40 / 300
05 Love Affair
Love Affair 8
しおりを挟む
ほっとすると同時に、なんだか拍子抜けしてしまった。
高校時代のあの、わたしの運命を変えたと思った大事件は、いったいなんだったの?!
ただの勘違いだった、って『オチ』がついていたってことか。
今までずっと悩んできたのが、バカみたい。
もっと早くこんな風に、川島君にほんとのことを聞けたらよかったんだけど、挨拶する勇気さえなかった当時の自分には、無理な話よね。
まあ、川島君のご機嫌損ねるようなことを言ってしまったのは失敗だったけど、とりあえず、ふたりの関係の確認はできたので、よしとするか。
なんだか… 希望が見えてきた気がする。
川島君と蘭さんの噂を周りから散々聞かされてきて、その度に胸が引き裂かれる思いにかられてきたけど、ふたりは実は、恋人同士なんかじゃなかったことを、川島君本人の口から聞けて。
気持ちが明るくなったせいか、わたしは少しおしゃべりになった。
「そうよね~。わたしも、男性心理知りたいと思って、ただの男友達と恋愛話なんかしてて、人に誤解されたりしたら、イヤだもん。モデルで水着とかになったりするなら、なおさらだろうし。
男女でいっしょになって創作活動するのって、意外と難しいのかもね。世間的には」
「…そうだな」
一瞬、複雑な表情を見せた川島君だったが、すぐに笑顔に戻って言った。
「理想の恋愛としては、お互いが尊敬しあって、人間性を高めあえるような関係になれればって、思うよ」
「あ。それいい。『エースをねらえ!』の岡ひろみと藤堂さんみたいな感じ。男と女って前に、同じ人間として対等につきあえればいいよね。お互いにないものをそれぞれ持ってるんだもの、尊敬しあわなくちゃね」
「そうだよな。男と女って、いっしょになってはじめて完全な人間になれる気がする。パズルの凸と凹を組み合わせる様に。まあ、体の構造もそうなってるけどな」
「やだ。川島君っ」
「あははは、ごめんごめん。だけどみんな、人間性を磨くより、凸凹をくっつけることにばっかり執着してるんだよな~」
「ん~… しかたないよ。だって、興味ないって言ったら、嘘になるもの」
「さつきちゃんも?」
「あ、あたりまえじゃない。わたしだって、ふつうの女の子だもん」
「ははは。ぼくだってふつうの男の子だしな」
「川島君はそんな経験、あるの?」
「え?」
突然の質問に不意を突かれたように、川島君は目を見開いてわたしを見た。
わたしだってびっくり。
こんな大胆なこと、訊いてしまうなんて!
少し頬を赤らめながら、照れるように川島君は答える。
「恋愛経験、乏しいって言ったろ」
「でも、乏しいってことは、少しはあるってことじゃないの?」
「だからぁ、恥ずかしいことを何回も言わせるなよぉ。この年でドーテーだなんて、ちょっとした屈辱なんだから」
「えっ? あ。ごっ、ごめん」
「ん~。まあ、いいけど」
「だっ、大丈夫。わたしだって、まだだから」
「まだ? そうか。さつきちゃん、まだバージンなのか。そうか~♪」
「なっ、なに嬉しそうに言ってるのよ。恥ずかしいじゃない」
なんか、すごい。
わたし、今、川島君と恋愛話してる!
まさか今日彼と、こんな深い話ができるなんて、思わなかった。
でも、話の流れが妙な方向にいっちゃってる。
今夜は人目につかない奥のボックス席に座れたから、こんな大胆な会話だってできるのかも。ふたりとも紅茶で酔っちゃったかな。
川島君は頬杖ついて、わたしを艶っぽく見つめる。
なんて悩ましげな視線。
なんだか恥ずかしくなって、わたしはうつむいてしまった。
「でも、さつきちゃんって可愛いのに、彼氏いないなんて、なんだか意外だな」
「そ、そう? そんなこと言われたの初めて…」
『可愛い』だなんて…
好きな人からそんな風に言われると、からだの中から脳内麻薬がどんどん分泌されてくるようで、幸せな妄想とか幻想が膨らんでくる。
顔にも血がのぼってきて、耳たぶまで火照ってる。川島君からこんなに色っぽい視線で、見つめられているからかもしれない。
「さつきちゃん… ぼくと…」
つづく
高校時代のあの、わたしの運命を変えたと思った大事件は、いったいなんだったの?!
