はりぼてスケバン

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倒れ込む彼女の耳元に、そんな不穏な言葉の群れが飛び交う。
武蔵野を倒した。
それは、彼らの認識では黒龍高校の新しい頭となったということを意味していた。

あの事実が、どこからか漏れている。
この惨状はそれを意味しているということなのだろう。

どこからだ？
分からない。
しかし、それなら、校内にもその噂が広まっているはずだ。
しかし、そんな気配はなかった。

なぜだ？
分からない。
何がなんだか分からない。


「何をしているの？」
凛とした女子の声。
華子のものではない。
それは、彼女達に向けられて発せられたものであった。


「お、尾谷……。」

「こいつ、新しい黒龍の頭だ！だからこいつを始末すれば……。」

「二度は言わないけど……？」
彼女が彼らの言葉を遮る。

その声は、可愛らしいもののはずであった。
しかし、向けられた彼らにとってはとてもそのように思えるものでなく、圧のあるものであった。

その効果が絶大であったのだろう。
彼らは足早にその場を後にするのであった。


「……これ、どうするかな……。」
ため息をつく。
不機嫌そうに、それを見る。

「……っ！うぅ……！」
横たわる華子だ。
頭を抑えて唸り声を上げている。

「あれ？この子さっき……。」


意識が遠くなっていく。
そんな華子の視界に写ったのは、先ほど雨宿りの時に隣にいた白辰高校の女子生徒だ。

「……仕方ない、か……。」
再度のため息。
その声と態度は、もう意識を手放してしまった彼女には届かなかった。


「……うん……。」
ゆっくりと、再度目を開ける華子。

見慣れない場所。
やや硬いソファーに寝ていたせいで、身体の節々が痛む。

呼吸しやすいように、制服のボタンが外され緩められている。
乱暴目的ではなく、優しさの意味の込められたものだ。
無闇矢鱈に乱れたわけではないというのは、寝ぼけ眼な彼女にも分かった。

「気分はどう？」
彼女へ向けられた少女の声。

「あんまり良いとはいえないかも……頭がぐらぐらする。」
苦笑いで返事をする華子。

「……そう、良好そうでなにより。」

「……。」
おかしい。
彼女には上手く伝わっていなかったようだ。
日本語とはかくも難しい言語だろうか。

「……まぁ、冗談はさておき、怪我はない？」

「う、うん……多分。その、ありがとう。」
華子が答える。