急に接するようになったことにあった。
所謂人疲れというやつだ。

癒しが欲しい。
どこか落ち着ける場所へ行きたい。


「……癒し……癒しが欲しい……。」
つい脳内の声がノンフィルターで出てしまった。
それほどに疲労していたのだ。

落ち着き、休息出来る場所。
それならば、自宅か?
いや、それも少し違う気がする。
それならば、彼女の中で答えは一つであった。

彼女の目的地は決まった。
そこへ向かうと思うと、心なしか疲れが軽減した気がするのであった。


到着。
入学式以来、再度来れた。
華子のお気に入りの喫茶店だ。

「いらっしゃいませ。」
以前も聞いた店員の声が、彼女の耳に届く。

これだ。
これこそ癒しだ。

刷り込み。
彼の声を聞くだけで、ある程度の疲れがスーッと身体から抜け出て行くような気がする華子であった。

「お久しぶりです……!」

「……お久しぶり……?」

「……え?」
まさかの反応に戸惑う華子。
以前は暖かく迎え入れてくれた彼。
しかし、今回はまるで初対面かのようなリアクションだ。

転落。
安堵から不安。
まるでジェットコースターを落ちていくかのように気分が急降下した。

「……あ、あー……君か!ごめん、ずいぶん雰囲気が変わって分からなかったよ、本当にごめん。」
慌てて彼が言う。

良かった。
再度安堵する華子。
しかし、安心したら少しイタズラ心が沸いて来てしまった。

本来の彼女ならそんなことを思わない。
そんな妙なアクティブなことは思い付かないはずなのだ。
恐らく、黒龍高校で過ごす時間が長過ぎたのだろう。
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