Campus91

茉莉 佳

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18 Rip Stick ~After side

Rip Stick 31

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「眠っていたの?」
「ええ」
「ごめんなさい。起こしちゃって」
「いいよ。もう夕方だし、起きなきゃいけなかったから」
「さつき…」
「…なに?」
「ごめんなさい」
「…なに、あやまってるの?」
「昨日…」
「夕べのこと?」
「ええ… あたし…」
「別に、もう、あやまってもらわなくても、いい」
「でも…」
「あやまるくらいなら、はじめっから、やってほしくなかった」
「…」
「今さらみっこにあやまってもらっても、もう、どうしようもないもん」
「あなたたち…」
「ええ。別れたわよ」
「ほんとうだったの?」
「さすが、情報早いわね。みっこ」
「…川島君から聞いて」
「どうして川島君、みっこにそんなこと、いちいち報告するの?」
「…」
「みっこと川島君って、そうやっていつも、連絡とりあってたのね」
「いつもっていうわけじゃないけど…」
「川島君、そこにいるの?」
「ううん」
「もう、帰ったの?」
「もう、って?」
「わたしと別れたあと、みっこんに行ったかと思ってたから」
「そんなことないわ。朝、さつきといっしょに帰ったきりよ」
「ふ~ん。なんか、意外」
「さつき。説明させてよ」
「なにを?」
「あたし、昨日は混乱してて… 助けに来てくれたのは、てっきり文哉さんだと思って…」
「やめてよ! そんな見え透いたウソ!」
「…」
「もういいわよ。みっこがだれを好きでも。別にわたしにはもう、関係ないんだから」
「…ごめんなさい」
「みっこって、やっぱり、すごいよね」
「え?」
「わたし、全然気づかなかった」
「…」
「ううん。『みっこは川島君のことが好きなのかな?』って疑ってたときもあったわ。
でも、先週の夜。公園でみっこから、『藤村さんが好き』って打ち明けられて、すっかり信じ込んでた。
あのときは迫真の演技だったもんね。涙まで流して。
さすが、女優の話がくるだけのことはあるわよね」
「…」
「モルディブに行ったときね。実はわたし、みっこが藤村さんとキスしているところ、見たのよ」
「えっ?」
「月明かりの海岸で、みっこと藤村さん、抱き合ってたでしょ」
「…」
「それを見てたから、みっこが『藤村さんのこと好き』って言ったとき、わたしもすっかり信じちゃったのよ。あれはいったい、なんだったの?」
「あたし… あのときはただ、さつきたちのことが羨ましくって。だれかと肌を重ねたくって…」
「みっこは、だれとでも寝るの?」
「ひどい言い方しないでちょうだい。あのときはちょっと、その気になっただけ。
あたし、文哉さんのことはほんとに好きだし、さつきたちのことで、なんだか動揺してたから」
「動揺って、わたしに川島君を寝盗られたとでも、思ったわけ?」
「そうじゃない! でも… 純粋に愛しあっているあなたたちが、ほんとに羨ましかった」
「あのときからみっこ、川島君のこと、好きだったのね」
「…」
「もうはっきりさせよ。
みっこが好きなのは、川島君なのね?!」
「…」
「そうよね」
「……ん」

つづく
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