ただの勘違いだった、って『オチ』がついていたってことか。
今までずっと悩んできたのが、バカみたい。
もっと早くこんな風に、川島君にほんとのことを聞けたらよかったんだけど、挨拶する勇気さえなかった当時の自分には、無理な話よね。
まあ、川島君のご機嫌損ねるようなことを言ってしまったのは失敗だったけど、とりあえず、ふたりの関係の確認はできたので、よしとするか。
なんだか… 希望が見えてきた気がする。
川島君と蘭さんの噂を周りから散々聞かされてきて、その度に胸が引き裂かれる思いにかられてきたけど、ふたりは実は、恋人同士なんかじゃなかったことを、川島君本人の口から聞けて。
気持ちが明るくなったせいか、わたしは少しおしゃべりになった。
「そうよね~。わたしも、男性心理知りたいと思って、ただの男友達と恋愛話なんかしてて、人に誤解されたりしたら、イヤだもん。モデルで水着とかになったりするなら、なおさらだろうし。
男女でいっしょになって創作活動するのって、意外と難しいのかもね。世間的には」
「…そうだな」
一瞬、複雑な表情を見せた川島君だったが、すぐに笑顔に戻って言った。
「理想の恋愛としては、お互いが尊敬しあって、人間性を高めあえるような関係になれればって、思うよ」
「あ。それいい。『エースをねらえ!』の岡ひろみと藤堂さんみたいな感じ。男と女って前に、同じ人間として対等につきあえればいいよね。お互いにないものをそれぞれ持ってるんだもの、尊敬しあわなくちゃね」
「そうだよな。男と女って、いっしょになってはじめて完全な人間になれる気がする。パズルの凸と凹を組み合わせる様に。まあ、体の構造もそうなってるけどな」
「やだ。川島君っ」
「あははは、ごめんごめん。だけどみんな、人間性を磨くより、凸凹をくっつけることにばっかり執着してるんだよな~」
「ん~… しかたないよ。だって、興味ないって言ったら、嘘になるもの」
「さつきちゃんも?」
「あ、あたりまえじゃない。わたしだって、ふつうの女の子だもん」
「ははは。ぼくだってふつうの男の子だしな」
「川島君はそんな経験、あるの?」
「え?」
突然の質問に不意を突かれたように、川島君は目を見開いてわたしを見た。
わたしだってびっくり。
こんな大胆なこと、訊いてしまうなんて!
少し頬を赤らめながら、照れるように川島君は答える。
「恋愛経験、乏しいって言ったろ」
「でも、乏しいってことは、少しはあるってことじゃないの?」
「だからぁ、恥ずかしいことを何回も言わせるなよぉ。この年でドーテーだなんて、ちょっとした屈辱なんだから」
「えっ? あ。ごっ、ごめん」
「ん~。まあ、いいけど」
「だっ、大丈夫。わたしだって、まだだから」
「まだ? そうか。さつきちゃん、まだバージンなのか。そうか~♪」
「なっ、なに嬉しそうに言ってるのよ。恥ずかしいじゃない」
なんか、すごい。
わたし、今、川島君と恋愛話してる!
