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01 PERKY JEAN
PERKY JEAN 10
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「はっ、放してよ!」
「いいやない。これくらい」
「いやっ!」
拒むわたしにかまわず、ニキビは腕の力をさらに込めて抱き寄せ、顔を近づけてきた。
ぞっとする。
嫌いな男に触られるのって、生理的にイヤ!
わたしは必死に肩をよじった。
「やめてよっ」
「いいやない」
「いやっ!」
「一回だけ。ね」
「絶対ダメッ!」
ニキビの猫なで声に、かえって恐怖が増してきて、わたしは精一杯拒んだ。
しかし、ニキビは強引にわたしのあごに手をかけて、顔を持ち上げようとする。歯をくいしばってうつむくけど、ちっともかなわない。すごい力。
どうしてこんな野蛮人が、わたしより力があるの?
女の子って理不尽よ。怖いっ!
「放してよっ!」
その時、リンと澄んだ声があたりに響き渡った。
反射的にわたしはみっこを振り返った。
砂浜に座り込んでいるサングラスに向かって、みっこは少し離れて立ち構えている。
「いっ… 今さらカマトトぶるなよ。おまえだって承知でついてきたんだろ」
狼狽したような声で、サングラスはみっこに言った。
突然のことにニキビも思わず手を緩め、声のした方を見る。その隙にわたしはニキビの腕をすり抜け、みっこの方にかけ寄った。
「うぬぼれないでよ。あたし、承知なんかしてない」
「じゃどうしてオレ達の誘いに乗ったんだ!」
「食事おごってもらうためって、最初に言ったわ」
「6万円もしたんだぞ!」
「あなたが選んだお店よ」
「じゃ、夜の海が見たいってのは、なんなんだ!」
「見に来ちゃいけないの? ただそれだけよ」
「誘ってたじゃんか!」
「勘違いしないで」
「勝手なことぬかすな!」
「じゃあどうしてほしいの? 食事のお礼にキスでもセックスでもしてあげればいいわけ? あたしはそんなに安っぽくないわ。バカにしないで!」
サングラスを睨みつけながら、みっこは速い足取りでわたしの方へ歩いてくる。あまりの迫力に気圧《けお》されたサングラスは、呆然と彼女を見ているだけ。
すごい!
まったく毅然としていて、相手につけいる隙も与えない。
「行きましょ。まったくこの人たち、不愉快だわ」
かけ寄るわたしの手をとって、みっこは国道に向かって早足で歩いていく。
「おい、待て。待てって言ってんだよ! おまえら! くそっ!」
我に返ったサングラスは、期待を裏切られた怒りと恥をかかされた悔しさで、顔を真っ赤にして追ってくる。ニキビもこちらに走ってきた。やばいよ、やばい!
「み、みっこ。早く逃げよ!」
わたしは彼女をせかした。
凶暴になったふたりに、なにをされるかわからない。やばいよ!
「ふふ。大丈夫よさつき。ほら」
国道に出たみっこは、微笑んで向こうに手を振った。
ヘッドライトのまぶしい光が近づいてくる。
さっきのバスが来たんだ。海水浴場から!
わたしたちを認めて、バスはスピードを落とした。
「じゃああたしたちはバスで帰るわ。あなたたちも早くクルマに戻った方がいいかもよ。あたしすぐ戻るつもりで、窓もドアも開けたままにしてきたから。あんな素敵なクルマだし、荒らされたりしたら大変だものね」
わたしの背中を押しながら、みっこはバスのステップを軽やかにかけ上がり、ようやく追いついたふたりに向かって微笑んだ。男たちもさすがにバスの中までは追いかけてこれないみたい。
「降りろよ。もう少し話そうゼ」
「いやよ。あなたたちといると、いつ帰してもらえるかわかんないもん」
「すぐに家に送るからサ。な」
「それにあなたたちといても、ちっとも楽しくないの。食事はおいしかったけどね。じゃあさよなら」
心から『してやった』といった顔で、みっこは微笑む。バスはふたりの男を後に走り出した。
つづく
「いいやない。これくらい」
「いやっ!」
拒むわたしにかまわず、ニキビは腕の力をさらに込めて抱き寄せ、顔を近づけてきた。
ぞっとする。
嫌いな男に触られるのって、生理的にイヤ!
