詩・ショートショート集

膕館啻

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[頑張れ という 言葉]

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『頑張れ』といって得をするのは誰か?
『頑張った』その後、報われるのは誰か。

Aさんは次のテストが不安でした。それを相談するとBさんは「一緒に頑張ろうよ。お前ならできるって」
Bさんは得意げでしたが、結局何のアドバイスにもなっていないと、Aさんは首を傾げました。自分が欲しかったのは耳触りのいい応援ではなく、適当な慰めでなく、具体的な解決案だったと。
仕方なくAさんは誰にも頼ることなく、自分で夜遅くまで勉強しました。そのおかげか、Aさんは自分で満足できる点数を取れました。それを後ろから見たBさんが呟きます。
「おー頑張ったじゃん。俺の応援が効いた? 何つーかお前って、俺がいないとダメだよな」
Aさんは気づきました。Bさんが本当の友人なら、許せていたかもしれないと。そうでないということは、そういうことなんだと。

少年はお爺さんがあまり好きではありませんでした。会うたびに肩を強く掴んで、野球を続けろと言ってくるからです。昔は自分も一目置かれた選手で、今でもファンがいる。お前なら俺に続く選手になることができる。だって俺の血を継いでるんだからな。
平日にテレビを見ているだけのお爺さんのところに、ファンの人が来たのを少年は見たことがありませんでした。
僕は辞めたい。本当は他にやりたいことがあるんだ。
でもお母さんは辞めさせてくれません。「もう少し頑張ってみて。あなたには才能があるの、先生も言ってたでしょう。ここで辞めたらもったいないわよ。それにあなたが続けていれば、それだけでお爺さんが静かになるから、頼むから続けてちょうだい」
少年なりに考えた結果、次の練習試合が良いチャンスだと思いました。ここで自分があまり上手くないことを見せれば、きっと諦めてくれるだろうと。
そして当日、上手く手を抜いていたつもりでしたが、バレてしまいました。本気でやれと怒られてしまいました。少年は悔しいやら情けないやらで、目を熱く潤ませながらも、やけくそに身を任せました。それが幸か不幸か、本日、いや少年の中で一番のプレーに繋がってしまったのです。
予想通り、お爺さんは得意げです。あれは俺の子だ、俺の才能を引き継いでいる。それに普段から全力であいつをサポートしてやっていた。次から次へ、ぽんぽんとこんな言葉を吐き出しています。
少年は気がつきました。自分の頑張りは、自分の幸せに繋がるわけでないと。それどころか、余計な面倒を引き起こす可能性もあると。
お爺さんの頭をかち割る、なんて事も過ぎりましたが、そこまでする価値もないと虚しくなりました。きっとあの人はいつまでもああいう人なんだ。いや、あの人だけじゃなくて皆がそうだ。

何もしてくれなかったのに 『頑張れ』と言った
 それだけで 自分が 関係していると 勘違い している

「頑張って下さい。応援しています」
あなたが頑張れば、僕も頑張れる。辛い仕事も、ライブがあるから乗り越えていける。新曲を買う為にお金を稼げる。君が頑張れば、僕は嬉しい。だから頑張れ 頑張れ 『頑張れ』

僕が飽きるその日まで、『頑張れ』
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