はりぼてスケバン

あさまる

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「もういい、黙って。」
そう言うと、三花は残りの女子生徒数名を連れて教室から出ていくのであった。

「ま、待って……!お願い!待って!」
そんな言葉は無意味だった。


「……お、おぉ……ビックリした……。」
ボソリ。
目を真ん丸に見開き驚く華子。
三花の怒鳴り声が彼女にまで届いていたのだ。

威勢が良いのはどうやら男子だけではなかったみたいだ。
女子も、自己主調が強く、力を持った者が上に立つ。

客観視しているものだとはいえ、このやり取りはある意味貴重な経験だ。
改めて自身の置かれた立場を認識する華子であった。

「それな。あいつ、さすが双葉さんの妹だよなー。ところで連絡先教えてくれん?」

「俺も俺もー。」

「……あ、あはは……。」
華子は自身を囲んでいる男子に苦笑いするしか出来なかった。


「あんな奴……お兄に言えばすぐに潰せるもん……。お兄がまた番長になれば……あんな奴なんて……。」
ボソリ。
廊下に出た三花が呟いた。

結局、三花と彼女が引き連れていった女子生徒達はこの日、教室に戻って来ることはなかった。
一方華子は、授業中だろうがお構い無しに連絡先を聞いてくる者達をいなすことに必死になっていた。
そんなことをしていたので、昼休みになる頃には彼女は疲労感でぐったりとしていた。

このままここで過ごしていては体力がもたない。
フラフラと廊下へと出た華子。
どこか落ち着ける場所はないだろうか。
そんな思いで歩いていた。

ゆったりとした場所ははいだろうか。
彼女のそんな気持ちとは裏腹に、少し進めば下心のある男子達に囲まれ思うように移動出来ずにいた。


命からがら逃げ込んだ場所。
そこは、幸運なことに職員室であった。
ここならば下手なことは出来ないだろう。
華子は我ながら良い場所へ入り込んだと思うのであった。

「し、失礼します……。」
ノックもせずに入ってしまい、気まずそうに華子が言う。

咳き込んでしまった。
部屋の扉を開けた時にあった不快感。
煙たく嫌な臭い。
その原因はすぐに分かった。

彼女の視界に写る灰皿。
そこには溢れんばかりの煙草の吸い殻。
このご時世に信じられない。
つい苦笑いしてしまう華子であった。


「おぉ、鼬原、どうした?」

「あっ、先生。」
華子を呼ぶ声。
それは、彼女の担任教師のものであった。

橘飛鳥。
それが彼女と話をしていた彼の名前だ。
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