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05 Love Affair
Love Affair 9
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「さつきちゃん… ぼくと…」
そう言いかけて、川島君は言葉を詰まらせた。
「え?」
「いや… ぼくと、こんな話ししてて、イヤじゃないかなって思って」
「ううん。全然そんなことない。むしろ、今日、こんな話できて、よかったかなって」
「はは。取材になった?」
「すっごく。川島君って話しやすいから、いろいろ聞いちゃって。ごめんね」
「いや。いいんだよ」
「川島君の方こそ、彼女いないなんて、信じられない」
「そう?」
「川島君って、女子から告白されたこととかもあるんでしょ。その子と『つきあいたい』とか、思わなかったの?」
勢いに乗って、わたしはさらに突っ込んだことを訊いてみた。
高校の頃、クラスの女子の間で謎だった川島君の恋愛関係。
なんだか、これまで川島君に聞きたくても聞けなかったことが、次々と言葉になってくる感じ。
「ん~……」
しばらく考えたあと、川島君は言葉を選びながら言った。
「相手の人間性も知らずには、つきあえないと思う」
「でも、デートはしたんじゃないの?」
「え? あれって、デートっていうのかな? ただ、ふたりで会って、お茶したりしたくらいだよ」
「それって、デートじゃないの?」
「そうかなぁ… 相手のことを知るために、とりあえず会ってみただけだよ。それも、『いい友達でいようね』って感じで終わったし」
「あっ。それ、なんかひどい。女の子に期待だけさせて」
「えっ。そう?」
「けっこう残酷かも。その子だって、勇気を出して告白したんだろうし、会ってもらえたりしたら、相手だって期待するじゃない。
その気がないなら、最初から会ったりしない方がいいと思う」
「え~? 残酷かぁ… そうだな、ぼくも女性心理って、わかんないから」
バツが悪くなったのか、川島君はわたしから目を逸らせた。
あ。
素直な感想言い過ぎて、ちょっとへこませちゃったかな?
「でも、すごくいいと思う。ちゃんと女の子の内面を見ようとするのは。たまたまいい子がいなかっただけで、川島君ならすぐに彼女ができて、童貞卒業できるわよ」
「さつきちゃん、それ、フォローになってないって」
「あは。ごめんなさい」
「さつきちゃん。ぼくと…」
「え?」
「あ、いや。ぼくと、こんな話するの、イヤじゃないかなって」
「さっきと同じこと言ってる。わたしはイヤなんかじゃないわよ」
「そうか。ならいいけど…」
熱くなった気持ちを冷ますように、川島君は紅茶をゆっくり飲み干して言った。
「ぶっちゃけ。『卒業』するならやっぱり、一番好きな子とでなきゃな」
「へえー。そうなの?」
「おかしい?」
「好きな人のためにバージンをとっておくって女性の話は聞くけど、男の人のそういう純潔の守り方って、珍しくない?」
「じゃあ、ぼくが変なのかも。周りの男たちはフーゾクとか行って、そこで筆おろししたりするヤツもいるから」
「わあ。それ、幻滅」
「だよな。女の子的には、そういうのは引くよな。やっぱり」
「ん~。病気が怖いってのもあるけど、からだだけの関係って、なんか、嫌じゃない。エ、エッチって、お互いの愛を確かめ合う行為、なんじゃないかなって、思うし」
「そうだよな」
「風俗って、言ってみればビジネスでしょ?
