はりぼてスケバン

あさまる

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「な、なんすか……。」
流石に気づいたのだろう。
その営利な瞳に対し、丸雄がか細い声で応える。

「……お前、知ってたのか?」

「え?ま、まぁ……。」

「知ってて黙ってたのか?」

亥玄のその言葉に、更に空気が張り詰める。
しまった。
丸雄がそう思っても、後の祭りであった。

「い、いや、その……。」
咄嗟に彼を庇うように、華子が口を開く。
しかし、その後に続く言葉が出てこない。

「それは俺がシバ犬ちゃん……藤柴君に黙っておくように頼んだんだー。」
華子の代わりに言葉を紡いだのは、心司であった。

心司からの指示。
生徒会長であり、双葉の相棒的な存在。
そんな大物から言われていたとなれば、従わざるをえない。

「……。」
思うところはあった。
確かにあった。
しかし、それでも亥玄は黙る他なかった。

「ま、そういうことで、これからは彼女を頭とするから。よろしくねー。」
ヘラヘラと、それでもしっかりと言う心司。

不満がないわけではない。
それでもやはり、心司が言うなら異議を唱えることは出来ない。

無言。
これは、華子を頭とすることを認めたということを意味していた。

「……じゃあ姐さん!早速皆に一言を!」

何と無茶振りなことだろう。
丸雄のそんな言葉に戸惑いを隠せない華子。

「あ、えっと……その……私、黒高の番長……らしいので……そのー……よろしくお願いします……。」
何とも腑抜けたことを言う華子。
しかし、これは番長の声だ。
皆、その言葉を聞くと、一斉に頭を下げる。


「認めない……こんなの……絶対認めない……!」
怒り。
そして、嫉妬や困惑。
様々なネガティブな感情が溢れ出た結果、漏れ出た言葉だ。
それは、三花の口から出たものであった。

華子が番長になる。
つまり、それは双葉の虎威を借りていた三花にとって、最も望ましくないことであった。

「……。」
苛立つ彼女を見つめる者達。
それは、三花の取り巻きであった女子生徒達だ。

三花と華子。
普段から仲が良くない。
この先必ず両者の間で揉め事が起こるだろう。

過去の番長の妹。
そして、現在の番長。
どちらに着くべきか。
そんなこと、決まっていた。


「……気分悪い。もう行くよ。」
三花が呟く。
そして、館内を出ようとする。
しかし、誰一人彼女に着いて行こうとする者はいなかった。

「……。」
無言、無反応。
端的に言えば、無視であった。
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