はりぼてスケバン

あさまる

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「あ、あぁ……。」
視線を落とす華子。
そこに、訪問者がいた。
厳密に言えば、いたのではなく、その場に倒れていたのだ。

「う、うぅ……。」
額が少し赤くなっている。
そして、その痛みに小さな呻き声を上げていた。

「え!?……ふ、藤柴君!?」
そう、そこにいたのは丸雄であった。
彼へ手を差しのべながら華子が声を上げる。

「お、おはようっす……姐さん……。」
彼女の手を掴み、フラフラと起き上がる。

「と、取り敢えず中に入る……?」

「……すみません、お言葉に甘えるっす……。」

そうして華子は彼を自宅へと招き入れた。
よほど痛かったのだろう。
涙目の丸雄は額を擦りながら彼女の後に着いて行った。


「それで、今日はどうしたの?」
なぜあのような暴挙に出たのか。
いつものようなインターホンの鳴らし方ではいけなかったのか?
そのことが気になった華子は、彼の腫れた額に湿布を貼りながら聞いた。

「黒校の連中、今日は来なかったっすよね!?」

「え、う、うん……。」

「それ、俺があいつらに言ったんっすよ!」

「そ、そっかぁ……。」
そうか。
それ以上でも、それ以下でもない。

「……。」

「……?」

「……。」

「……え?」
だから何なのだ?
彼はどのような反応を期待しているのだろうか?

「……その……。」

「うん。」

「褒めてくれないんっすか?」

「……え?」
褒める?
何をだ?
全く意味が分からない。
ただただキョトンとする華子。

「俺、姐さんの役に立ったっすよね?」

「ま、まぁ……。」
役に立ったかどうか。
どちらかと言えば、役には立ったと言えるだろう。
しかし、元を辿れば彼のし出かしたことだ。
それを、彼自身が解決した。
ただそれだけのことだ。

「……その……やっぱ、何でもないっす……。」

「そ、そっか……。」


気まずい沈黙。
再度口を開いたのは、丸雄であった。

「……さ、さぁ!学校行こうっす!」

「う、うん!そうだね!学校には行かないと駄目だね!」
空元気だろう。
しかし、それでも彼のそれに付き合う華子であった。


校門を潜る。
そこには昨日と同じように、黒龍高校の生徒達が彼女へと敬意を示している。

廊下を歩く。
そこには、すでに登校していた亥玄がいた。
どうやら華子を待っていたようで、二人に気がつくと、のそのそと歩み寄って来た。
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