60 / 120
4
7
しおりを挟む
彼女も先ほどまでのやり取りの真意が分からなかった。
しかし、そんなこんなで電車に揺られていた。
もちろん、隣には亥玄がいる。
そういえば、と華子にはふと思ったことがあった。
「あの、鯉崎君?」
「なんだ?」
「昨日、白辰の人達に襲われてた時に助けてくれたよね。」
「まぁな……。」
「えっと、改めてなんだけど、ありがとう。本当に助かったよ。」
「そのことなら別に……言いたいのはそんなことか?」
「あはは、ちがうよ。……鯉崎君、家あの辺なの?」
もしそうなら、同じ学区であったはずだ。
しかし、中学生の頃、彼を見たことはない。
華子のようにあまり出席出来なかったのだろうか?
それとも、高校進学をきっかけに引っ越しでもしたのだろうか?
「いや、違うが……。」
「え?そうなの?」
それならばどうしてあんな場所にいたのだろうか?
「あ、あぁ……そうだが……。」
それがどうした?
そう言いたいような亥玄。
「なら何か用事でもあったの?」
素直な疑問だ。
「あ、あぁ……それは……。」
目を逸らす。
何かあったのだろう。
そして、それは言いづらいことなのだろう。
これ以上の追及はしないようにしよう。
「ごめん、言いづらいことなら言わなくて良いよ……。」
「いや……さっきみたいに犬とか猫とかと遊んでいたらいつの間にかお前の家の近くに辿り着いていたみたいだ。」
「……。」
絶句。
開いた口が塞がらない。
「ま、まぁ……そういうことだ……。」
「……うっす。」
辛うじて彼女の口から出た言葉はそんなものであった。
華子の最寄りの駅のホームへ到着。
華子が降りて、亥玄もそれについていく。
二人へ視線が集まる。
それは、決して自惚れなどではない。
好意的なものではなかったのだ。
あぁ、そうか。
理解した。
分かってしまった。
今まで親しかった者達。
名前も分からないが、日頃から挨拶を交わして者達もいる。
しかし、そんな者達が、鋭い視線を向けている。
この制服のせいだろう。
黒龍高校の生徒。
不良。
関わってはいけない者達。
そのせいだろう。
向けられている憎悪。
嫌悪。
きっとそれは、大多数の人々からすれば当たり前なことなのだろう。
嫌われ者。
弾き者。
そんな自分達が悪いのだ。
彼らは悪くない。
じわりじわり。
ぐるぐる。
どんどん嵌まっていく。
負の感情。
しかし、そんなこんなで電車に揺られていた。
もちろん、隣には亥玄がいる。
そういえば、と華子にはふと思ったことがあった。
「あの、鯉崎君?」
「なんだ?」
「昨日、白辰の人達に襲われてた時に助けてくれたよね。」
「まぁな……。」
「えっと、改めてなんだけど、ありがとう。本当に助かったよ。」
「そのことなら別に……言いたいのはそんなことか?」
「あはは、ちがうよ。……鯉崎君、家あの辺なの?」
もしそうなら、同じ学区であったはずだ。
しかし、中学生の頃、彼を見たことはない。
華子のようにあまり出席出来なかったのだろうか?
それとも、高校進学をきっかけに引っ越しでもしたのだろうか?
「いや、違うが……。」
「え?そうなの?」
それならばどうしてあんな場所にいたのだろうか?
「あ、あぁ……そうだが……。」
それがどうした?
そう言いたいような亥玄。
「なら何か用事でもあったの?」
素直な疑問だ。
「あ、あぁ……それは……。」
目を逸らす。
何かあったのだろう。
そして、それは言いづらいことなのだろう。
これ以上の追及はしないようにしよう。
「ごめん、言いづらいことなら言わなくて良いよ……。」
「いや……さっきみたいに犬とか猫とかと遊んでいたらいつの間にかお前の家の近くに辿り着いていたみたいだ。」
「……。」
絶句。
開いた口が塞がらない。
「ま、まぁ……そういうことだ……。」
「……うっす。」
辛うじて彼女の口から出た言葉はそんなものであった。
華子の最寄りの駅のホームへ到着。
華子が降りて、亥玄もそれについていく。
二人へ視線が集まる。
それは、決して自惚れなどではない。
好意的なものではなかったのだ。
あぁ、そうか。
理解した。
分かってしまった。
今まで親しかった者達。
名前も分からないが、日頃から挨拶を交わして者達もいる。
しかし、そんな者達が、鋭い視線を向けている。
この制服のせいだろう。
黒龍高校の生徒。
不良。
関わってはいけない者達。
そのせいだろう。
向けられている憎悪。
嫌悪。
きっとそれは、大多数の人々からすれば当たり前なことなのだろう。
嫌われ者。
弾き者。
そんな自分達が悪いのだ。
彼らは悪くない。
じわりじわり。
ぐるぐる。
どんどん嵌まっていく。
負の感情。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる