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09 Moulin Rouge
Moulin Rouge 2
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…ったく。ディスコっていうのは、すごいところ。
入口でチケットを渡して薄暗い店内に入ったところから、もう単調な低音のリズムが響いてくる。
重いホールの扉を開けると、それがいきなり爆音に変わり、赤や緑のレーザービームが激しくまたたいて、視覚を奪う。壁一面の大きなスピーカーからは、アップビートのサウンドが吼え狂い、おなかをグーで殴られるような重低音が襲ってくる。
片方の壁はテレビのモニターでびっしりと埋め尽くされ、わけのわからないイメージ画像を映し出していて、目がチカチカする。
吹き抜けの高い天井では、SF映画に出てくるようなグロテスクな形をしたライトが、まるでエイリアンのように、激しくアップダウンや回転を繰り返している。
ひときわ高くなったお立ち台の上では、テレビで見たことがあるようなボディコンの女の子たちが、扇子を手に持って激しくからだをくねらせ、その下には、彼女たちを崇めるように男たちが取り巻き、そこから発散される汗とフェロモンと化粧の匂いで、息が詰まりそう。
ひとことで言えば、男と女の欲望を呑み込んだ怪物が、唸りを上げて地の底から這い出してくるみたい。
その迫力にわたしと川島君は、まずは圧倒されてしまった。
「あそこのボックスが空いてるわ。ラッキー。行くわよさつき」
そう言って上手に人ごみを縫いながら、まだ戸惑っているわたしの手をとり、みっこは奥のボックスシートへ向かった。
「ちぇっ。やっぱり金夜は人が多いぜ」
踊っている人と肩をぶつけながら、芳賀さんは舌打ちした。
「じゃ~ん」
ボックスシートにたどり着いたみっこはそう言いながら、羽織っていたハーフコートをみんなの前で脱いだ。
「!」
思わず絶句。
確かに、街なかじゃ歩けないような、すっごいカッコ!
からだにぴっちり張りついた、真っ赤な超ミニのボディコンワンピース。
ヴァージスライン(バスト下のライン)まで襟ぐりが開いたデザインなので、黒いブラジャーのカップがぜんぶ露出している。
アンダーバストより下はぴったりからだに貼りついているから、胸のふくらみがよけいに強調されていて、二重に巻いているパールのネックレスが、さらにゴージャスさを醸している。
パンツが見えそうなくらい短いドレスは、切れ上がったお尻のラインが、深紅の桃みたいに浮き上がってみえる。
深いスリットが入ったミニドレスは、レースアップの隙間からチラリと太ももがのぞいて、ドレスの裾からは、黒いガーターベルトのストラップ。太ももで止められたストッキングが、なんだかあやうい雰囲気。
ガーターストッキングなんて、生で見るのははじめて。
う~ん。これは悩ましい。
ただのはだかより、なぜか余計にエロティックに感じる。
みっこいいの?
そんなに見せて。
川島君なんて、目のやり場に困ってるじゃない。
「み、みっこ。ブラ丸出しだけど…」
「これ? 大丈夫。見せブラよ」
「そっ、そんな問題じゃなくて…」
「ほら。ふだんよりスタイルよく見えるでしょ。
このブラ、寄せ上げ効果があるから、あたしみたいな小さい胸でも、こんなに谷間ができるのよ」
そう言って、みっこはわざとらしく両腕で胸を挟み、谷間を作っていたずらっぽく微笑んだ。
「おお。みっこ。今日はいちだんとセクシーだな」
さっきまでのクールさとは打って変わり、芳賀さんが目尻をさげながらみっこを見つめ、褒める。
「ふふ。せっかくのディスコだもの。だれにも負けたくないしね」
「お立ち台にいる女どものだれよりも、おまえの方が魅力的だぜ」
「そう? ありがと」
「みっこって、いったいだれと張り合ってるのよ?」
「世界中の女… なんてね。さあ、さつき。まずは食べ物取りに行くわよ!」
そう言って、みっこはわたしの腕を引っ張り、奥のフードコーナーへと向かう。
ボックスシートとフードコーナーを、みんなで何度か往復する。
テーブルの上にはまたたくまに、ポテトやミートパイ、スナック類にジュース、アルコールドリンクなんかが、ずらりと並んだ。
