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18 Rip Stick ~After side
Rip Stick 27
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川島祐二は、言葉に詰まった。
その様子に、わたしはいっぺんに頭に血が昇ってしまい、口調を荒げた。
「わたし、みっこのマンションを川島君に教えたことなんてないし、九重に行った帰りも、みっこを途中で降ろしよね。
家まで送るのは、川島君の主義でしょ。
だから長崎にみっこと行った帰りに、彼女のこと、送ってきたのね?
部屋にも… みっこの部屋にも、寄ったことあるのね?」
「…」
彼は言い訳もせず、黙ったまま。
その沈黙にわたしは狂いそうなくらい、胸が掻きむしられた。
信じられない。
ひとり暮らしの女の子の部屋に、行くなんて。
自分の恋人の親友の部屋に、のこのこ上がり込むなんて!
みっことあの部屋で、ふたりっきりで、いったいなにをしてたっていうの?
ものすごいスピードで、わたしの頭の中にいろんな妄想が暴走していく。
昨日見た、川島君とみっこのキスシーンや、モルディブでの夜に見た、藤村さんとのラブシーンが、ぐしゃぐしゃになって重なる。
みっこのあの美しい肢体が、川島君に絡みつき、艶かしくあえぎ、川島君とひとつになる妄想が、鮮やかなナイフのように、わたしの胸を切り裂く。
なんだかもう、自分の気持ちを支えるものを全部なくしちゃった気がして、わたしはいっぺんに感情が爆発してしまった。
「どっちから誘ったのよっ!」
「さつきちゃん…」
「みっことは長崎だけじゃなくて、東京でも会ってたんでしょ?
わたしがいないのをいいことに、ディズニーランドとか行ってたんでしょ!」
「さつきちゃん」
「全部知ってるのよ! 東京じゃそうやって、ずっとデートしてたんじゃない?
ミッキーマウスの万年筆なんかでわたしのご機嫌をとろうとか、バカにしないでよ!」
「確かにみっことは、東京で何度かふたりきりで会ったし、それをさつきちゃんに言わなかったのは悪かったけど…」
「やっぱり。東京でみっこと会ってたのね!?」
「あ… ああ。でも、さつきちゃんに謝らなきゃいけないようなことは、ぼくはしてないよ」
「どうしてそんなに開き直ってるのっ? 会ってたのは事実でしょ!」
「会ってたって言っても、写真のモデルをお願いしてただけだよ」
「いつでも、モデル、モデルって! 都合のいい口実よね。そう言えばわたしが納得すると思ってるの?」
「さつきちゃんは、認めてくれないのか?」
「当たり前じゃない! ふたりっきりで撮影に出かけるなんて。デートと同じことじゃない」
わたしの言葉に、川島祐二は大きくため息をつく。
「だからさつきちゃんには、こういうことはあまり話したくなかったんだよ。ケンカになるのは目に見えていたから」
「そんなのが、黙ってる言い訳になると思うの? 黙ってるのはうしろめたいからとしか思えないわよ。みっこと浮気してたって」
「そうじゃないって、前にも説明しただろ。ぼくはモデルとは、恋愛感情抜きで接するんだって」
「川島君に恋愛感情があるかどうかなんて、わたしにはわからないじゃない。そんなの勝手な言い分よ。男女がふたりっきりで会ってたら、それはデートと同じことよ。世間的には」
「世間的って。そんな俗っぽいことをさつきちゃんが言うなんて、思わなかったな」
「俗っぽいって… 現にみっこは、川島君に恋愛感情持ってたんだから、立派なデートじゃない!」
「だから、それは…」
「だいたい川島君にだって、『好き』って気持ちがなきゃ、モデルなんて頼めないんじゃない?
