はりぼてスケバン

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とてつもなく恐い。
背筋が凍るようとはこのことを言うのだろう。
華子はゾッとした。

「ほら、俺らに言ったこと言えよ。」
倒れている彼らの顔を蹴りつける。
その痛みに再度呻き声が上がる。

「ちょ、ちょっと……！」
流石にやり過ぎだ。
度が過ぎている。
恐怖を押しころし、華子が言う。

「……あ？」
短く低い声。
彼女の恐怖心を煽るには十分であった。

「や、やり過ぎだよ……！それ以上やったら……その……よ、良くない……よ……。」
勇気を振り絞り、震える声を出す華子。

「お前、こいつらがお前に何したのか覚えてないのか？」
倒れている彼らをなぶっている一人が、彼女に言う。

彼らはため息をついている。
華子の言動に、呆れているようだ。

「え、え？」
何をしたのか。
そんなもの、分かるわけがない。

「こいつら、さっきお前を襲った奴らだぞ？」

「……は？」
彼らがそうなのか。
目線を再度落とし、倒れている者達を見る。

「ほら、早く言えって。」
再度の蹴り。

「……言った通りだ。こいつを襲ったのは俺らだ。」

「……。」
絶句。
言葉が出ない華子。

「……。」
見届けるべく、無言の蝶華。
しかし、その状態でも臨戦態勢であった。
不足の事態にも対応が出来るようにと考えていたのだ。

「こいつが……黒高の頭だって聞いたから……こいつを潰せば黒高は終わると思って……。」
うめき声交じりに言う。

「……な、何を……。」
黒高の頭。
黒龍高校の番長。
彼女はそんなものになった覚えはない。

否定しようとする。
しかし、そんな彼女の脳裏に過るものがある。
それは、彼を倒してしまったという事実があり、それは消すことの出来ない過去だということであった。

「あんた達、辰美さんの言ってたこと忘れたの？まだ黒高には手を出すなって言われてたよね？」
ギロリ。
より一層鋭い視線を向ける蝶華。

「それは……。」
彼女の視線のせいか。
それとも、辰美という存在のせいか。
彼らはガクガクと震えている。

しゃがみ込む蝶華。
そして、倒れている一人の髪を掴む。
そして、両者の目と目が合う。

凍りのように冷たい瞳。
その中に、倒れこんだ生徒が写っている。
そこ姿は怯えて震え上がっていた。

「まぁ、良いや。こんな鳥頭に何を言っても無駄だろうし……。それで、そんな眉唾を吹き込んだのは誰？」