Campus91

茉莉 佳

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18 Rip Stick ~After side

Rip Stick 32

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「…おめでとう」
「え?」
「よかったじゃない。わたし、みっこの恋、応援してたから」
「さつき…」
「なんだかんだ言って、川島君をモノにできたんだから。川島君もみっこのこと『いい』って言ってたし。これでみっこの望みどおりになったんでしょ?」
「…あたしが望んでいたのは、こんなのじゃない」
「じゃあ、なにが望み?」
「あたし、川島君とつきあいたいなんて、思ってない。さつきから川島君を奪おうなんて、これっぽっちも考えてないから…」
「いいわよ。そんな綺麗ごと言わなくても」
「綺麗ごとなんかじゃ…」
「だれかを好きになって、なのに、その人とつきあいたくないなんて。そんなのあるわけないじゃない!」
「…」
「なんかわたしって、バカみたい。みっこのこと、応援したりしてて。自分の恋敵だったのに」
「…そんな」
「わたし、ずっとみっこに騙されてた。嘘、つかれてた」
「ごめんなさい。だけどあたし、あなたとはずっと親友でいたいから…」
「嘘で塗り固めた親友? そんな友情ってないわよ!」
「…」
「昨日、みっこが話してくれた長崎でのことだって、どうせ口から出まかせだったんでしょ?!
あのときわたし、『みっこはわたしと川島君の仲を、持ってくれようとしてるんだな』って思って感動したけど、損しちゃった」
「そんなことない。ほんとの話よ!」
「嘘! みっこは『誘われたときは、悩んだ』とか『変なことになったら困る』とか言ってたけど、ほんとはそうなるのを望んでたんじゃない。『文哉さんが好きだから』とか、嘘ばっかりついて!」
「…それは。あたしが文哉さんを好きなことにしておけば、さつきとはうまくやっていけるんじゃないかと思って…」
「『うまくやっていける』って、わたしのこと、うまく騙し通すつもりだったってことよね」
「違う! 違うの!
あたしも… あなたに嘘をつくのは、心が、痛かった… 潰れそうだった」
「いい子ぶらないでよ!」
「そんなつもりじゃ…」
「もうわたし、みっこのこと、なにも信じられないから」
「ごめんなさい。ほんとにごめんなさい。でも、あたしの話も聞いて」
「聞きたくない! どうせ嘘っぱちの話だし。みっこは嘘しか言わないし!」
「ひどいっ。そんなひどいこと、言わないで」
「どっちがひどいのよ! 嘘ばっかりついて、わたしを騙しといて!
もういいから、わたしのことは放っといてよ! もう電話してこないで!」
「そんな言い方。いくらさつきだって…」
「だってなによ! わたし、今までみっこに友だちができなかった理由が、よくわかった。
みっこみたいにワガママで嘘つきで、親友の彼氏でも狙うような女。友だちなんかできないわよ!
もうわたしのことは放っといて!」
「さつき。さつき!」

つづく
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