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18 Rip Stick ~before side
Rip Stick 2
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「もしかしてぼくと… 別れたい?」
「えっ?」
そんなこと、わたし…
考えたこともない。
わたしは強く、かぶりを振った。
不安そうな表情のまま、川島君はわたしの顔をのぞきこむ。
「ほんとに? でも、さつきちゃん。ぼくのこと避けてるだろ?
最近いろいろあったから、もうぼくのこと、嫌いになったのかなと思って…」
「そんなこと。ない」
「ほんとに?」
返事の代わりにうなずき、わたしは恐る恐る訊ねる。
「川島君こそ、わたしとは別れたいんじゃない?」
「そんなこと、あるわけないよ」
「わたしのこと、まだ好き?」
「『まだ』じゃない。ずっと好きだよ」
「ほんとに?」
「いつか海で約束したじゃないか。来年も再来年も、さつきちゃんの誕生日には花束を贈るって。ずっとずっと、さつきちゃんのことは、好きだよ」
「…ん」
そう言ってうなずいた瞬間、涙がこぼれそうになる。
そんなわたしの手を川島君はぎゅっと握りしめて、明るく言った。
「大丈夫だよ。なにも心配いらないって。今日は天気もいいし、思いっきり楽しもうな。今までのモヤモヤを全部吹き飛ばすくらいに、な!」
「うん」
やっぱりわたしは、この人が好き。
ディズニーランドのことや森田美湖のことなど、いろいろ不安で、訊いてみたいことはたくさんあるけど、それは今は置いといて、彼の言うとおり、今日こそは楽しい一日を、川島君といっしょに過ごしたい。
たこ焼きに焼き鳥、フライドポテト。
色とりどりのノボリの立った、賑やかな模擬店から漂ってくる、美味しそうな香り。
『ラムちゃん』やメイドさんなど、ちょっとエッチなコスプレ衣装をまとって、黄色い声を張り上げている呼び込みの可愛い女の子たち。
目についたお店で、川島君はいろんな食べ物を買ってくれた。
道ばたの大道芸にはいっしょに拍手を送り、わたしが行きたいと言った展示やイベントにも、快くつきあってくれて、いっしょに楽しんでくれる。
川島君の言ったとおり、今日の文化祭で過ごす時間が楽しくなるよう、いろいろ気を遣ってくれた。
そうやって尽くされると、わたしのわだかまりも少しずつ解けていき、川島君に向ける笑顔も、自然なものになっていくのを感じる。
よかった。
今日こうして、川島君とデートできて。
「よう、おふたりさん! 元気そうじゃないか」
「お邪魔してるわよ。川島君」
模擬店の店先でふたりでクリームソーダを飲んでいるとき、わたしたちに声をかけてきた人たちがいた。
振り向くとそこには、ディレクターの藤村さんとカメラマンの星川先生が、にこやかな表情で立っている。川島君は驚いて訊いた。
「星川先生。藤村さん。もう来られたんですか?」
「早い便で着いたんだよ。その分、ステージが終わったらとんぼ返りだけどな。ファッションショーの時間には、まだだいぶあるみたいだな」
「えっ? みっこのファッションショーを見に来られたんですか?」
わたしも驚いて藤村さんに尋ねる。
「そうだよ。みっこちゃんから招待券をもらったんだよ。彼女がステージに立つのなんて、ほんとに久し振りだからね。しかも注目の若手デザイナーのブランドって話じゃないか。今からショーが楽しみだよ」
「開演は6時からだけど、3時半からリハーサルがあるんです。もうすぐ楽屋に入るはずだから、藤村さんも行きませんか?」
「そうか。さつきちゃんもショーの手伝いするんだね。まあ、今はばたばたしているだろうから、終わったあとにでも、ゆっくり挨拶するよ」
「ショーは一般も撮影OKなんでしょ? わたしは観客席からこっそり、撮らせてもらうわ」
そう言いながら星川先生は、肩からかけた大きなカメラバッグを、ポンと叩いた。
「先生。そんなデカい一眼レフに長玉くっつけてちゃ、『こっそり』じゃないですよ」
川島君が星川先生を冷やかすと、先生はにこにこ微笑みながら応える。
「ショーもだけど、今日は川島君の返事も聞きたかったのよ」
「え? わざわざ、恐れ入ります」
星川先生の視線に少し照れるように、川島君はかしこまって言った。
『返事』って…
いったいなに?
