22 / 120
1
9
しおりを挟む
「もういい、黙って。」
そう言うと、三花は残りの女子生徒数名を連れて教室から出ていくのであった。
「ま、待って……!お願い!待って!」
そんな言葉は無意味だった。
「……お、おぉ……ビックリした……。」
ボソリ。
目を真ん丸に見開き驚く華子。
三花の怒鳴り声が彼女にまで届いていたのだ。
威勢が良いのはどうやら男子だけではなかったみたいだ。
女子も、自己主調が強く、力を持った者が上に立つ。
客観視しているものだとはいえ、このやり取りはある意味貴重な経験だ。
改めて自身の置かれた立場を認識する華子であった。
「それな。あいつ、さすが双葉さんの妹だよなー。ところで連絡先教えてくれん?」
「俺も俺もー。」
「……あ、あはは……。」
華子は自身を囲んでいる男子に苦笑いするしか出来なかった。
「あんな奴……お兄に言えばすぐに潰せるもん……。お兄がまた番長になれば……あんな奴なんて……。」
ボソリ。
廊下に出た三花が呟いた。
結局、三花と彼女が引き連れていった女子生徒達はこの日、教室に戻って来ることはなかった。
一方華子は、授業中だろうがお構い無しに連絡先を聞いてくる者達をいなすことに必死になっていた。
そんなことをしていたので、昼休みになる頃には彼女は疲労感でぐったりとしていた。
このままここで過ごしていては体力がもたない。
フラフラと廊下へと出た華子。
どこか落ち着ける場所はないだろうか。
そんな思いで歩いていた。
ゆったりとした場所ははいだろうか。
彼女のそんな気持ちとは裏腹に、少し進めば下心のある男子達に囲まれ思うように移動出来ずにいた。
命からがら逃げ込んだ場所。
そこは、幸運なことに職員室であった。
ここならば下手なことは出来ないだろう。
華子は我ながら良い場所へ入り込んだと思うのであった。
「し、失礼します……。」
ノックもせずに入ってしまい、気まずそうに華子が言う。
咳き込んでしまった。
部屋の扉を開けた時にあった不快感。
煙たく嫌な臭い。
その原因はすぐに分かった。
彼女の視界に写る灰皿。
そこには溢れんばかりの煙草の吸い殻。
このご時世に信じられない。
つい苦笑いしてしまう華子であった。
「おぉ、鼬原、どうした?」
「あっ、先生。」
華子を呼ぶ声。
それは、彼女の担任教師のものであった。
橘飛鳥。
それが彼女と話をしていた彼の名前だ。
そう言うと、三花は残りの女子生徒数名を連れて教室から出ていくのであった。
「ま、待って……!お願い!待って!」
そんな言葉は無意味だった。
「……お、おぉ……ビックリした……。」
ボソリ。
目を真ん丸に見開き驚く華子。
三花の怒鳴り声が彼女にまで届いていたのだ。
威勢が良いのはどうやら男子だけではなかったみたいだ。
女子も、自己主調が強く、力を持った者が上に立つ。
客観視しているものだとはいえ、このやり取りはある意味貴重な経験だ。
改めて自身の置かれた立場を認識する華子であった。
「それな。あいつ、さすが双葉さんの妹だよなー。ところで連絡先教えてくれん?」
「俺も俺もー。」
「……あ、あはは……。」
華子は自身を囲んでいる男子に苦笑いするしか出来なかった。
「あんな奴……お兄に言えばすぐに潰せるもん……。お兄がまた番長になれば……あんな奴なんて……。」
ボソリ。
廊下に出た三花が呟いた。
結局、三花と彼女が引き連れていった女子生徒達はこの日、教室に戻って来ることはなかった。
一方華子は、授業中だろうがお構い無しに連絡先を聞いてくる者達をいなすことに必死になっていた。
そんなことをしていたので、昼休みになる頃には彼女は疲労感でぐったりとしていた。
このままここで過ごしていては体力がもたない。
フラフラと廊下へと出た華子。
どこか落ち着ける場所はないだろうか。
そんな思いで歩いていた。
ゆったりとした場所ははいだろうか。
彼女のそんな気持ちとは裏腹に、少し進めば下心のある男子達に囲まれ思うように移動出来ずにいた。
命からがら逃げ込んだ場所。
そこは、幸運なことに職員室であった。
ここならば下手なことは出来ないだろう。
華子は我ながら良い場所へ入り込んだと思うのであった。
「し、失礼します……。」
ノックもせずに入ってしまい、気まずそうに華子が言う。
咳き込んでしまった。
部屋の扉を開けた時にあった不快感。
煙たく嫌な臭い。
その原因はすぐに分かった。
彼女の視界に写る灰皿。
そこには溢れんばかりの煙草の吸い殻。
