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昨日のことの礼。
黒龍高校の不良達に追われていた彼。
そして、そんな者達の一人を事故とは言え倒してしまった。
報復がないとは断言出来ない。
「それで、その……注意喚起をと思ったんすけど……。」
再度のシバマルの言葉。
注意喚起。
それは分かる。
しかし、わざわざこんな朝一に自宅に押し掛けてまですることなのだろうか?
「う、うん。それは分かったんだけど……。」
「良いっすか?鼬原さん!あなたは今、黒高のお尋ね者なんすよ!」
「お、お尋ね者!?」
お尋ね者。
不穏な単語が聞こえた。
「はいっす。」
何やら物騒な言葉を聞いてしまった。
これは腰を据えて聞く必要があるかもしれない。
「と、取り敢えずここじゃ何だから中に入って?」
華子はそう言うとチェーンを外し、シバマルを自宅内へ招き入れた。
「し、失礼しますっす……。」
シバマルがオズオズと入っていく。
「そ、それで私がその……お尋ね者?」
「そうっすね、昨日……えっと……。」
「……?さっきみたいに鼬原で良いよ。」
先ほどはそう呼べていたはずだ。
面と向かってだと言いづらいのだろうか?
そう思いつつ華子が言う。
「……ありがとうございます、い、鼬原さん。俺は藤柴丸雄っす。俺も一年生っすよ!よければシバマルって呼んでほしいっす。」
シバマル改め丸雄が自己紹介をする。
「じゃ、じゃ藤柴君、お願い。」
ニックネームで呼ぶほど親しくない。
華子は彼を名字で呼ぶのだった。
幸か不幸か。
きっと、今の彼女にとってはやや不幸寄りかもしれない。
それでも、華子に同級生の友人が出来たようであった。
「えっと……シバマルって呼んでほしいんすけど……。」
「うん、藤柴君。」
強固な意志。
「あっ……はい、藤柴っす……。」
シュンとする丸雄。
「じゃあ、続きお願いね、藤柴君。」
「うっす……。ちなみになんですけど、鼬原さんは昨日倒した人、誰か分かってます?」
「え、えっと……。」
事故で倒してしまった不良。
周囲の者達よりもどこか雰囲気が違う者であった。
華子にはその程度しか思い出せず、顔はおろか名前すら分からない。
「な、なるほど……あまりよく分かってないってことっすね?」
「……。」
図星。
無言で頷く華子であった。
説明をし始めた丸雄。
そこには、華子が知らなかったことが多々あった。
黒龍高校の不良達に追われていた彼。
そして、そんな者達の一人を事故とは言え倒してしまった。
報復がないとは断言出来ない。
「それで、その……注意喚起をと思ったんすけど……。」
再度のシバマルの言葉。
注意喚起。
それは分かる。
しかし、わざわざこんな朝一に自宅に押し掛けてまですることなのだろうか?
「う、うん。それは分かったんだけど……。」
「良いっすか?鼬原さん!あなたは今、黒高のお尋ね者なんすよ!」
「お、お尋ね者!?」
お尋ね者。
不穏な単語が聞こえた。
「はいっす。」
何やら物騒な言葉を聞いてしまった。
これは腰を据えて聞く必要があるかもしれない。
「と、取り敢えずここじゃ何だから中に入って?」
華子はそう言うとチェーンを外し、シバマルを自宅内へ招き入れた。
「し、失礼しますっす……。」
シバマルがオズオズと入っていく。
「そ、それで私がその……お尋ね者?」
「そうっすね、昨日……えっと……。」
「……?さっきみたいに鼬原で良いよ。」
先ほどはそう呼べていたはずだ。
面と向かってだと言いづらいのだろうか?
そう思いつつ華子が言う。
「……ありがとうございます、い、鼬原さん。俺は藤柴丸雄っす。俺も一年生っすよ!よければシバマルって呼んでほしいっす。」
シバマル改め丸雄が自己紹介をする。
「じゃ、じゃ藤柴君、お願い。」
ニックネームで呼ぶほど親しくない。
華子は彼を名字で呼ぶのだった。
幸か不幸か。
きっと、今の彼女にとってはやや不幸寄りかもしれない。
それでも、華子に同級生の友人が出来たようであった。
「えっと……シバマルって呼んでほしいんすけど……。」
「うん、藤柴君。」
強固な意志。
「あっ……はい、藤柴っす……。」
シュンとする丸雄。
「じゃあ、続きお願いね、藤柴君。」
「うっす……。ちなみになんですけど、鼬原さんは昨日倒した人、誰か分かってます?」
「え、えっと……。」
事故で倒してしまった不良。
周囲の者達よりもどこか雰囲気が違う者であった。
華子にはその程度しか思い出せず、顔はおろか名前すら分からない。
「な、なるほど……あまりよく分かってないってことっすね?」
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無言で頷く華子であった。
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そこには、華子が知らなかったことが多々あった。
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