蘭さんのことだって、ほんとは川島君も好きだったんじゃないの? だから彼女もその気になったんじゃないの?」
「じゃあなにかい? ぼくは、さつきちゃん以外の女の子の写真は、撮れないのか? 撮っちゃダメなのか?」
憤然とした口調で、川島君は反論した。
その言葉は、わたしの火がついた鬱憤に、よけいに油を注いだ。
つづく
その様子に、わたしはいっぺんに頭に血が昇ってしまい、口調を荒げた。
「わたし、みっこのマンションを川島君に教えたことなんてないし、九重に行った帰りも、みっこを途中で降ろしよね。
家まで送るのは、川島君の主義でしょ。
だから長崎にみっこと行った帰りに、彼女のこと、送ってきたのね?
部屋にも… みっこの部屋にも、寄ったことあるのね?」
「…」
彼は言い訳もせず、黙ったまま。
その沈黙にわたしは狂いそうなくらい、胸が掻きむしられた。
信じられない。
ひとり暮らしの女の子の部屋に、行くなんて。
自分の恋人の親友の部屋に、のこのこ上がり込むなんて!
みっことあの部屋で、ふたりっきりで、いったいなにをしてたっていうの?
ものすごいスピードで、わたしの頭の中にいろんな妄想が暴走していく。
昨日見た、川島君とみっこのキスシーンや、モルディブでの夜に見た、藤村さんとのラブシーンが、ぐしゃぐしゃになって重なる。
みっこのあの美しい肢体が、川島君に絡みつき、艶かしくあえぎ、川島君とひとつになる妄想が、鮮やかなナイフのように、わたしの胸を切り裂く。
なんだかもう、自分の気持ちを支えるものを全部なくしちゃった気がして、わたしはいっぺんに感情が爆発してしまった。
「どっちから誘ったのよっ!」
「さつきちゃん…」
「みっことは長崎だけじゃなくて、東京でも会ってたんでしょ?
わたしがいないのをいいことに、ディズニーランドとか行ってたんでしょ!」
「さつきちゃん」
「全部知ってるのよ! 東京じゃそうやって、ずっとデートしてたんじゃない?
ミッキーマウスの万年筆なんかでわたしのご機嫌をとろうとか、バカにしないでよ!」
「確かにみっことは、東京で何度かふたりきりで会ったし、それをさつきちゃんに言わなかったのは悪かったけど…」
「やっぱり。東京でみっこと会ってたのね!?」
「あ… ああ。でも、さつきちゃんに謝らなきゃいけないようなことは、ぼくはしてないよ」
「どうしてそんなに開き直ってるのっ? 会ってたのは事実でしょ!」
「会ってたって言っても、写真のモデルをお願いしてただけだよ」
「いつでも、モデル、モデルって! 都合のいい口実よね。そう言えばわたしが納得すると思ってるの?」
「さつきちゃんは、認めてくれないのか?」
「当たり前じゃない! ふたりっきりで撮影に出かけるなんて。デートと同じことじゃない」
わたしの言葉に、川島祐二は大きくため息をつく。
「だからさつきちゃんには、こういうことはあまり話したくなかったんだよ。ケンカになるのは目に見えていたから」
「そんなのが、黙ってる言い訳になると思うの? 黙ってるのはうしろめたいからとしか思えないわよ。みっこと浮気してたって」
「そうじゃないって、前にも説明しただろ。ぼくはモデルとは、恋愛感情抜きで接するんだって」
「川島君に恋愛感情があるかどうかなんて、わたしにはわからないじゃない。そんなの勝手な言い分よ。男女がふたりっきりで会ってたら、それはデートと同じことよ。世間的には」
「世間的って。そんな俗っぽいことをさつきちゃんが言うなんて、思わなかったな」
「俗っぽいって… 現にみっこは、川島君に恋愛感情持ってたんだから、立派なデートじゃない!」
「だから、それは…」
「だいたい川島君にだって、『好き』って気持ちがなきゃ、モデルなんて頼めないんじゃない?
蘭さんのことだって、ほんとは川島君も好きだったんじゃないの? だから彼女もその気になったんじゃないの?」
「じゃあなにかい? ぼくは、さつきちゃん以外の女の子の写真は、撮れないのか? 撮っちゃダメなのか?」
憤然とした口調で、川島君は反論した。
その言葉は、わたしの火がついた鬱憤に、よけいに油を注いだ。
つづく
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