はりぼてスケバン

あさまる

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「そうっすよ!さ、どうぞどうぞ。」
さも当たり前かのように丸雄が言う。

「え、でも二人乗りって駄目だよ……。」
至極真っ当な意見だ。
そんな極々当たり前なことをぶつける華子。

自転車の二人乗り、駄目絶対。

「あははー、黒高に入って法律が恐いなんて鼬原さん変わってるっすねー。」
まるで彼女が冗談でも言っているようにへらへらと笑う丸雄。

「……いやいや、どこにいても法律は守んないといけないよ!」
再びの正論。
恐らく百人が百人彼女が正しいと言うだろう。
しかし、それも彼の前ではただただ虚しく響き渡るのみであった。

「まぁまぁ。細かいことは無しっすよ!ほら遅刻しちゃいますよ!……行くっすよー!」

法律は細かいことと蹴り飛ばして良い代物ではない。
華子はそう突っ込みたかった。
しかし、その強行にそんな言葉は喉を通らなかった。

「……!?え?」
いつの間にか荷台に乗り、彼の肩を掴んでいた華子。
困惑しつつしっかり掴まる。

「さぁ、出発っすよー!」
チリンチリン!
自転車のベルを無駄に鳴らした後、丸雄が勢い良く漕ぎ出した。

「え?ちょ、待っ、う、うわー!?」
爆速で進む自転車の荷台で華子は悲鳴を上げていた。

昨日よりも遅い時間に家を出た。
それなのに華子は昨日よりも早い時間に校舎付近に到着した。


「鼬原さん、取り敢えずここで降りてもらって良いっすか?」

「え?うん。ありがとう。」
後少しで到着するような場所で降りるように言ったのはなぜだろう。
そうは思ったが、言われた通りに降りる華子。

「これは大事なことなんすけど……。」

「……?」
何を言うのだろう。
華子が心して彼の次の言葉を待つ。

「鼬原さんは昨日、俺とは会っていないし、今日も会ってない。良いっすね?」

「え?な、なんで?」
なぜそんな嘘を今言うのか。
先ほどの行為も含め、謎が謎を呼ぶ。

「とにかく、今俺と昨日いた女子生徒は黒校内のお尋ね者なんす。それは分かってるっすよね?」

「……。」
話が朧気ながら理解出来た華子は、無言で頷く。

「だから、俺とは一緒にいない方が良いんす。」

「……で、でも私一人だとボコボコにされちゃう……。」

「それは俺と一緒でも同じっすよ。」

「……。」
情けない。
何ということだろうか。
見栄を張ってでも守ってやると言えないのか。
呆れてため息をつく華子。
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