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14 Summer Vacation
Summer Vacation 4
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川島君は新幹線で、みっこは飛行機で、それぞれ交互して東京へと発って行った。
駅や空港でふたり見送ったあと、『ふぅ』と大きく、わたしはため息をついた。
『淋しい夏休みになりそう』
『川島君とみっこが、東京にいる』
そんな予感と、漠然とした不安。
ふたつの心をかき乱す感情が、わたしの中で交錯していた。
『毎日電話するから』と言って、川島君は下宿先のアドレスと電話番号を書いたメモをくれたし、ふたりとも別々の所にいて、別々のスケジュールをこなすのだろうけど…
それで、も漠然とした不安が、心の奥から拭えない。
みっこを空港まで見送った帰りのバスの中で、わたしはいろんな可能性を考えていた。
川島君とみっこが、東京で顔を合わせないってことが、あるかしら?
川島君は星川先生のところで働いているんだし、みっこはその先生と、仕事をすることがあるかもしれない。
そうすれば、川島君とみっこはいっしょに仕事をすることになって、仕事が終わると、みんなで食事とか遊びに行くかもしれない。
そうなると、川島君とみっこはもっと親密になるだろう。
ふたりとも気さくな性格だから、もしかして個人的に連絡とりあって、川島君がみっこを食事に誘うってこともあるしれないし、ひょっとして、みっこの方から連絡するかもしれない。
そうなるとふたりとも、もっと仲良くなって、それ以上のことだって…
いや。
そもそも、星川先生が川島君を東京に呼んだのは、みっこに頼まれたからかもしれない。
そうでも考えないと、一流の写真家が、いくら『気に入った』からって、地方の一学生を、わざわざ東京に呼んだりするはずがない。
もし、そうだとしたら…
この場合、全部わたしの『~かもしれない』って妄想ばかりなんだけど、この長い一ヶ月半の間に、わたしの目の届かないところで、川島君とみっこが親しくなるのが、なによりも怖かった。
「もうっ、グジグジ考えるのやめやめ! せっかくの夏休みだから、わたしもあまり川島君やみっことばかりベタベタしてないで、他の友だちとバカンスしよっ!」
そんな強がりを言って、わたしは家に帰るとさっそく、思いつく友だちに電話していった。
今年の夏休みは暑苦しいばかりの、なんとも味気ない、退屈で、悶々としたバケーションだった。
川島君からの電話は、最初のうちは約束どおり毎日かかってきたものの、仕事や電話代を口実に、かかってこない日も増え、話している時間も、少しずつ短くなっていった。
時折かかるみっこからの電話も、わたしのフラストレーションを、なにも解決してくれない。
一日一日が、ただぼんやりと過ぎていく。
気晴らしにわたしも、ファーストフードのアルバイトをはじめてみたけど、ただ忙しいばっかりで、ちっとも心が晴れることはなかった。
バイトの男の子に、『遊びに行かないか?』って誘われたこともあったけど、とてもそんな気分にならず、適当な口実をつけて断ってしまった。
こうしていると、川島祐二と森田美湖というふたりの人間が、わたしにとっていかに大きな存在だったのか、ふたりがいなくなって、改めて思い知らされた気分。
これは他のなにでも、だれでも、埋めることはできないのかもしれない。
8月のカレンダーに、消化した日々を機械的にチェックつけていきながら、わたしはそんなことばかり考えていた。
そして、バツ印がカレンダーの半分以上を埋め尽くした頃、わたしはやっと決心した。
この不安を根本から解決するには、そうするしかない。
「わたしも東京に行こう!」
そう決めたわたしは、ふたりにアポイントを取り,『みっこの家に泊めてもらうから』と言って、渋る両親を説得し、一週間くらいの滞在予定を立て、8月下旬に新幹線で福岡をあとにした。
つづく
駅や空港でふたり見送ったあと、『ふぅ』と大きく、わたしはため息をついた。
『淋しい夏休みになりそう』
『川島君とみっこが、東京にいる』
そんな予感と、漠然とした不安。
ふたつの心をかき乱す感情が、わたしの中で交錯していた。
『毎日電話するから』と言って、川島君は下宿先のアドレスと電話番号を書いたメモをくれたし、ふたりとも別々の所にいて、別々のスケジュールをこなすのだろうけど…
それで、も漠然とした不安が、心の奥から拭えない。
みっこを空港まで見送った帰りのバスの中で、わたしはいろんな可能性を考えていた。
川島君とみっこが、東京で顔を合わせないってことが、あるかしら?
川島君は星川先生のところで働いているんだし、みっこはその先生と、仕事をすることがあるかもしれない。
そうすれば、川島君とみっこはいっしょに仕事をすることになって、仕事が終わると、みんなで食事とか遊びに行くかもしれない。
そうなると、川島君とみっこはもっと親密になるだろう。
ふたりとも気さくな性格だから、もしかして個人的に連絡とりあって、川島君がみっこを食事に誘うってこともあるしれないし、ひょっとして、みっこの方から連絡するかもしれない。
そうなるとふたりとも、もっと仲良くなって、それ以上のことだって…
いや。
そもそも、星川先生が川島君を東京に呼んだのは、みっこに頼まれたからかもしれない。
そうでも考えないと、一流の写真家が、いくら『気に入った』からって、地方の一学生を、わざわざ東京に呼んだりするはずがない。
もし、そうだとしたら…
この場合、全部わたしの『~かもしれない』って妄想ばかりなんだけど、この長い一ヶ月半の間に、わたしの目の届かないところで、川島君とみっこが親しくなるのが、なによりも怖かった。
「もうっ、グジグジ考えるのやめやめ! せっかくの夏休みだから、わたしもあまり川島君やみっことばかりベタベタしてないで、他の友だちとバカンスしよっ!」
そんな強がりを言って、わたしは家に帰るとさっそく、思いつく友だちに電話していった。
今年の夏休みは暑苦しいばかりの、なんとも味気ない、退屈で、悶々としたバケーションだった。
川島君からの電話は、最初のうちは約束どおり毎日かかってきたものの、仕事や電話代を口実に、かかってこない日も増え、話している時間も、少しずつ短くなっていった。
時折かかるみっこからの電話も、わたしのフラストレーションを、なにも解決してくれない。
一日一日が、ただぼんやりと過ぎていく。
気晴らしにわたしも、ファーストフードのアルバイトをはじめてみたけど、ただ忙しいばっかりで、ちっとも心が晴れることはなかった。
バイトの男の子に、『遊びに行かないか?』って誘われたこともあったけど、とてもそんな気分にならず、適当な口実をつけて断ってしまった。
こうしていると、川島祐二と森田美湖というふたりの人間が、わたしにとっていかに大きな存在だったのか、ふたりがいなくなって、改めて思い知らされた気分。
これは他のなにでも、だれでも、埋めることはできないのかもしれない。
8月のカレンダーに、消化した日々を機械的にチェックつけていきながら、わたしはそんなことばかり考えていた。
そして、バツ印がカレンダーの半分以上を埋め尽くした頃、わたしはやっと決心した。
この不安を根本から解決するには、そうするしかない。
「わたしも東京に行こう!」
そう決めたわたしは、ふたりにアポイントを取り,『みっこの家に泊めてもらうから』と言って、渋る両親を説得し、一週間くらいの滞在予定を立て、8月下旬に新幹線で福岡をあとにした。
つづく
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