はりぼてスケバン

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「と、とにかくっ！ここからは別々で行きましょう！分かったっすか！？」

「は、はいっ！」
勢いに押し負けてしまう華子であった。

「よしっ！なら行く前に一つ、気をつけてもらいたいことを言っておくっす！」

「……き、気をつけておくこと？」

「昨日の鼬原さんと今の鼬原さんは別人、誰が見ても分からないくらい変わってるっす。」

「ほ、本当？」
不安げに華子が聞く。


「はい！それは化粧した俺が責任を持って断言するっす。」
自信満々に丸雄が返答した。

「う、うん。」
果たして本当にそうなのだろうか？
しかし、ここを気にしていては先に進めない。
一先ずは話を聞くことにしよう。

「後は……その姿勢っ！」
ビシッ！決め台詞のようにはっきりと言う丸雄。

「し、姿勢……？」

「そうっす。」

「そんな猫背じゃ駄目っす！もっと胸を張ってほしいっす！」

「う、うん……。」
多少は自覚していた華子。
やや曲がった背筋。
言われるがまま、胸を張った。

「そんじゃあ、いってらっしゃいっす！」
元気に丸雄が言う。

「う、うん！行ってくるね！」
彼の明るさにつられ、つい声が大きくなる。

猫背は駄目。
胸を張れ。
そんな彼の言った通り、堂々と歩き出す華子。


「だ、大丈夫……っかねぇ？」
ボソリ。
彼女の後ろ姿を見て心配そうに呟く丸雄。

フラフラ……フラフラ……。
眼鏡のない彼女。
かといって、コンタクトレンズを付けているわけでもない。
所々足元が覚束なく危なっかしい。


「大丈夫……大丈夫……昨日の私とは違う……だから大丈夫。」
ぶつぶつ……ぶつぶつ……。
呟きながら歩く華子。

さながら自己暗示。
端からみればおかしな光景だ。
しかし、それも彼女の声が届かない場所から見れば全く違うものとなる。

視界を確保する為、自然と目を細めてしまっていた。
その結果、芯の強い印象を抱かせる鋭い眼光。
そして、元々のポテンシャルに丸雄の手の加わった美貌。

ミステリアスな雰囲気の高嶺の花。
そんな印象を抱かせた。
華子はすぐに周囲の注目の的となっていた。


校門へさしかかった。
両端にはズラリと生徒達が並んでいる。
昨日は喧嘩をしていたが、今日は違った。
皆がそんなことをしている場合ではないといった様子だ。

彼らを見てはいけない。
きっと、それをきっかけに何やら因縁を付けてくるだろう。