はりぼてスケバン

あさまる

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「あんた、三花のこと恐くないの?」

「え?うん……。」
別に恐くはない。
どちらかといえば、ややむかつく程度だ。

「なんで?」

「……え?」
なぜ?
なぜだと聞くのか?
疑問に思われ、それをぶつけられてから華子は悩む。

正直に言ってしまえば、三花は恐れるまでもない存在であると思えたからだろう。
むしろ、双葉や亥玄の方がよほど恐い。
しかし、それを上手く言語化するのは難しい。

それを彼女へ伝えるのも難しい。
自身のコミュニケーション能力の低さが恨めしい。

「まぁ、何でも良いや……。」

「あはは……。」
良いのか。
追及のないことに、安堵する華子。

「あいつの顔色を伺ってた私が言えることじゃないけどさ……。」
ヘラヘラと笑いながら言う。

それだけで分かる。
彼女は本心から自身を責めているわけではない。
ただ便宜上、そう言っているだけなのだ。

「うん。」
確かにそうだ。
その通りだ。

「正直、スカッとした。」
その笑みは、何とも言えない不気味さと腹立たしさがあった。

「……え?」
聞き間違いか?
今、彼女はスカッとしたと言ったか?

記憶違いでなければ、彼女は三花の取り巻きの一人であったはずだ。
そんな彼女が、三花を蔑むようなことを言うわけがない。

「私、あいつのこと嫌いだったんだよね。あいつ自身が偉いわけじゃないのにわがまま放題で……。」

「……。」
どうやら聞き間違いなどではなかったようだ。

「あいつ、双葉先輩の妹だからって好き勝手してたから皆うざがってたんだよね。」
自分だけが彼女を嫌っていたわけではない。
そんな予防線のようなことを言う。

「……。」
なんだそれは。
なんなんだ、それは。
ムカムカとする。
自身でも上手く説明出来ない苛立ちが、華子の胸中に宿る。

「まぁ、そう言う感じだから。」

「武蔵野さんは?」

「え?」

「あの人、最近学校に来てないみたいだけど……。」

「さぁ?どうでも良くない?というか、あんたシバマルとか鯉崎とどういう関係なの?」

「それこそどうでも良いでしょ、馬鹿っ!」
確かに彼女は取り巻きであった。
それに、横柄でもあった。
しかし、それでもその恩恵を少なからず浮けてきた者だ。
この手のひら返しはあまりにも酷い。

「は?え、どういう……。」
その困惑は、華子に届くことはなかった。
なぜなら彼女は途中で教室を出てしまったからだ。
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