はりぼてスケバン

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彼女が倒してしまったのは武蔵野双葉という三年生であった。
彼は黒龍高校の頭であり、所謂番長的な存在であった。

彼は自身の妹である三花が丸雄に告白をし、それを断ったことで泣いてしまったことを激怒してしまった。

以前より三花からあることないこと吹き込まれていた。
その為、丸雄に対する彼の怒りは凄まじいものであった。
そして、今回のこおが決定打となり、捕まりそうになってしまった。
そんな中で逃げた先が、華子のいた喫茶店であったということだった。

油断があった。
しかし、そんな言い訳は彼らの世界に通用しない。
双葉が倒された。
それも華奢で地味な女子生徒にやられたのだ。

彼を慕う者達からの報復が、必ずしもないというわけではない。
あくまで可能性の話ではあるが、丸雄はそのことを注意しに来たのだ。

「ほ、報復……？」
聞き慣れない言葉に戸惑う華子。
事の重大さに真っ青な顔をする。

「だからこうしちゃえば良いんすよ！」
ニコニコ。
満面の笑みを浮かべる丸雄。
彼の両手には華子の見たことのない化粧道具があった。

「そ、それは……？」
……ヒクヒク。
なぜそんな物を持っているのか。
これから何をしようと言うのか。
華子はそんな疑問と疑念に顔を歪ませる。

「まぁまぁ。」
彼女の眼鏡を手馴れた手つきで奪う丸雄。

「い、いや、だからその……。め、眼鏡返してよ。」
困惑。
彼の行動の真意。
視力的な限界。
二つの意味でまともに見えない華子。

「まぁまぁ。」
一向に説明する気配のない丸雄。
恐らく端からそんなことをするつもりはなく強行するつもりだったのだろう。

「説明！せめて説明してー！」

彼女の悲痛な叫びは虚しく響いた。
されるがまま。
丸雄に顔を弄られること数分。

「はい、お待ちどうっす！」
そう言うと、丸雄が手鏡を華子へ向ける。
そして、それと同時に眼鏡を返す。

「お、おぉ……。」
自身の眼鏡が返ってきた。
すぐにそれをかけ、自身の姿を確認する。
そして、感嘆。

鏡に写る彼女は、彼女自身が見たことのないものになっていた。
心なしか大きく綺麗になった目。
潤いのある唇。
肌も綺麗になったように見える。

「あと少し、失礼するっす。」
そういうと、手櫛で彼女の髪を整え出した丸雄。

「え？え？」

「……うーん、鼬原さん、元は本当に良いんすから、もうちょっと手入れした方が良いっすよ？」