男性4,000円、女性3.000円で食べ放題ってのは、嬉しい。
つづく
入口でチケットを渡して薄暗い店内に入ったところから、もう単調な低音のリズムが響いてくる。
重いホールの扉を開けると、それがいきなり爆音に変わり、赤や緑のレーザービームが激しくまたたいて、視覚を奪う。壁一面の大きなスピーカーからは、アップビートのサウンドが吼え狂い、おなかをグーで殴られるような重低音が襲ってくる。
片方の壁はテレビのモニターでびっしりと埋め尽くされ、わけのわからないイメージ画像を映し出していて、目がチカチカする。
吹き抜けの高い天井では、SF映画に出てくるようなグロテスクな形をしたライトが、まるでエイリアンのように、激しくアップダウンや回転を繰り返している。
ひときわ高くなったお立ち台の上では、テレビで見たことがあるようなボディコンの女の子たちが、扇子を手に持って激しくからだをくねらせ、その下には、彼女たちを崇めるように男たちが取り巻き、そこから発散される汗とフェロモンと化粧の匂いで、息が詰まりそう。
ひとことで言えば、男と女の欲望を呑み込んだ怪物が、唸りを上げて地の底から這い出してくるみたい。
その迫力にわたしと川島君は、まずは圧倒されてしまった。
「あそこのボックスが空いてるわ。ラッキー。行くわよさつき」
そう言って上手に人ごみを縫いながら、まだ戸惑っているわたしの手をとり、みっこは奥のボックスシートへ向かった。
「ちぇっ。やっぱり金夜は人が多いぜ」
踊っている人と肩をぶつけながら、芳賀さんは舌打ちした。
「じゃ~ん」
ボックスシートにたどり着いたみっこはそう言いながら、羽織っていたハーフコートをみんなの前で脱いだ。
「!」
思わず絶句。
確かに、街なかじゃ歩けないような、すっごいカッコ!
からだにぴっちり張りついた、真っ赤な超ミニのボディコンワンピース。
ヴァージスライン(バスト下のライン)まで襟ぐりが開いたデザインなので、黒いブラジャーのカップがぜんぶ露出している。
アンダーバストより下はぴったりからだに貼りついているから、胸のふくらみがよけいに強調されていて、二重に巻いているパールのネックレスが、さらにゴージャスさを醸している。
パンツが見えそうなくらい短いドレスは、切れ上がったお尻のラインが、深紅の桃みたいに浮き上がってみえる。
深いスリットが入ったミニドレスは、レースアップの隙間からチラリと太ももがのぞいて、ドレスの裾からは、黒いガーターベルトのストラップ。太ももで止められたストッキングが、なんだかあやうい雰囲気。
ガーターストッキングなんて、生で見るのははじめて。
う~ん。これは悩ましい。
ただのはだかより、なぜか余計にエロティックに感じる。
みっこいいの?
そんなに見せて。
川島君なんて、目のやり場に困ってるじゃない。
「み、みっこ。ブラ丸出しだけど…」
「これ? 大丈夫。見せブラよ」
「そっ、そんな問題じゃなくて…」
「ほら。ふだんよりスタイルよく見えるでしょ。
このブラ、寄せ上げ効果があるから、あたしみたいな小さい胸でも、こんなに谷間ができるのよ」
そう言って、みっこはわざとらしく両腕で胸を挟み、谷間を作っていたずらっぽく微笑んだ。
「おお。みっこ。今日はいちだんとセクシーだな」
さっきまでのクールさとは打って変わり、芳賀さんが目尻をさげながらみっこを見つめ、褒める。
「ふふ。せっかくのディスコだもの。だれにも負けたくないしね」
「お立ち台にいる女どものだれよりも、おまえの方が魅力的だぜ」
「そう? ありがと」
「みっこって、いったいだれと張り合ってるのよ?」
「世界中の女… なんてね。さあ、さつき。まずは食べ物取りに行くわよ!」
そう言って、みっこはわたしの腕を引っ張り、奥のフードコーナーへと向かう。
ボックスシートとフードコーナーを、みんなで何度か往復する。
テーブルの上にはまたたくまに、ポテトやミートパイ、スナック類にジュース、アルコールドリンクなんかが、ずらりと並んだ。
男性4,000円、女性3.000円で食べ放題ってのは、嬉しい。
つづく
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