はりぼてスケバン

あさまる

文字の大きさ
上 下
90 / 120
7

1

しおりを挟む
黒龍高校の番長が、正式に発表された。
史上初、女子生徒である華子がそこに座することとなった。
その影響は、翌日からすぐに出初めていた。

いつも通り、丸雄と登校することとなるだろう。
そんなことを思い、登校する為に自宅の玄関の扉を開けた華子。
そこには信じられない光景が広がっていた。

「おはようございます、頭!」
代表して一人が大声での挨拶する。
そして、それに続き挨拶をして一斉に頭を下げる黒龍高校の生徒達。
そこには華子が知らない生徒達もいた。

閑静な住宅街に響き渡る。
迷惑極まりない。

「あ、あっ……えっと……。」
戸惑い。
シンプルに言えば、それが彼女の脳の大半を占めていた。

「おはようっす、姐さん!」
いつものように丸雄が駆け寄る。

安堵する。
昨日までと全く違う異常な景色。
そんな中で、見慣れた日常に接することが出来た。
これほど丸雄に感謝したことはないだろう。

「うん、おはよう。えっと……その、これは……?」
きっと彼の方が、このような所謂不良文化に詳しいだろう。

「姐さんは黒高の正式な番長になったんすよ!?だから、皆が姐さんと登校したいって思って自宅まで押し掛けちゃったって感じっすよ!」

「な、なんで皆、私の家を知ってるの?」
至極全うな疑問だ。

「姐さんの右腕である俺が教えたんっす!」
曇り一つない笑みで、丸雄が言う。

「……。」
なぜ彼はそんな勝手なことをしてしまったのだろう。
呆れて言葉も出ない華子。
つい、苦笑いしてしまった。

「お、おぉ!姐さん、喜んでくれましたか!?」

丸雄の勘違いに、空しい笑いしか出てこない華子。
しかし、言うべきことは決まっていた。

「明日からは止めてって皆に言っておいてね。」


ゾロゾロと大人数で向かうわけにはいかない。
華子は皆に解散するように言った。
そして、丸雄にも伝えておいたが、自身の口からも直接今後はこのようなことは控えるようにと釘を刺した。

いつも通り、丸雄と登校出来たのは、それから十分ほど経過した頃であった。
少し遅い時間。
その為、いつもよりも少し急ぎめで自転車を漕ぐよう丸雄へ言った。

彼が勝手なことをしたのだ。
これぐらいのことはしてもらわなくては困る。
そう思いながら、やや強めな向かい風に口角の上がる華子であった。


いつもなら、彼女が登校しようがお構い無しな生徒達。
しかし、今日は違った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

放課後はネットで待ち合わせ

星名柚花
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】 高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。 何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。 翌日、萌はルビーと出会う。 女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。 彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。 初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

青春リフレクション

羽月咲羅
青春
16歳までしか生きられない――。 命の期限がある一条蒼月は未来も希望もなく、生きることを諦め、死ぬことを受け入れるしかできずにいた。 そんなある日、一人の少女に出会う。 彼女はいつも当たり前のように側にいて、次第に蒼月の心にも変化が現れる。 でも、その出会いは偶然じゃなく、必然だった…!? 胸きゅんありの切ない恋愛作品、の予定です!

亡き少女のためのベルガマスク

二階堂シア
青春
春若 杏梨(はるわか あんり)は聖ヴェリーヌ高等学校音楽科ピアノ専攻の1年生。 彼女はある日を境に、人前でピアノが弾けなくなってしまった。 風紀の厳しい高校で、髪を金色に染めて校則を破る杏梨は、クラスでも浮いている存在だ。 何度注意しても全く聞き入れる様子のない杏梨に業を煮やした教師は、彼女に『一ヶ月礼拝堂で祈りを捧げる』よう反省を促す。 仕方なく訪れた礼拝堂の告解室には、謎の男がいて……? 互いに顔は見ずに会話を交わすだけの、一ヶ月限定の不思議な関係が始まる。 これは、彼女の『再生』と彼の『贖罪』の物語。

斎藤先輩はSらしい

こみあ
青春
恋愛初心者マークの塔子(とうこ)が打算100%で始める、ぴゅあぴゅあ青春ラブコメディー。 友人二人には彼氏がいる。 季節は秋。 このまま行くと私はボッチだ。 そんな危機感に迫られて、打算100%で交際を申し込んだ『冴えない三年生』の斎藤先輩には、塔子の知らない「抜け駆け禁止」の協定があって…… 恋愛初心者マークの市川塔子(とうこ)と、図書室の常連『斎藤先輩』の、打算から始まるお付き合いは果たしてどんな恋に進展するのか? 注:舞台は近未来、広域ウィルス感染症が収束したあとのどこかの日本です。 83話で完結しました! 一話が短めなので軽く読めると思います〜 登場人物はこちらにまとめました: http://komiakomia.bloggeek.jp/archives/26325601.html

ガイアセイバーズ spin-off -T大理学部生の波乱-

独楽 悠
青春
優秀な若い頭脳が集う都内の旧帝大へ、新入生として足を踏み入れた川崎 諒。 国内最高峰の大学に入学したものの、目的も展望もあまり描けておらずモチベーションが冷めていたが、入学式で式場中の注目を集める美青年・髙城 蒼矢と鮮烈な出会いをする。 席が隣のよしみで言葉を交わす機会を得たが、それだけに留まらず、同じく意気投合した沖本 啓介をはじめクラスメイトの理学部生たちも巻き込んで、目立ち過ぎる蒼矢にまつわるひと騒動に巻き込まれていく―― およそ1年半前の大学入学当初、蒼矢と川崎&沖本との出会いを、川崎視点で追った話。 ※大学生の日常ものです。ヒーロー要素、ファンタジー要素はありません。 ◆更新日時・間隔…2023/7/28から、20:40に毎日更新(第2話以降は1ページずつ更新) ◆注意事項 ・ナンバリング作品群『ガイアセイバーズ』のスピンオフ作品になります。 時系列はメインストーリーから1年半ほど過去の話になります。 ・作品群『ガイアセイバーズ』のいち作品となりますが、メインテーマであるヒーロー要素,ファンタジー要素はありません。また、他作品との関連性はほぼありません。 他作からの予備知識が無くても今作単体でお楽しみ頂けますが、他ナンバリング作品へお目通し頂けていますとより詳細な背景をご理頂いた上でお読み頂けます。 ・年齢制限指定はありません。他作品はあらかた年齢制限有ですので、お読みの際はご注意下さい。

処理中です...