Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
上 下
8 / 300
01 PERKY JEAN

PERKY JEAN 7

しおりを挟む
「サッキの趣味はなん?」
ニキビがいきなり、話をわたしに振ってきた。
口に運ぼうとしていたさかなのソテーを乗せたフォークを、わたしは慌てて止めて答えた。
「えっ? えっと… 本読んだりとか、お菓子作ったりとか… くらい」
「俺も本読むんよ。赤川次郎とか山田詠美とか。『ノルウェイの森』はわけわからんであんまりおもしろなかったけど、映画化されたら見たいだい」
「そうかな? 最近の原作つきの映画って、解釈が浅いくせに表現が奇抜に走りすぎで、原作の世界観を壊しちゃってるものが多い気がする。小説には活字でしか表現できない世界があるから、その映像化にはまず、世界観の共有から入らないといけないんじゃないかな。
それに今の若者向けの小説って、ムードばかりに流され過ぎてて、刹那的でおもしろくない。わかる人にしかわかんないって感じで、普遍性もないし、語彙もステロ化して乏しいと思う」
「…」
わたしがしゃべった後は、しばらく誰も口をきかなかった。
みっこはひとりでクスクス笑ってる。
や、やっぱり場に合わない話だったかな…
「あ。シャンパンもとろうゼ。乾杯しよう!」
サングラスはそう言って、話をはぐらかした。

それでも会話のイニシアチブはみっこが握っていた。
彼女は巧みに彼らの恋愛観や、好みの女の子のタイプなんかを聞き出す。そんなふたりの話をはたで聞いていて、わたしは失望してしまった。
ふたりが女の子のことを話すとき、よく『ギャル』って言葉を使うんだけど、わたしには『GAL』は『GIRL』より一字足りない、女性を見下したスラングにしか聞こえない。
彼らの理想の『ギャル』ってのは、つぶらな瞳で笑顔が可愛いだけがとりえな、男の人に「はいはい」と従う、意志のない女の子。
それって、女の子をただの「もの」としてしか、見てないみたい?
男と女には、性愛的な欲望がつきまとう。
そんなものに囚わずに相手の中身を見て、魂と魂が理解し合うこととか、できないものなのかな?

う~ん…
こんなこと考えながら食事したって、ちっともおいしくない。

「ねえ。ナンパはよくやるの?」

おっと~。
大胆なみっこの質問が飛び出した。さすがにふたりも慌てる。
「いいのよ、気にしないから。ナンパ成功したのって、あたしたちが初めてってわけじゃないでしょ。今までひっかけた女の子、どうだった? すぐころんだ?」
「あ… アブナイ会話だな。みっこはやっぱりおもしれーゼ」
「はぐらかしたってダメよ。言っちゃいなさいよ。あんなカッコいいクルマに乗ってて、こんな素敵なレストラン知ってるんだもの。女の扱い上手よね」
「そ、そうか?」
「これだったら、女の子の方から寄ってくるんじゃない?」
「ん… ま、まあな」
「ね。教えてよ。あのクルマの助手席に座れた羨ましいって、どんな感じだったのかな?」
「ま、まあ、ワンレンボディコンの女は、クルマ見ただけでついてくるな。それからDCグッズを買ってやって、テレビに出たレストランとかカフェ・バーに連れていったら、もう舞い上がりまくりだゼ」
「わぁ、いいな~。さすが、女の子の好みを知ってるわね」
「へへ。『ポパイ』とかで常に研究してるからな」
「じゃあ盛り上がったあとで、海辺の夜の国道をドライブして、『イルパラッツォ』あたりのシティホテルに連れ込む、って流れ?」
「はは。それ、いいな。そんなホテルだったらもう浮かれちまって、何でもやらしてくれるゼ。まったく九州のイモねーちゃんどもはレベル低いよな」
「ふぅ~ん。そっか。同じクルマに乗せてもらってるあたしも、レベル低いんだ」
「いやいや。みっこは全然違うゼ。格が違うっていうか、場慣れしてるっていうか、お嬢様っぽくて。
おまえを知ってしまったら、もう他の女なんか助手席に座らせられねーゼ」
「お、おれもそう思う。やっぱりみっこがイカすギャルやね。この前の女なんかブクブク肥えててよ。ブスブタは女の価値ないやろ」
「ああ、あれか。ボディコンミニスカはいいんだけどさ、パツンパツンに広がっててよ。網タイツの脚はまるでボンレスハムだったな」
「ブスはボディコン着るなち思ったぜ」
「そりゃそうだ。女は見た目でなんぼだゼ」
「みっこやサッキみたいなマブいギャルなら、連れて歩いて自慢できるよな」
「ああ。ふたりとも最高だゼ」