まさか今日彼と、こんな深い話ができるなんて、思わなかった。
でも、話の流れが妙な方向にいっちゃってる。
今夜は人目につかない奥のボックス席に座れたから、こんな大胆な会話だってできるのかも。ふたりとも紅茶で酔っちゃったかな。
川島君は頬杖ついて、わたしを艶っぽく見つめる。
なんて悩ましげな視線。
なんだか恥ずかしくなって、わたしはうつむいてしまった。
「でも、さつきちゃんって可愛いのに、彼氏いないなんて、なんだか意外だな」
「そ、そう? そんなこと言われたの初めて…」
『可愛い』だなんて…
好きな人からそんな風に言われると、からだの中から脳内麻薬がどんどん分泌されてくるようで、幸せな妄想とか幻想が膨らんでくる。
顔にも血がのぼってきて、耳たぶまで火照ってる。川島君からこんなに色っぽい視線で、見つめられているからかもしれない。
「さつきちゃん… ぼくと…」
つづく
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
せやさかい
武者走走九郎or大橋むつお
ライト文芸
父の失踪から七年、失踪宣告がなされて、田中さくらは母とともに母の旧姓になって母の実家のある堺の街にやってきた。母は戻ってきただが、さくらは「やってきた」だ。年に一度来るか来ないかのお祖父ちゃんの家は、今日から自分の家だ。
そして、まもなく中学一年生。
自慢のポニーテールを地味なヒッツメにし、口癖の「せやさかい」も封印して新しい生活が始まてしまった。
千里さんは、なびかない
黒瀬 ゆう
ライト文芸
天使の輪を作る、サラサラな黒髪。
握りこぶしほどしかない小さな顔に、ぱっちりとした瞳を囲む長いまつ毛。
まるでフィルターをかけたかのような綺麗な肌、真っ赤な唇。
特技はピアノ。まるで王子様。
ーー和泉君に、私の作品を演じてもらいたい。
その一心で、活字にすら触れたことのない私が小説家を目指すことに決めた。
全ては同担なんかに負けない優越感を味わうために。
目標は小説家としてデビュー、そして映画化。
ーー「私、アンタみたいな作品が書きたい。恋愛小説家の、零って呼ばれたい」
そんな矢先、同じ図書委員になったのは、なんと大人気ミステリ作家の零だった。
……あれ? イージーモード? 最強の助っ人じゃん。
そんなわけが、なかった。
怒れるおせっかい奥様
asamurasaki
恋愛
ベレッタ・サウスカールトンは出産時に前世の記憶を思い出した。
可愛い男の子を産んだその瞬間にベレッタは前世の記憶が怒涛のことく甦った。
日本人ので三人の子持ちで孫もいた60代女性だった記憶だ。
そして今までのベレッタの人生も一緒に思い出した。
コローラル子爵家第一女として生まれたけど、実の母はベレッタが4歳の時に急な病で亡くなった。
そして母の喪が明けてすぐに父が愛人とその子を連れて帰ってきた。
それからベレッタは継母と同い年の義妹に虐げられてきた。
父も一緒になって虐げてくるクズ。
そしてベレッタは18歳でこの国の貴族なら通うことが義務付けられてるアカデミーを卒業してすぐに父の持ってきた縁談で結婚して厄介払いされた。
相手はフィンレル・サウスカールトン侯爵22歳。
子爵令嬢か侯爵と結婚なんて…恵まれているはずがない!
あのクズが持ってきた縁談だ、資金援助を条件に訳あり侯爵に嫁がされた。
そのベレッタは結婚してからも侯爵家で夫には見向きもされず、使用人には冷遇されている。
白い結婚でなかったのは侯爵がどうしても後継ぎを必要としていたからだ。
良かったのか悪かったのか、初夜のたったの一度でベレッタは妊娠して子を生んだ。
前世60代だった私が転生して19歳の少女になった訳よね?
ゲームの世界に転生ってやつかしら?でも私の20代後半の娘は恋愛ゲームやそういう異世界転生とかの小説が好きで私によく話していたけど、私はあまり知らないから娘が話してたことしかわからないから、当然どこの世界なのかわからないのよ。
どうして転生したのが私だったのかしら?
でもそんなこと言ってる場合じゃないわ!
あの私に無関心な夫とよく似ている息子とはいえ、私がお腹を痛めて生んだ愛しい我が子よ!
子供がいないなら離縁して平民になり生きていってもいいけど、子供がいるなら話は別。
私は自分の息子の為、そして私の為に離縁などしないわ!
無関心夫なんて宛にせず私が息子を立派な侯爵になるようにしてみせるわ!
前世60代女性だった孫にばぁばと言われていたベレッタが立ち上がる!