わたしは必死に肩をよじった。
「やめてよっ」
「いいやない」
「いやっ!」
「一回だけ。ね」
「絶対ダメッ!」
ニキビの猫なで声に、かえって恐怖が増してきて、わたしは精一杯拒んだ。
しかし、ニキビは強引にわたしのあごに手をかけて、顔を持ち上げようとする。歯をくいしばってうつむくけど、ちっともかなわない。すごい力。
どうしてこんな野蛮人が、わたしより力があるの?
女の子って理不尽よ。怖いっ!
「放してよっ!」
その時、リンと澄んだ声があたりに響き渡った。
反射的にわたしはみっこを振り返った。
砂浜に座り込んでいるサングラスに向かって、みっこは少し離れて立ち構えている。
「いっ… 今さらカマトトぶるなよ。おまえだって承知でついてきたんだろ」
狼狽したような声で、サングラスはみっこに言った。
突然のことにニキビも思わず手を緩め、声のした方を見る。その隙にわたしはニキビの腕をすり抜け、みっこの方にかけ寄った。
「うぬぼれないでよ。あたし、承知なんかしてない」
「じゃどうしてオレ達の誘いに乗ったんだ!」
「食事おごってもらうためって、最初に言ったわ」
「6万円もしたんだぞ!」
「あなたが選んだお店よ」
「じゃ、夜の海が見たいってのは、なんなんだ!」
「見に来ちゃいけないの? ただそれだけよ」
「誘ってたじゃんか!」
「勘違いしないで」
「勝手なことぬかすな!」
「じゃあどうしてほしいの? 食事のお礼にキスでもセックスでもしてあげればいいわけ? あたしはそんなに安っぽくないわ。バカにしないで!」
サングラスを睨みつけながら、みっこは速い足取りでわたしの方へ歩いてくる。あまりの迫力に気圧《けお》されたサングラスは、呆然と彼女を見ているだけ。
すごい!
まったく毅然としていて、相手につけいる隙も与えない。
「行きましょ。まったくこの人たち、不愉快だわ」
かけ寄るわたしの手をとって、みっこは国道に向かって早足で歩いていく。
「おい、待て。待てって言ってんだよ! おまえら! くそっ!」
我に返ったサングラスは、期待を裏切られた怒りと恥をかかされた悔しさで、顔を真っ赤にして追ってくる。ニキビもこちらに走ってきた。やばいよ、やばい!
「み、みっこ。早く逃げよ!」
わたしは彼女をせかした。
凶暴になったふたりに、なにをされるかわからない。やばいよ!
「ふふ。大丈夫よさつき。ほら」
国道に出たみっこは、微笑んで向こうに手を振った。
ヘッドライトのまぶしい光が近づいてくる。
さっきのバスが来たんだ。海水浴場から!
わたしたちを認めて、バスはスピードを落とした。
「じゃああたしたちはバスで帰るわ。あなたたちも早くクルマに戻った方がいいかもよ。あたしすぐ戻るつもりで、窓もドアも開けたままにしてきたから。あんな素敵なクルマだし、荒らされたりしたら大変だものね」
わたしの背中を押しながら、みっこはバスのステップを軽やかにかけ上がり、ようやく追いついたふたりに向かって微笑んだ。男たちもさすがにバスの中までは追いかけてこれないみたい。
「降りろよ。もう少し話そうゼ」
「いやよ。あなたたちといると、いつ帰してもらえるかわかんないもん」
「すぐに家に送るからサ。な」
「それにあなたたちといても、ちっとも楽しくないの。食事はおいしかったけどね。じゃあさよなら」
心から『してやった』といった顔で、みっこは微笑む。バスはふたりの男を後に走り出した。
つづく
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