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05 Love Affair
Love Affair 13
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集会が始まって同人誌の話をしている時も、川島君と蘭さんから目が離せなかった。
蘭さんは川島君の隣に座って、コロコロと笑っている。
川島君の冗談に『やだ、先輩』などと言いながら、ポンと肩をたたいたり、必要以上に顔を近づけたりと、すごいアピールっぷり。
川島君も、ふとした仕草ではだけてしまう蘭さんの胸元に、なんだか視線が吸いついている時もある。
蘭さんってしたたか。
もしかして、計算ずくでそんな仕草をしているんだろうか。
そういえば高校の頃、蘭さんは『男子に色目を使って、クラスの女子からはあまり好かれてない』って噂だったけど、それもわかる気がするなぁ。こういう異性と同性で態度が違うタイプって、わたしも苦手。
それにしても、やっと告白の決心がついた日に限って、こんなことになるなんて。
恋の神様は意地が悪い。
結局、今日の集会では、川島君とろくに話をする機会もなく、蘭さんにねだられるまま、解散のあと川島君は、彼女といっしょに帰ってしまった。
今日は川島君と、一世一代の勝負に出るはずだった。
だから服も、いつもよりよそゆきのものを着てきたし、メイクだって気合いを入れていたのに…
肩すかしをくらったみたいで、わたしは私鉄の駅のホームで、気が抜けたように帰りの電車を待っていた。
「さつきさんも、帰りはこっち?」
不意に声がして、わたしは振り向いた。この綺麗な甘い声色は、志摩みさとさん。
「あ。志摩さんもこちらですか?」
人なつっこい笑顔で、彼女はわたしに歩み寄って言った。
「やあね。『みさと』でいいわよ。本名は沢水絵里香って言うんだけどね」
「沢水さん」
「絵里香でいいわよ」
その時電車がやってきたので、わたしと絵里香さん… やっぱりまだペンネームの方が馴染みがあるから、『みさとさん』って呼ばせてもらおう。
わたしとみさとさんは電車に乗り、ロングシートの座席に並んで座った。
先週の集会で、川島君と並んでいるところを見て思ったけど、この人やっぱり、他人との間合いが近いかもしれない。
ふとした拍子にわたしの方を見るときでも、こちらが思ってる以上に顔やからだを寄せてくる。
「み、みさとさんって、なんだか距離が近いですね」
こんな綺麗な顔が近くにあるなんて。
ドギマギしながらわたしは言った。
「え? そう? あたし目が悪いから。ついだれにでも顔、近づけちゃうのよね」
「だれにでも?」
「そうなの。別に意識してやってるんじゃないけど、男の人にもつい、こうやって近づいちゃうから、誤解されることもあるみたい」
「そうですよね。ちょっとドキドキしますもん。女のわたしでさえ」
「ふふ。可愛い女の子にくっつくのは好きだけどね。さつきちゃんってふんわりしてて、ぎゅって抱きしめてみたくなるもん」
「ええっ。ま、まあ、いいですけど。みさとさんなら」
「あは。嬉しい」
とろけるような甘い笑顔になって、みさとさんはわたしの腕に自分の腕を絡めてきた。
腕に当たる胸のふくらみが心地いい。ゆるやかに巻いた髪からふわりと漂うシャンプーの香りが、鼻腔をくすぐる。
みさとさんみたいな天然で小悪魔な女の子なら、こういうのも楽しいかもしれない。
まあ、男女見境なくやってしまうと、それこそ誤解されて、恋愛トラブルに巻き込まれてしまいそうだけど。
そんな会話をしながら、しばらくは同人誌やお互いの学校のことなどを話していたが、みさとさんはふと、漏らした。
「このサークル、大丈夫かなぁ」
つづく
蘭さんは川島君の隣に座って、コロコロと笑っている。
川島君の冗談に『やだ、先輩』などと言いながら、ポンと肩をたたいたり、必要以上に顔を近づけたりと、すごいアピールっぷり。
川島君も、ふとした仕草ではだけてしまう蘭さんの胸元に、なんだか視線が吸いついている時もある。
蘭さんってしたたか。
もしかして、計算ずくでそんな仕草をしているんだろうか。
そういえば高校の頃、蘭さんは『男子に色目を使って、クラスの女子からはあまり好かれてない』って噂だったけど、それもわかる気がするなぁ。こういう異性と同性で態度が違うタイプって、わたしも苦手。
それにしても、やっと告白の決心がついた日に限って、こんなことになるなんて。
恋の神様は意地が悪い。
結局、今日の集会では、川島君とろくに話をする機会もなく、蘭さんにねだられるまま、解散のあと川島君は、彼女といっしょに帰ってしまった。
今日は川島君と、一世一代の勝負に出るはずだった。
だから服も、いつもよりよそゆきのものを着てきたし、メイクだって気合いを入れていたのに…
肩すかしをくらったみたいで、わたしは私鉄の駅のホームで、気が抜けたように帰りの電車を待っていた。
「さつきさんも、帰りはこっち?」
不意に声がして、わたしは振り向いた。この綺麗な甘い声色は、志摩みさとさん。
「あ。志摩さんもこちらですか?」
人なつっこい笑顔で、彼女はわたしに歩み寄って言った。
「やあね。『みさと』でいいわよ。本名は沢水絵里香って言うんだけどね」
「沢水さん」
「絵里香でいいわよ」
その時電車がやってきたので、わたしと絵里香さん… やっぱりまだペンネームの方が馴染みがあるから、『みさとさん』って呼ばせてもらおう。
わたしとみさとさんは電車に乗り、ロングシートの座席に並んで座った。
先週の集会で、川島君と並んでいるところを見て思ったけど、この人やっぱり、他人との間合いが近いかもしれない。
ふとした拍子にわたしの方を見るときでも、こちらが思ってる以上に顔やからだを寄せてくる。
「み、みさとさんって、なんだか距離が近いですね」
こんな綺麗な顔が近くにあるなんて。
ドギマギしながらわたしは言った。
「え? そう? あたし目が悪いから。ついだれにでも顔、近づけちゃうのよね」
「だれにでも?」
「そうなの。別に意識してやってるんじゃないけど、男の人にもつい、こうやって近づいちゃうから、誤解されることもあるみたい」
「そうですよね。ちょっとドキドキしますもん。女のわたしでさえ」
「ふふ。可愛い女の子にくっつくのは好きだけどね。さつきちゃんってふんわりしてて、ぎゅって抱きしめてみたくなるもん」
「ええっ。ま、まあ、いいですけど。みさとさんなら」
「あは。嬉しい」
とろけるような甘い笑顔になって、みさとさんはわたしの腕に自分の腕を絡めてきた。
腕に当たる胸のふくらみが心地いい。ゆるやかに巻いた髪からふわりと漂うシャンプーの香りが、鼻腔をくすぐる。
みさとさんみたいな天然で小悪魔な女の子なら、こういうのも楽しいかもしれない。
まあ、男女見境なくやってしまうと、それこそ誤解されて、恋愛トラブルに巻き込まれてしまいそうだけど。
そんな会話をしながら、しばらくは同人誌やお互いの学校のことなどを話していたが、みさとさんはふと、漏らした。
「このサークル、大丈夫かなぁ」
つづく
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