愛をお金で買うのって、やっぱり嫌」
「まあ、男って、定期的に放出しないといけない即物的な生き物だから、それも仕方ない面はあるけど… ぼくもそういうのは嫌悪するな」
「そうなの。よかった」
「どうしてさつきちゃんが安心するんだ?」
「あ… いや、それは… 風俗とか行くのって、男友達でもやっぱり、嫌だなって…」
「…そっか」
「べっ、別にたいした意味はないのよ。ほんと」
「まあ、いいけど…」
なにか言いたそうな表情を一瞬見せた川島君だったが、すぐに話題を切り替えた。
「それにしても神様って、どうして恋愛なんて感情を、種の繁殖システムに組み込んだんだろうな?」
つづく
そう言いかけて、川島君は言葉を詰まらせた。
「え?」
「いや… ぼくと、こんな話ししてて、イヤじゃないかなって思って」
「ううん。全然そんなことない。むしろ、今日、こんな話できて、よかったかなって」
「はは。取材になった?」
「すっごく。川島君って話しやすいから、いろいろ聞いちゃって。ごめんね」
「いや。いいんだよ」
「川島君の方こそ、彼女いないなんて、信じられない」
「そう?」
「川島君って、女子から告白されたこととかもあるんでしょ。その子と『つきあいたい』とか、思わなかったの?」
勢いに乗って、わたしはさらに突っ込んだことを訊いてみた。
高校の頃、クラスの女子の間で謎だった川島君の恋愛関係。
なんだか、これまで川島君に聞きたくても聞けなかったことが、次々と言葉になってくる感じ。
「ん~……」
しばらく考えたあと、川島君は言葉を選びながら言った。
「相手の人間性も知らずには、つきあえないと思う」
「でも、デートはしたんじゃないの?」
「え? あれって、デートっていうのかな? ただ、ふたりで会って、お茶したりしたくらいだよ」
「それって、デートじゃないの?」
「そうかなぁ… 相手のことを知るために、とりあえず会ってみただけだよ。それも、『いい友達でいようね』って感じで終わったし」
「あっ。それ、なんかひどい。女の子に期待だけさせて」
「えっ。そう?」
「けっこう残酷かも。その子だって、勇気を出して告白したんだろうし、会ってもらえたりしたら、相手だって期待するじゃない。
その気がないなら、最初から会ったりしない方がいいと思う」
「え~? 残酷かぁ… そうだな、ぼくも女性心理って、わかんないから」
バツが悪くなったのか、川島君はわたしから目を逸らせた。
あ。
素直な感想言い過ぎて、ちょっとへこませちゃったかな?
「でも、すごくいいと思う。ちゃんと女の子の内面を見ようとするのは。たまたまいい子がいなかっただけで、川島君ならすぐに彼女ができて、童貞卒業できるわよ」
「さつきちゃん、それ、フォローになってないって」
「あは。ごめんなさい」
「さつきちゃん。ぼくと…」
「え?」
「あ、いや。ぼくと、こんな話するの、イヤじゃないかなって」
「さっきと同じこと言ってる。わたしはイヤなんかじゃないわよ」
「そうか。ならいいけど…」
熱くなった気持ちを冷ますように、川島君は紅茶をゆっくり飲み干して言った。
「ぶっちゃけ。『卒業』するならやっぱり、一番好きな子とでなきゃな」
「へえー。そうなの?」
「おかしい?」
「好きな人のためにバージンをとっておくって女性の話は聞くけど、男の人のそういう純潔の守り方って、珍しくない?」
「じゃあ、ぼくが変なのかも。周りの男たちはフーゾクとか行って、そこで筆おろししたりするヤツもいるから」
「わあ。それ、幻滅」
「だよな。女の子的には、そういうのは引くよな。やっぱり」
「ん~。病気が怖いってのもあるけど、からだだけの関係って、なんか、嫌じゃない。エ、エッチって、お互いの愛を確かめ合う行為、なんじゃないかなって、思うし」
「そうだよな」
「風俗って、言ってみればビジネスでしょ?
愛をお金で買うのって、やっぱり嫌」
「まあ、男って、定期的に放出しないといけない即物的な生き物だから、それも仕方ない面はあるけど… ぼくもそういうのは嫌悪するな」
「そうなの。よかった」
「どうしてさつきちゃんが安心するんだ?」
「あ… いや、それは… 風俗とか行くのって、男友達でもやっぱり、嫌だなって…」
「…そっか」
「べっ、別にたいした意味はないのよ。ほんと」
「まあ、いいけど…」
なにか言いたそうな表情を一瞬見せた川島君だったが、すぐに話題を切り替えた。
「それにしても神様って、どうして恋愛なんて感情を、種の繁殖システムに組み込んだんだろうな?」
つづく
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