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

メッセージ

三園 七詩
ライト文芸
最近、仕事も私生活も何事も上手くいかない孝介。そんな時母からのメールに少しずついい方に好転していく。

人外さんに選ばれたのは私でした ~それでも私は人間です~

こひな
ライト文芸
渡利美里30歳。 勤めていた会社を訳あって辞め、フリーターをやっている美里は、姉のフリーマーケットのお手伝いに出かけた日に運命の出会いをする。 ずっと気になっていたけれど、誰にも相談できずにいた、自分の肩に座る『この子』の相談したことをきっかけに、ありとあらゆる不思議に巻き込まれていく…。

サクッと読める♪短めの意味がわかると怖い話

レオン
ホラー
サクッとお手軽に読めちゃう意味がわかると怖い話集です! 前作オリジナル!(な、はず!) 思い付いたらどんどん更新します!

星稜高校裏料理研究部~陰キャ料理男子と腹ペコでインフルエンサーな女子

ピヨピヨ
ライト文芸
高校生活で陰キャにカテゴライズされたアオはこと青木は、なぜか学校のアイドルかつインフルエンサー女子の璃子に飯をたかられて。 「なんでこいついつも腹すかせてんだ?」 訳アリ女子と訳アリ男子の友情と、なんてことのない日常のお話

「世界で1番短い物語」一瞬のあの切なさを閉じ込めて

麻美拓海
ライト文芸
a good story for good life 起承転結で綴る4コマ漫画的な物語 例えば人生のこんな一場面

主人公の幼馴染みを好きになってしまった話

希望
ライト文芸
俺は恋をした。しかし相手は主人公のようにモテまくるやつの幼馴染みだった。俺は諦めようとしたときに森田の幼馴染みで俺の好きな人である長濱さんと体育館裏にいるのを見つけた。俺はショックを受ける炊けたと分かっていても隠れてその様子を見守った。きっとどっちが告白してもうまくいくだろう。心の奥がギシッと痛む。だがこれで諦めがつく。 だが俺の予想とは違った答えを森田は出した。 「ごめんな幼馴染みとしてしか見えないんだ」 そう言って森田は申し訳なさそうな顔をして去っていった。俺は森田は長濱さんのことを好きだと思っていた。だが結末は違っていた。俺は長濱さんに申し訳ないと思いつつもまだチャンスがあると思い諦めるのはやめた。ここで慰めた方がいいんじゃないかって?そんなことしたら盗み見ていたことがばれるし、下心満載だと思われるから最悪嫌われる可能性もある。たからここてはでは出ていかない。だから静かに俺はここを去った。これは長濱さんと俺の距離か少しずつ近寄る物語である。

祖母孝行したいけど、兄弟でキスはできない

りりぃこ
ライト文芸
BL✕介護✕コスプレ  ※BL作品ではありません 竹中智紀の祖母さち子は、寝たきり介護状態である。 そんなさち子は、入院中にBL漫画にハマってしまったらしい。 ちょっと近くで見てみたいね。智紀、ちょっとお兄ちゃんと仲良くイチャイチャしてくれないか? そんなふざけた願いを聞き届け、智紀は祖母孝行することができるのか。 流されやすくてチョロい男子高校生の弟・智紀と、青髪白スーツのホスト風貌で効率主義な弁護士の兄・祥太。 イケメン兄弟の、イチャイチャしないで祖母の願いを叶えるための計画が始まる。

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。

BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。 だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。 女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね? けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

処理中です...