Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
上 下
41 / 300
05 Love Affair

Love Affair 9

しおりを挟む
「さつきちゃん… ぼくと…」
そう言いかけて、川島君は言葉を詰まらせた。
「え?」
「いや… ぼくと、こんな話ししてて、イヤじゃないかなって思って」
「ううん。全然そんなことない。むしろ、今日、こんな話できて、よかったかなって」
「はは。取材になった?」
「すっごく。川島君って話しやすいから、いろいろ聞いちゃって。ごめんね」
「いや。いいんだよ」
「川島君の方こそ、彼女いないなんて、信じられない」
「そう?」
「川島君って、女子から告白されたこととかもあるんでしょ。その子と『つきあいたい』とか、思わなかったの?」
勢いに乗って、わたしはさらに突っ込んだことを訊いてみた。
高校の頃、クラスの女子の間で謎だった川島君の恋愛関係。
なんだか、これまで川島君に聞きたくても聞けなかったことが、次々と言葉になってくる感じ。
「ん~……」
しばらく考えたあと、川島君は言葉を選びながら言った。
「相手の人間性も知らずには、つきあえないと思う」
「でも、デートはしたんじゃないの?」
「え? あれって、デートっていうのかな? ただ、ふたりで会って、お茶したりしたくらいだよ」
「それって、デートじゃないの?」
「そうかなぁ… 相手のことを知るために、とりあえず会ってみただけだよ。それも、『いい友達でいようね』って感じで終わったし」
「あっ。それ、なんかひどい。女の子に期待だけさせて」
「えっ。そう?」
「けっこう残酷かも。その子だって、勇気を出して告白したんだろうし、会ってもらえたりしたら、相手だって期待するじゃない。
その気がないなら、最初から会ったりしない方がいいと思う」
「え~? 残酷かぁ… そうだな、ぼくも女性心理って、わかんないから」
バツが悪くなったのか、川島君はわたしから目を逸らせた。
あ。
素直な感想言い過ぎて、ちょっとへこませちゃったかな?
「でも、すごくいいと思う。ちゃんと女の子の内面を見ようとするのは。たまたまいい子がいなかっただけで、川島君ならすぐに彼女ができて、童貞卒業できるわよ」
「さつきちゃん、それ、フォローになってないって」
「あは。ごめんなさい」
「さつきちゃん。ぼくと…」
「え?」
「あ、いや。ぼくと、こんな話するの、イヤじゃないかなって」
「さっきと同じこと言ってる。わたしはイヤなんかじゃないわよ」
「そうか。ならいいけど…」
熱くなった気持ちを冷ますように、川島君は紅茶をゆっくり飲み干して言った。
「ぶっちゃけ。『卒業』するならやっぱり、一番好きな子とでなきゃな」
「へえー。そうなの?」
「おかしい?」
「好きな人のためにバージンをとっておくって女性の話は聞くけど、男の人のそういう純潔の守り方って、珍しくない?」
「じゃあ、ぼくが変なのかも。周りの男たちはフーゾクとか行って、そこで筆おろししたりするヤツもいるから」
「わあ。それ、幻滅」
「だよな。女の子的には、そういうのは引くよな。やっぱり」
「ん~。病気が怖いってのもあるけど、からだだけの関係って、なんか、嫌じゃない。エ、エッチって、お互いの愛を確かめ合う行為、なんじゃないかなって、思うし」
「そうだよな」
「風俗って、言ってみればビジネスでしょ?
愛をお金で買うのって、やっぱり嫌」
「まあ、男って、定期的に放出しないといけない即物的な生き物だから、それも仕方ない面はあるけど… ぼくもそういうのは嫌悪するな」
「そうなの。よかった」
「どうしてさつきちゃんが安心するんだ?」
「あ… いや、それは… 風俗とか行くのって、男友達でもやっぱり、嫌だなって…」
「…そっか」
「べっ、別にたいした意味はないのよ。ほんと」
「まあ、いいけど…」
なにか言いたそうな表情を一瞬見せた川島君だったが、すぐに話題を切り替えた。
「それにしても神様って、どうして恋愛なんて感情を、種の繁殖システムに組み込んだんだろうな?」

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

医者兄と病院脱出の妹(フリー台本)

ライト文芸
生まれて初めて大病を患い入院中の妹 退院が決まり、試しの外出と称して病院を抜け出し友達と脱走 行きたかったカフェへ それが、主治医の兄に見つかり、その後体調急変

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...