無関心夫の愛なんて求めてないけど夫にも事情があり夫にはガツンガツン言葉で責めて凹ませますが、夫へのざまあはありません。
他の人たちのざまあはアリ。
ユルユル設定です。
ご了承下さい。
月と太陽
もちっぱち
ライト文芸
雪村 紗栄は
月のような存在でいつまでも太陽がないと生きていけないと思っていた。
雪村 花鈴は
生まれたときから太陽のようにギラギラと輝いて、誰からも好かれる存在だった。
そんな姉妹の幼少期のストーリーから
高校生になった主人公紗栄は、
成長しても月のままなのか
それとも、自ら光を放つ
太陽になることができるのか
妹の花鈴と同じで太陽のように目立つ
同級生の男子との出会いで
変化が訪れる
続きがどんどん気になる
姉妹 恋愛 友達 家族
いろんなことがいりまじった
青春リアルストーリー。
こちらは
すべてフィクションとなります。
さく もちっぱち
表紙絵 yuki様
悪役令嬢にはブラック企業で働いてもらいます。
ガイア
ライト文芸
ライヴァ王国の令嬢、マスカレイド・ライヴァは最低最悪の悪役令嬢だった。
嫌われすぎて町人や使用人達から恨みの刻印を胸に刻まれ、ブラック企業で前世の償いをさせられる事に!?
あかりの燈るハロー【完結】
虹乃ノラン
ライト文芸
――その観覧車が彩りゆたかにライトアップされるころ、あたしの心は眠ったまま。迷って迷って……、そしてあたしは茜色の空をみつけた。
六年生になる茜(あかね)は、五歳で母を亡くし吃音となった。思い出の早口言葉を歌い今日もひとり図書室へ向かう。特別な目で見られ、友達なんていない――吃音を母への愛の証と捉える茜は治療にも前向きになれないでいた。
ある日『ハローワールド』という件名のメールがパソコンに届く。差出人は朱里(あかり)。件名は謎のままだが二人はすぐに仲良くなった。話すことへの抵抗、思いを伝える怖さ――友だちとの付き合い方に悩みながらも、「もし、あたしが朱里だったら……」と少しずつ自分を見つめなおし、悩みながらも朱里に対する信頼を深めていく。
『ハローワールド』の謎、朱里にたずねるハローワールドはいつだって同じ。『そこはここよりもずっと離れた場所で、ものすごく近くにある場所。行きたくても行けない場所で、いつの間にかたどり着いてる場所』
そんななか、茜は父の部屋で一冊の絵本を見つける……。
誰の心にも燈る光と影――今日も頑張っているあなたへ贈る、心温まるやさしいストーリー。
―――――《目次》――――――
◆第一部
一章 バイバイ、お母さん。ハロー、ハンデ。
二章 ハローワールドの住人
三章 吃音という証明
◆第二部
四章 最高の友だち
五章 うるさい! うるさい! うるさい!
六章 レインボー薬局
◆第三部
七章 はーい! せんせー。
八章 イフ・アカリ
九章 ハウマッチ 木、木、木……。
◆第四部
十章 未来永劫チクワ
十一章 あたしがやりました。
十二章 お父さんの恋人
◆第五部
十三章 アカネ・ゴー・ラウンド
十四章 # to the world...
◆エピローグ
epilogue...
♭
◆献辞
《第7回ライト文芸大賞奨励賞》
立花家へようこそ!
由奈(YUNA)
ライト文芸
私が出会ったのは立花家の7人家族でした・・・――――
これは、内気な私が成長していく物語。
親の仕事の都合でお世話になる事になった立花家は、楽しくて、暖かくて、とっても優しい人達が暮らす家でした。
タイムパラライドッグスエッジ~きみを死なせない6秒間~
藤原いつか
ライト文芸
岸田篤人(きしだあつと)は2年前の出来事をきっかけに、6秒間だけ時間を止める力を持っていた。
使い道のないその力を持て余したまま入学した高校で、未来を視る力を持つ藤島逸可(ふじしまいつか)、過去を視る力を持つ入沢砂月(いりさわさつき)と出会う。
過去の真実を知りたいと願っていた篤人はふたりに近づいていく中で、自分達3人に未来が無いことを知る。
そしてそれぞれの力が互いに干渉し合ったとき、思いもよらないことが起こった。
そんな中、砂月が連続殺人事件に巻き込まれ――
* * *
6秒間だけ過去や未来にタイムリープすることが可能になった篤人が、過去へ、未来へ跳ぶ。
今度こそ大事な人を失わない為に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる