258 / 300
19 12月のダイアリー
12月のダイアリー 11月7日
しおりを挟む
11月7日(木) 晴れ
みっこはやっぱり学校に来ない。
学校では、『文化祭の夜に、みっこが池に落ちた』って話でもちきり。
『ファッションショーの打ち上げに、みっこが出られない』って、ナオミやミキちゃんにことづけを頼んだときには、その理由なんて言わなかったのに、どうしてそんな話が広まってるんだろう?
そう言えば、わたしたちがみっこを駐車場に連れていくとき、二~三人の知り合いに出くわした。
『どうしたの?』って訊かれて、わたしは『みっこが池に落ちたから、着替えにいくところ』って答えたんだっけ。
たったそれだけだったのに、もうこんなに噂が広がっている。
噂って、怖い。
昨日は川島君のこと、ひどく書いたけど、あれからまた、いろいろ考えてみた。
『来るもの拒まず』ってのも、川島君のやさしさの現れかもしれない。
川島君はとっても社交的だし、人との繋がりを大切にする人。
それでいて、自分の世界を大事にしていて、他の人がそこに踏み込んでくることを、極端に嫌うところがある。
例え、踏み込んできたのが、恋人のわたしでもだ。
ある一線を越えて、川島君の世界に土足で入ろうとすると、彼はいきなり冷たい態度に出ることが、何回もあった。
東京に行くと言い出したときも、小説コンクールで佳作に入ったときも、わたしたちは激しくケンカした。
あのときの川島君の拒絶するような冷たい瞳は、今思い出すだけでも怖いくらい。
もし事前に、『みっこをモデルにして写真を撮りたい』って川島君が言ったら、わたしは多分、嫌がっただろうと思う。でも川島君は、みっこをモデルにすることを諦めないだろう。だからきっと、ケンカになった。
そういう自分の性分とわたしの性分を、あの人もわかっているから、わたしとの諍いを避けるために、みっこのことも敢えて言わなかったのかもしれない。
自分の作品づくりとわたしとのつきあいを両立するため、川島君はやむをえず、わたしにないしょにする道を選んだのかもしれない。
それって、善意に解釈しすぎてるかな?
つづく
みっこはやっぱり学校に来ない。
学校では、『文化祭の夜に、みっこが池に落ちた』って話でもちきり。
『ファッションショーの打ち上げに、みっこが出られない』って、ナオミやミキちゃんにことづけを頼んだときには、その理由なんて言わなかったのに、どうしてそんな話が広まってるんだろう?
そう言えば、わたしたちがみっこを駐車場に連れていくとき、二~三人の知り合いに出くわした。
『どうしたの?』って訊かれて、わたしは『みっこが池に落ちたから、着替えにいくところ』って答えたんだっけ。
たったそれだけだったのに、もうこんなに噂が広がっている。
噂って、怖い。
昨日は川島君のこと、ひどく書いたけど、あれからまた、いろいろ考えてみた。
『来るもの拒まず』ってのも、川島君のやさしさの現れかもしれない。
川島君はとっても社交的だし、人との繋がりを大切にする人。
それでいて、自分の世界を大事にしていて、他の人がそこに踏み込んでくることを、極端に嫌うところがある。
例え、踏み込んできたのが、恋人のわたしでもだ。
ある一線を越えて、川島君の世界に土足で入ろうとすると、彼はいきなり冷たい態度に出ることが、何回もあった。
東京に行くと言い出したときも、小説コンクールで佳作に入ったときも、わたしたちは激しくケンカした。
あのときの川島君の拒絶するような冷たい瞳は、今思い出すだけでも怖いくらい。
もし事前に、『みっこをモデルにして写真を撮りたい』って川島君が言ったら、わたしは多分、嫌がっただろうと思う。でも川島君は、みっこをモデルにすることを諦めないだろう。だからきっと、ケンカになった。
そういう自分の性分とわたしの性分を、あの人もわかっているから、わたしとの諍いを避けるために、みっこのことも敢えて言わなかったのかもしれない。
自分の作品づくりとわたしとのつきあいを両立するため、川島君はやむをえず、わたしにないしょにする道を選んだのかもしれない。
それって、善意に解釈しすぎてるかな?
つづく
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる