はりぼてスケバン

あさまる

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「……なんかもの凄く誤解されてそうで凄い遺憾なんっすけど……。」

「うん?そ、そんなこないよ?」

「良いっすか?今までは絶対にここの頭になるなんて言い出そうともしなかった姐さんが口に出すまであと一歩ってとこまで来たんっすよ?鼬原一派としてこの上ないことっすよ!」

「お、おう……。」
目をキラキラと輝かせながら、一呼吸で早口で熱弁する丸雄。
そんな彼の圧に負けてしまう華子であった。
ヒクヒク。
口角が妙な動きをしてしまった。

「あと、多分鯉崎のこと薄情者って思ってないっすか?」

「え?そ、そんなことないよ?」
ギクリ。
なぜ先ほどから妙に鋭いのだろう。

「あいつ、自分がいると姐さんが言い出しにくいと思って帰ったんだと思うっすよ?」

「……。」
もしそうなら申し訳ない。
明日にでも謝罪をしなければならない。

「……無理強いはしないっすけど……。」

「……?」

「もし、姐さんが頭になってくれるなら、きっとこの学校は良くなると思うっす……。」

「……。」

「それに、俺も嬉しいっす。」

「……。」

「……あとは姐さんに任せます。なら俺も帰るっす、また明日。」

「……うん、バイバイ。」


教室で、一人になる華子。
どれほどここに一人ぼっちだったのか分からない。
無言のままであったが、口を開いた。


「……ずるいよ、藤柴君……。そんなこと言われたら……。」


決まった。
どうすべきか、もう決めてしまった。

背中を押したのは、彼の言葉だ。
しかし、この先どうなっても彼を憎むのは止めよう。


決意。
武蔵野双葉。
彼が陥落したことで、黒龍高校の番長は空席になっていた。
しかし、それももう終わりだ。


カバンはそのまま教室に置いたまま、華子は教室を飛び出した。
目的地は生徒会室。
そして、会うべき人物は心司である。

きっと、まだ彼は校内にいるはずだ。
教室ではなく生徒会室へ向かった理由は、ただ何となくであったが、きっといるだろう。


「……お、おぉ、いくら慣れてるとはいえノックくらいはしようねー?」

「……すみません、急いでたので……。」

「うん、シバ犬ちゃんからある程度は聞いてるよー。」

ある程度。
きっと嘘だ。
その顔は、彼から全て聞いたものだ。

「……そ、そうですか……。」
精一杯の相槌。

「ありゃ?決意したって割には暗い顔だね?」
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