このご時世に信じられない。
つい苦笑いしてしまう華子であった。
「おぉ、鼬原、どうした?」
「あっ、先生。」
華子を呼ぶ声。
それは、彼女の担任教師のものであった。
橘飛鳥。
それが彼女と話をしていた彼の名前だ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
深海の星空
柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」
ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。
少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。
やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。
世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。
ギャルゲーをしていたら、本物のギャルに絡まれた話
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
赤木斗真は、どこにでもいる平凡な男子高校生。クラスに馴染めず、授業をサボっては図書室でひっそりとギャルゲーを楽しむ日々を送っていた。そんな彼の前に現れたのは、金髪ギャルの星野紗奈。同じく授業をサボって図書室にやってきた彼女は、斗真がギャルゲーをしている現場を目撃し、それをネタに執拗に絡んでくる。
「なにそれウケる! 赤木くんって、女の子攻略とかしてるんだ~?」
彼女の挑発に翻弄されながらも、胸を押し当ててきたり、手を握ってきたり、妙に距離が近い彼女に斗真はドギマギが止まらない。一方で、最初はただ面白がっていた紗奈も、斗真の純粋な性格や優しさに触れ、少しずつ自分の中に芽生える感情に戸惑い始める。
果たして、図書室での奇妙なサボり仲間関係は、どんな結末を迎えるのか?お互いの「素顔」を知った先に待っているのは、恋の始まり——それとも、ただのいたずら?
青春と笑いが交錯する、不器用で純粋な二人。
ペア
koikoiSS
青春
中学生の桜庭瞬(さくらばしゅん)は所属する強豪サッカー部でエースとして活躍していた。
しかし中学最後の大会で「負けたら終わり」というプレッシャーに圧し潰され、チャンスをことごとく外してしまいチームも敗北。チームメイトからは「お前のせいで負けた」と言われ、その試合がトラウマとなり高校でサッカーを続けることを断念した。
高校入学式の日の朝、瞬は目覚まし時計の電池切れという災難で寝坊してしまい学校まで全力疾走することになる。すると同じく遅刻をしかけて走ってきた瀬尾春人(せおはると)(ハル)と遭遇し、学校まで競争する羽目に。その出来事がきっかけでハルとはすぐに仲よくなり、ハルの誘いもあって瞬はテニス部へ入部することになる。そんなハルは練習初日に、「なにがなんでも全国大会へ行きます」と監督の前で豪語する。というのもハルにはある〝約束〟があった。
友との絆、好きなことへ注ぐ情熱、甘酸っぱい恋。青春の全てが詰まった高校3年間が、今、始まる。
※他サイトでも掲載しております。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
青の時間
高宮 摩如(たかみや まこと)
青春
青という事。
それは未熟という事。
知るべき事がまだあるという事。
社会というものをまだ知らないという事。
そして、そういう自覚が無いという事。
そんな青い世代の生き様を登場人物名一切無しという”虚像”の世界観で絵描き出す青春群像劇。
蟻喜多利奈のありきたりな日常2
あさまる
ライト文芸
※こちらは『蟻喜多利奈のありきたりな日常』の続編となります。
※予約投稿にて最終話まで投稿済です。
この物語は、自称平凡な女子高生蟻喜多利奈の日常の風景を切り取ったものです。
※この作品には女性同士の恋愛描写(GL、百合描写)が含まれます。
苦手な方はご遠慮下さい。
※この話はフィクションであり、実在する団体や人物等とは一切関係ありません。
誤字脱字等ありましたら、お手数かと存じますが、近況ボードの『誤字脱字等について』のページに記載して頂けると幸いです。
切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる