はりぼてスケバン

あさまる

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秋姫の言っていた通りであった。
黒龍高校と白辰高校の争いは各所で起きていた。
その結果、双方から補導される者も少なからずいた。
つまり、双方に痛手を負っていたということだ。

このままではただただ戦力を消費するのみ。
そして、周囲に対して無用な不安や苛立ちを抱かせるだけだ。

無意味な行為だ。
皆、そんなことは分かっていた。
しかし、止められない。
止められるわけがなかったのだ。

こちらが止めれば向こうの好き勝手を許すこととなる。
一度それを認めれば、やがてどんどんそれは侵食していく。

一瞬でも向こうに気を許してはいけない。
双方がそう思っていた。
その結果、無意味な争いは依然として続いていたのだった。


「……と、言うわけで、他校との喧嘩は極力避けるようにな。これ以上近隣の人たちに迷惑をかけると色々大変だからな……頼むな……。」
目元の隈がはっきりと見えている。
そんな飛鳥が朝、クラスで言う。

雲一つない青空。
そんな良い天気とは裏腹に、飛鳥の表情は曇っている。

ただでさえ少ない出席率。
それが白辰高校との争いが激化していき、さらに減っていった。
最早それは学級崩壊と言っても差し支えないものであった。


「先生、顔色凄かったけど大丈夫かな……?」
華子の思考がノンフィルターで口から出る。

こうなってしまった原因。
そんなこと、分かりきっている。
華子だけではない。
皆がそんなことは分かっていたのだ。

責任を取るべきなのではないのか?
自分だけでは決められない。

やや頼りない。
しかしそうは言うものの、今までは丸雄がいてくれた。
しかし、今の華子の隣に彼はいない。
つまり、彼女は助言なしでこの先進まなければならないということだ。

あの日、救急車で運ばれ、そのまま入院となった。
幸いなことに、命に別状があるというわけではなかったが、数日は安静にしておけとのことであった。

今頼れるのは心司だけだ。
彼ならこの状況を打開する方法が分かるはずだ。

そうと決まればやることは一つ。
思い立ったが吉日。
急がば回れという言葉もあるが、先手必勝でもある。
授業と授業の間。
その短い間である放課に小走りで上級生の教室へ向かおうとする華子。

授業の終わりを告げる鐘の音。
それを聞くや否や、華子は廊下へと飛び出した。
この頃にはクラスメイト達のいなし方もとい、無視の仕方もお手のものとなっていた。
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