つづく
「えっ?」
そんなこと、わたし…
考えたこともない。
わたしは強く、かぶりを振った。
不安そうな表情のまま、川島君はわたしの顔をのぞきこむ。
「ほんとに? でも、さつきちゃん。ぼくのこと避けてるだろ?
最近いろいろあったから、もうぼくのこと、嫌いになったのかなと思って…」
「そんなこと。ない」
「ほんとに?」
返事の代わりにうなずき、わたしは恐る恐る訊ねる。
「川島君こそ、わたしとは別れたいんじゃない?」
「そんなこと、あるわけないよ」
「わたしのこと、まだ好き?」
「『まだ』じゃない。ずっと好きだよ」
「ほんとに?」
「いつか海で約束したじゃないか。来年も再来年も、さつきちゃんの誕生日には花束を贈るって。ずっとずっと、さつきちゃんのことは、好きだよ」
「…ん」
そう言ってうなずいた瞬間、涙がこぼれそうになる。
そんなわたしの手を川島君はぎゅっと握りしめて、明るく言った。
「大丈夫だよ。なにも心配いらないって。今日は天気もいいし、思いっきり楽しもうな。今までのモヤモヤを全部吹き飛ばすくらいに、な!」
「うん」
やっぱりわたしは、この人が好き。
ディズニーランドのことや森田美湖のことなど、いろいろ不安で、訊いてみたいことはたくさんあるけど、それは今は置いといて、彼の言うとおり、今日こそは楽しい一日を、川島君といっしょに過ごしたい。
たこ焼きに焼き鳥、フライドポテト。
色とりどりのノボリの立った、賑やかな模擬店から漂ってくる、美味しそうな香り。
『ラムちゃん』やメイドさんなど、ちょっとエッチなコスプレ衣装をまとって、黄色い声を張り上げている呼び込みの可愛い女の子たち。
目についたお店で、川島君はいろんな食べ物を買ってくれた。
道ばたの大道芸にはいっしょに拍手を送り、わたしが行きたいと言った展示やイベントにも、快くつきあってくれて、いっしょに楽しんでくれる。
川島君の言ったとおり、今日の文化祭で過ごす時間が楽しくなるよう、いろいろ気を遣ってくれた。
そうやって尽くされると、わたしのわだかまりも少しずつ解けていき、川島君に向ける笑顔も、自然なものになっていくのを感じる。
よかった。
今日こうして、川島君とデートできて。
「よう、おふたりさん! 元気そうじゃないか」
「お邪魔してるわよ。川島君」
模擬店の店先でふたりでクリームソーダを飲んでいるとき、わたしたちに声をかけてきた人たちがいた。
振り向くとそこには、ディレクターの藤村さんとカメラマンの星川先生が、にこやかな表情で立っている。川島君は驚いて訊いた。
「星川先生。藤村さん。もう来られたんですか?」
「早い便で着いたんだよ。その分、ステージが終わったらとんぼ返りだけどな。ファッションショーの時間には、まだだいぶあるみたいだな」
「えっ? みっこのファッションショーを見に来られたんですか?」
わたしも驚いて藤村さんに尋ねる。
「そうだよ。みっこちゃんから招待券をもらったんだよ。彼女がステージに立つのなんて、ほんとに久し振りだからね。しかも注目の若手デザイナーのブランドって話じゃないか。今からショーが楽しみだよ」
「開演は6時からだけど、3時半からリハーサルがあるんです。もうすぐ楽屋に入るはずだから、藤村さんも行きませんか?」
「そうか。さつきちゃんもショーの手伝いするんだね。まあ、今はばたばたしているだろうから、終わったあとにでも、ゆっくり挨拶するよ」
「ショーは一般も撮影OKなんでしょ? わたしは観客席からこっそり、撮らせてもらうわ」
そう言いながら星川先生は、肩からかけた大きなカメラバッグを、ポンと叩いた。
「先生。そんなデカい一眼レフに長玉くっつけてちゃ、『こっそり』じゃないですよ」
川島君が星川先生を冷やかすと、先生はにこにこ微笑みながら応える。
「ショーもだけど、今日は川島君の返事も聞きたかったのよ」
「え? わざわざ、恐れ入ります」
星川先生の視線に少し照れるように、川島君はかしこまって言った。
『返事』って…
いったいなに?
つづく
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