Campus91

茉莉 佳

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Audition 2

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「オーディション?」
「モデルクラブからの言いつけだって」
みっこがナオミの代わりに答える。
「モデルクラブ?」
「去年の学園祭のときに、ナオミ、スカウトされたでしょ」
「あ。そうだったわね」
学園祭のファッションショーのあと、『東京のモデルクラブからスカウトされた』って、ナオミは言ってたっけ。そこはなんでも、みっこが所属している事務所ということだった。
「あのときナオミ、『モデルになれる』って舞い上がってたわね~。もうCMとかには出れたの?」
「もぅ~、さつきちゃ~ん。わかってないんだからぁ」
『Oh! No』というように、ナオミは大袈裟に肩をすくめ、両手を上げるゼスチャーをした。
「スカウトされたって言っても、ただ、モデルクラブに入れたってだけなのよぉ。
この世界、そんな簡単にデビューなんてできないんだからぁ。モデルとしての基礎を、ちゃんと学んどかなきゃいけないのよぉ。そのレッスンがキツくてキツくて…
おまけに人のこと、『ウエストと二の腕に肉が付きすぎ』だの、『尻から太もものセルライトがみっともない』だの、バカにしてぇ。
もうイヤになっちゃう。
でも悔しいけど、そこは越えなきゃいけない壁なのよねぇ~」
「ふふ。ナオミも少しはわかってきたみたいね。はい、ごほうび」
みっこはそう言って、自分のピザのひとピースを、ナオミの口に押し込みながら言う。
「ナオミは、パリやニューヨークでパチパチ写真撮られたいんでしょ?
だったら、過激なダイエットなんてしないで、キチンと胸も体力もつけて、頑張らなくちゃね」
「んぐ。おいしいけど…
ライバルのあたしを太らせて蹴落とす、みこちゃんの作戦に、まんまとはまったみたい」
「先生に向かって、そういうセリフは10年早いわよ」
「先生? みっこが?」
「ナオミに頼まれてね。モデルの個人レッスンをしてるのよ」
「さつきちゃんからも言ってよぉ。みこちゃんのレッスン、超きびしぃ~」
「そりゃね。あたしって『攻め系』だから。さつきからも言われたし」
「うわ。みっこ、そんなずいぶん前に言ったこと、よく覚えてるのね」
「あたし、そういう物覚えはいいのよ」
「みこちゃん、やっぱり意地悪ぅい~」
「じゃあ、レッスン、もうやめる?」
「ううん。頑張る」
「その意気よ。今日はもう試験ないんでしょ。ごはん食べ終わったら行きましょ」
「行くって?」
「あたしのマンションのスタジオで、ナオミのモデルレッスンするのよ。さつきも来る?」
「え? いいの?」
「え~。さつきちゃんに見られるの? 恥ずかしいよぉ」
「大丈夫よ。たくさんの視線を浴びた方が、美しくなれるって」
そう言ってみっこは笑った。

つづく
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