はりぼてスケバン

あさまる

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正門から進む丸雄の自転車。
その後ろにはいつも通り華子が座っている。

門から校舎へと続く道のり。
そこを左右に生徒達が並び、頭を下げている。

「……。」
圧巻な光景。
そして、それは自身の為のものである。
そんな状況に、ピクピクと口角が引き攣る華子。

この中を通って行くのか。
出きるなら通りたくない。
避けて進んで行きたい。
しかし、そういうわけにはいかない。

「さ!姐さん!行きましょう!」
キラキラ。
眩しいくらいに目を輝かせ、丸雄が言う。

あぁ、駄目だ。
逃げられない。

「う、うん……。」
背後から両肩を彼に掴まれた。
そして、歩くことを促され、足を動かざるをえなかった。

いつまでも続く左右を固めた生徒達の列。
その中を進む華子と丸雄。

丸雄は満足げだが、華子は違った。
小恥ずかしくて堪らない。
赤面し、俯き加減になっていた。


安堵。
その結果、彼女の口からため息が漏れる。

教室の扉を開ける。
そこには彼女の安穏を破壊する景色が広がっていた。

耳を塞ぎたがるほどの大きな声。
それは、華子へ向けられた挨拶であった。

ここも駄目だ。
たじろぐ華子。
しかし、やはりそこで立ち止まるのを丸雄が許すわけがない。

「ほらほらー、行きましょーっす!」

「あ、あはは……。」
華子の口から出たそれは、最早諦めの笑いであった。

席に着く。
すると、彼女の周りを女子生徒達が囲んで来た。
その中には、以前三花とともに彼女を見下していた者達も含まれている。

何かされるのだろうか?
身構える華子。
しかし、それは杞憂に終わった。

昼食を一緒に食べないか?
放課後、どこかへ遊びに行かないか?
口々に彼女へ向けられたものは、そのような好意的なものであった。

もちろん、そんなものは彼女へ対して純粋な好意ではない。
打算。
番長となった彼女と近づくことが出来れば、自分達の立ち位置も安定する。
そんな思惑があったのだ。


「……なによこれ……なんなのよ……!」
それは、廊下からその様子を見ていた三花の呟きであった。

今まで自分の周りにいた者達。
彼女らが、今は華子を慕っている。

昨日は一部の者達だけであった。
しかし、今日はその全員が、彼女の方を見ていた。
もう、誰一人として三花のことなど見ている者はいなかった。

このままでは済まさない。
絶対に復讐してやる。
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