Campus91

茉莉 佳

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01 PERKY JEAN

PERKY JEAN 2

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 快速が止まる郊外の駅で電車を降りて、バスでさらに20分。
終点のアナウンスを聞きながら、目の前に海が広がるバス停に、わたしたちは降り立った。
ストームの様な熱気。
トップライトで照りつける太陽。
まぶしい砂の白。
海の青。
わき上がる雲の白。
空の青。
ギザギザなコントラストがとっても鮮烈!

「どう? この水着」
更衣室から出てきた彼女は、そう言いながらファッションモデルのように、クルリと回ってみせた。
とっても素敵!
マゼンタ色の生地に熱帯樹の模様をプリントした、ワンピースの水着。ヘアはツーサイドアップにしてて、とっても可愛くて綺麗。
「うん。すごくいいじゃない」
そう言いながら、わたしは無意識のうちに、羽織っていたパーカーで自分のからだを隠した。

いらない部分がみんな削り落とされたヴィーナスの彫刻、とでも言おうか。
こんな、洗練された美しいボディラインを前にすると、自分のブヨブヨのからだが恥ずかしくなってくる。。
わたしと同じくらいの160cm足らずの身長なのに、みっこは頭が小さくて腰が高く、手足がすらりと長い。となりに並ぶと、フラミンゴとペンギンくらい、スタイルに差がある。
なんか、すごく惨め。

「泳ご! さつき!」
わたしのコンプレックスにも気づかない様子で、彼女はなぎさへかけ出した。
「みっこ。準備運動しなきゃ」
「そんなの、いらない」
そう言って、キラキラ光る波頭をつま先で砕き、みっこは振り返って笑う。意外と活発なんだな。


 しばらく泳いだり、ビーチボールで遊んだりしたあと、わたしたちはなぎさに上がり、写真を撮りあった。
「みっこ。その辺に立ってて」
そう言いながら、わたしはコンパクトカメラをバッグから取り出す。
カメラを構えると、彼女は軽くポーズをとった。
「こんな感じ?」
「いいじゃない!」
わたしはそう言ってシャッターを押した。
流れるように、みっこはポーズを変えていく。
両手で髪をかきあげてウインクしてみせたり、つま先に砂を絡めながら脚をクロスさせ、肩をすぼめて振り返ったり。
そんなしぐさがやたらとキマってて、とってもキュートで、つい、シャッターを切らされてしまう。
「へえ。みっこすごい。まるでモデルみたい!」
なんてポーズをとるのが上手なんだろ。
わたしは感心して言った。みっこはニコリと微笑んでわたしのそばに寄ってくると、カメラを取り上げる。
「さ、次はさつきの番よ。ハイ! じゃその辺に座ってみよっか」
「え?」
言われるまましかたなく、わたしはみっこの指差す場所に座る。写真撮られるのってどうも苦手なんだ。せめてもう少し可愛ければ、もっと楽しいんだろうけど…
「ほら、さつき。モデルはもっと大胆にね。そう胸張って。はい! 笑って笑って!」
みっこは笑いながら、バシバシとストロボを光らせてシャッターを切った。
「もう。いきなりカメラマンにならないでよ」
遠慮なくシャッターを切られ、いろんなポーズをとらされたわたしは、めげてへたり込んだ。
「じゃ、今度はツーショットで!」
そう言うと、みっこはそばのバッグにカメラを置き、タイマーをセットしてファインダーを覗く。
シャッターを押すとわたしのそばにかけ寄り、ふざけて肩を抱いて頬を寄せながら、ピースして微笑む。
わたしも彼女のマネをして、レンズに向かってピースした。

 ひととおり写真も撮ったあと、わたしたちはビーチに寝っ転がった。
灼けた砂粒がからだの芯までジリジリ喰い込んできて、熱痛いけど気持ちいい。
こうしていると、『夏っ!』って感じで、気分も高まってくる。
みっこはとなりにペタンと尻もちついて、わたしの背中に砂をかけて遊びはじめた。
「やん。くすぐったい」
クスクス笑うだけで、彼女はやめようとしない。
しばらく砂にまみれながらじゃれあって、わたしは喉がカラカラなのに気がついた。
「そういえば、喉乾いたね」
「そうね。冷たいジュース買ってこよか。さつきはなにがいい?」
「わたし… ジンジャーエールかなぁ」
「オッケ! ちょっと待っててね」
からだの砂を払って素早く立ち上がった彼女は、バスケットから財布を取り出し、サマーセーターを羽織りながら小走りに駆けていった。

別に寒いってわけじゃないのに…
露出嫌いなのかしら?

つづく
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