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04 Tea Time
Tea Time 3
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「もしもよ。『ぼくの恋人だ』って、川島君があなたに恵美ちゃんや、他の女の子を紹介したとして、あなた、『よかったね』って、笑って言える?」
「…」
「友達だったら、そう言わなきゃいけないんじゃない?
彼の前で泣くことも怒ることもできないのよ。そんな資格ないのよ。自分の感情を押し殺して、ただ祝福するしかできないなんて、その状態がずっと続くなんて、そんなの拷問よ。さつきはそれでいいの?」
「そんな…」
「あなたが『好きだ』って言って、川島君が傷つくはずないじゃない。『友達のままでいい』っていうのは、告白できないさつきの、臆病の言い訳だと思う」
「そういう言い方って、ひどいんじゃない?」
「ほんとのこと言っただけよ。振り向いてもらう努力をして、それでもダメなら、友達のままでいいってのならわかるけど、『好き』って気持ちを押し殺して、ズルズル友達でいるような恋って、ずるい。
あたし、あなたにはそんなつまらない恋愛、してほしくないわ」
次々とわたしを貫くみっこの言葉に、わたしは恥ずかしくて口惜しくて、すっかり混乱してしまった。
「み、みっこは、あなたが綺麗だからそんな強気なことが言えるのよ。
あなたはいいわよ。あなたから好かれて、告白されて、拒める男の人なんて、いるわけないじゃない。
わたし、ブスだもん。あなたと違って顔もスタイルも…」
苦し紛れの言い訳をしながらみっこの顔を見て、わたしはドキリとした。
彼女は完全に顔色を変えている。
厳しいまゆ、わたしを睨んだ瞳。きつく結んだ唇。
「あたし…」
視線をそらせたみっこは、突き放すように言い放った。
それは静かな、しかし、憤りを抑えた声色だった。
「美人とかブスとかで、女の価値を決める男なんか、軽蔑する」
「…」
「あなたの川島君がそんな男なら、さっさと止めた方がいいわ」
「…」
「…」
そのあとふたりとも、しばらく口をきかなかった。
気まずい雰囲気のまま、わたしたちはお茶を飲み終わると、『森の調べ』を出た。
そのままふたり黙って並んで、銀杏の並木道を歩く。
カサカサと、落葉を踏みしめる音だけが聞こえる。
わたしはなんとかして、仲直りのきっかけをつかもうとしていた。
別にわたしは、みっことケンカしたいんじゃない。
彼女のことがやっぱり好きだし、親友だと思っている。
だけど、自分の感情をコントロールできないことって、ある。
こういうときはクールダウンして、しばらく間を置いて話した方が、いいに決まってる。
そしてみっこも、同じように感じているのかもしれない。
「ごめんなさい」
先に口を開いたのは、みっこの方だった。
「え?」
「あたし、言いすぎたみたい。あやまる」
彼女は足元の落葉を見ながら、言った。
意外…
彼女、ただ気が強いだけじゃなくて、自分の感情を切り替えるのも、うまいんだ。
わたしは少し安堵して答えた。
「ううん。いいの。みっこがわたしのこと真剣に考えてくれてるの、よくわかったし。
確かにかなりムッときたけど… 親友だからきつい忠告してくれたんだと思うし。『良薬は口に苦し』って言うじゃない」
わたしの言葉を聞いて、みっこはようやくこちらを向いてニコリと微笑んだ。
「あたし、こんな強情で生意気でわがままで、思ったことをストレートに言ってしまう性格でしょ。しかも言い方きついし。だから、小さい頃から友達もできなかったし、できてもすぐにケンカ別れしちゃってた」
「みっこ…」
もしかして、それって…
『みっこはどうして、友達いなかったの?』
っていう、さっきのわたしの問いかけへの答え?
つづく
「…」
「友達だったら、そう言わなきゃいけないんじゃない?
彼の前で泣くことも怒ることもできないのよ。そんな資格ないのよ。自分の感情を押し殺して、ただ祝福するしかできないなんて、その状態がずっと続くなんて、そんなの拷問よ。さつきはそれでいいの?」
「そんな…」
「あなたが『好きだ』って言って、川島君が傷つくはずないじゃない。『友達のままでいい』っていうのは、告白できないさつきの、臆病の言い訳だと思う」
「そういう言い方って、ひどいんじゃない?」
「ほんとのこと言っただけよ。振り向いてもらう努力をして、それでもダメなら、友達のままでいいってのならわかるけど、『好き』って気持ちを押し殺して、ズルズル友達でいるような恋って、ずるい。
あたし、あなたにはそんなつまらない恋愛、してほしくないわ」
次々とわたしを貫くみっこの言葉に、わたしは恥ずかしくて口惜しくて、すっかり混乱してしまった。
「み、みっこは、あなたが綺麗だからそんな強気なことが言えるのよ。
あなたはいいわよ。あなたから好かれて、告白されて、拒める男の人なんて、いるわけないじゃない。
わたし、ブスだもん。あなたと違って顔もスタイルも…」
苦し紛れの言い訳をしながらみっこの顔を見て、わたしはドキリとした。
彼女は完全に顔色を変えている。
厳しいまゆ、わたしを睨んだ瞳。きつく結んだ唇。
「あたし…」
視線をそらせたみっこは、突き放すように言い放った。
それは静かな、しかし、憤りを抑えた声色だった。
「美人とかブスとかで、女の価値を決める男なんか、軽蔑する」
「…」
「あなたの川島君がそんな男なら、さっさと止めた方がいいわ」
「…」
「…」
そのあとふたりとも、しばらく口をきかなかった。
気まずい雰囲気のまま、わたしたちはお茶を飲み終わると、『森の調べ』を出た。
そのままふたり黙って並んで、銀杏の並木道を歩く。
カサカサと、落葉を踏みしめる音だけが聞こえる。
わたしはなんとかして、仲直りのきっかけをつかもうとしていた。
別にわたしは、みっことケンカしたいんじゃない。
彼女のことがやっぱり好きだし、親友だと思っている。
だけど、自分の感情をコントロールできないことって、ある。
こういうときはクールダウンして、しばらく間を置いて話した方が、いいに決まってる。
そしてみっこも、同じように感じているのかもしれない。
「ごめんなさい」
先に口を開いたのは、みっこの方だった。
「え?」
「あたし、言いすぎたみたい。あやまる」
彼女は足元の落葉を見ながら、言った。
意外…
彼女、ただ気が強いだけじゃなくて、自分の感情を切り替えるのも、うまいんだ。
わたしは少し安堵して答えた。
「ううん。いいの。みっこがわたしのこと真剣に考えてくれてるの、よくわかったし。
確かにかなりムッときたけど… 親友だからきつい忠告してくれたんだと思うし。『良薬は口に苦し』って言うじゃない」
わたしの言葉を聞いて、みっこはようやくこちらを向いてニコリと微笑んだ。
「あたし、こんな強情で生意気でわがままで、思ったことをストレートに言ってしまう性格でしょ。しかも言い方きついし。だから、小さい頃から友達もできなかったし、できてもすぐにケンカ別れしちゃってた」
「みっこ…」
もしかして、それって…
『みっこはどうして、友達いなかったの?』
っていう、さっきのわたしの問いかけへの答え?
つづく
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