はりぼてスケバン

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「ご、ごめんなさいっ！」

「い、いえ、大丈夫です。」
その謝罪に対し、特に意識せずに華子は返答した。

「……ひっ！？黒高！？す、すみません！すみませんでした！」
華子の制服を確認したのだろう。
驚き慌てふためく他校の生徒。

彼女の声で、周囲の声がピタリと止まる。
今まで華子は景色の一部であった。
しかし、この瞬間から皆の注目の的となった。

「だ、だから大丈夫ですよ。」

「ほ、本当にすみません！」
尚も謝罪し続ける。
そんな必死な姿に華子は慌ててしまう。

「だ、たからその……。」

駅に到着し、扉が開く。
すると、華子にぶつかった件の彼女は周囲に勢い良くぶつかりながら車内から出て行くのであった。

「……。」
これ以上車内を騒がしくしてはいけない。
華子は無言になり、なるべく目立たないようにと努めた。
もちろん、今さらそんなことをしても無駄であった。

彼女に集まる視線。
それは、決して自意識過剰なわけではなかったり

息が詰まる。
針の筵。
辛い。
あまりにも居心地が悪い。

そこからの時間は体感として数十分。
しかし、その実十分未満であった。

扉が開き、華子は最寄り駅で一目散に降りた。
そこでようやく息苦しさが緩和された。

改札口を抜け、歩いていく。
しかし、自宅の方向とは違う。


中学二年生の冬。
学校を休みがちではいたものの、自室での自習も無理のない程度に努力していた。
しかし、そこには勉学以外の誘惑が多数ある。

誘惑からの逃避。
そして、気分転換の意味もあった。
彼女は自室以外での勉強を行うようになっていった。

自宅から数分の徒歩で到着するような場所。
そこには落ち着いた雰囲気の小さな喫茶店があった。

そこでの一時は、彼女にとってかけがえのないものであった。
のんびりとした午後の一時。
そして、気合いを入れて自習したい時。
様々なタイミングで訪れていた。

再訪に、少し期間が空いてしまった。
そんなスパイスも相まって気持ちが昂った。


到着した。
件の喫茶店だ。
小洒落た筆記体で書かれた店名は、華子に読み取ることは出来なかった。
しかし、今の彼女にはそんなことはどうでも良い。

店内に入る。
良かった。
久しぶりではあったが中の雰囲気も変わっていない。


「いらっしゃい……おや、久しぶりだね。」

「はい！お久しぶりです！」