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05 Love Affair
Love Affair 6
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affair3
「みっこ、どう思う?」
夜にひとりでいると、考えがどんどん闇に沈んでしまう。
思いあまって、わたしはみっこに電話してみた。
その日の集会のことを、事細かに話す。みっこは確認するように言った。
「ふたりとも、別に『恋人同士です』って、カミングアウトしたわけでもないし、それらしい態度もとってないんでしょ?」
「まあ、そうだけど。水着写真を撮ったりしてるのよ」
「そんなの、モデルだったらふつうなんじゃない?」
「そっ、そんなものなの?」
「…まあ、ね。それだけじゃ、川島君とえみちゃんがつきあってる証拠にはならないと思う」
「そうかなぁ?」
「やっぱり、まずはえみちゃんが『彼女』なのかどうか、確かめることよね」
「『えみちゃんは彼女?』って、川島君に聞くの?」
「うわっ。すっごい直球勝負。『そうだよ』って打ち返されたら、もうゲームセットじゃない」
「じ、じゃあ、どうすれば」
「会話の流れの中で、さりげなく、自然に聞き出すといいんじゃないかな?」
「それで、やっぱり恋人同士だとわかったら、どうするの?」
「さつきはどうしたいの?」
「う… ん」
「それでもやっぱり友達でいたいの? だったら、あなたの気持ちは、完璧に隠しておいた方がいいかもね。その上で、チャンスを待つことかなぁ」
「『チャンスを待つ』って、ふたりが別れるまで待ってるってこと?」
「それだけとは限らないけど… ほんとにふたりが恋人同士だったらの話だけどね」
「その仮定、もうやめよ。なんだかせつなすぎて」
「そうよね。まずは事実の確認からよね。それにあたし、えみちゃんもだけど、その『志摩みさと』さんって人も、気になるかなぁ」
「え? 志摩みさとさんが? 確かに彼女、美人だし、なんだか放っとけない雰囲気があるけど」
「まあ、一応マークしてた方がいいかもね。男の人って、そういうフェロモン系に弱いみたいだから。一般論だけど」
「おっ、脅かさないでよ」
「だから一般論だって。ふふ。でもさつきだって、なんだか守ってあげたくなるタイプなのよね」
「じゃあみっこは、『攻めてもらいたい系』?」
「ん~。それってなんだか複雑。女の子として…」
「え~? 女の子だから受け身っての、みっこらしくない。好きな人ができたら、みっこにはガンガン攻めてもらいたいかなぁ。男なんて押し倒して食い殺しちゃってさ」
「あはは。なんかアフリカの肉食動物みたい。まあ、今はさつきの恋の話なんだけどね」
「あははは・・・ そうかぁ、志摩みさとさんかぁ」
「そのふたり、同人サークルだけじゃなくて、ふだんからいっしょの学校で勉強してるんでしょ?
それだけでもう、親密度が上がっちゃうわよね。恋人同士になるのって、距離の近さも重要だから」
「考えたくないけど… 確かに、あの距離の近さは、ふつうじゃなかったかも」
「とにかく、いろいろはっきりさせた方がいいんじゃない?」
「でも、それも怖いのよね… どうしよう…」
寒くなってきたので、途中でミルクを沸かして紅茶を入れる。
ホットミルクティーで温まりながら、わたしたちは埒のあかない堂々めぐりな会話を、夜遅くまで続けてしまった。
それでもみっこは文句も言わず、むしろ、いろいろと考えつく限りの助言をしてくれる。
とりあえず今は、自分の恋愛でいっぱいいっぱいで、みっこには迷惑かけるけど、わたしの話を熱心に聞いてくれる彼女に、このまま甘えていたかった。
つづく
「みっこ、どう思う?」
夜にひとりでいると、考えがどんどん闇に沈んでしまう。
思いあまって、わたしはみっこに電話してみた。
その日の集会のことを、事細かに話す。みっこは確認するように言った。
「ふたりとも、別に『恋人同士です』って、カミングアウトしたわけでもないし、それらしい態度もとってないんでしょ?」
「まあ、そうだけど。水着写真を撮ったりしてるのよ」
「そんなの、モデルだったらふつうなんじゃない?」
「そっ、そんなものなの?」
「…まあ、ね。それだけじゃ、川島君とえみちゃんがつきあってる証拠にはならないと思う」
「そうかなぁ?」
「やっぱり、まずはえみちゃんが『彼女』なのかどうか、確かめることよね」
「『えみちゃんは彼女?』って、川島君に聞くの?」
「うわっ。すっごい直球勝負。『そうだよ』って打ち返されたら、もうゲームセットじゃない」
「じ、じゃあ、どうすれば」
「会話の流れの中で、さりげなく、自然に聞き出すといいんじゃないかな?」
「それで、やっぱり恋人同士だとわかったら、どうするの?」
「さつきはどうしたいの?」
「う… ん」
「それでもやっぱり友達でいたいの? だったら、あなたの気持ちは、完璧に隠しておいた方がいいかもね。その上で、チャンスを待つことかなぁ」
「『チャンスを待つ』って、ふたりが別れるまで待ってるってこと?」
「それだけとは限らないけど… ほんとにふたりが恋人同士だったらの話だけどね」
「その仮定、もうやめよ。なんだかせつなすぎて」
「そうよね。まずは事実の確認からよね。それにあたし、えみちゃんもだけど、その『志摩みさと』さんって人も、気になるかなぁ」
「え? 志摩みさとさんが? 確かに彼女、美人だし、なんだか放っとけない雰囲気があるけど」
「まあ、一応マークしてた方がいいかもね。男の人って、そういうフェロモン系に弱いみたいだから。一般論だけど」
「おっ、脅かさないでよ」
「だから一般論だって。ふふ。でもさつきだって、なんだか守ってあげたくなるタイプなのよね」
「じゃあみっこは、『攻めてもらいたい系』?」
「ん~。それってなんだか複雑。女の子として…」
「え~? 女の子だから受け身っての、みっこらしくない。好きな人ができたら、みっこにはガンガン攻めてもらいたいかなぁ。男なんて押し倒して食い殺しちゃってさ」
「あはは。なんかアフリカの肉食動物みたい。まあ、今はさつきの恋の話なんだけどね」
「あははは・・・ そうかぁ、志摩みさとさんかぁ」
「そのふたり、同人サークルだけじゃなくて、ふだんからいっしょの学校で勉強してるんでしょ?
それだけでもう、親密度が上がっちゃうわよね。恋人同士になるのって、距離の近さも重要だから」
「考えたくないけど… 確かに、あの距離の近さは、ふつうじゃなかったかも」
「とにかく、いろいろはっきりさせた方がいいんじゃない?」
「でも、それも怖いのよね… どうしよう…」
寒くなってきたので、途中でミルクを沸かして紅茶を入れる。
ホットミルクティーで温まりながら、わたしたちは埒のあかない堂々めぐりな会話を、夜遅くまで続けてしまった。
それでもみっこは文句も言わず、むしろ、いろいろと考えつく限りの助言をしてくれる。
とりあえず今は、自分の恋愛でいっぱいいっぱいで、みっこには迷惑かけるけど、わたしの話を熱心に聞いてくれる彼女に、このまま甘えていたかった。
つづく
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