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level 22
「いっしょに夜を過ごしたいと思って選んだのですね」
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ひとしきり素振りを終えたあと、部屋に戻って机につく。
さっきまでの鬱々した気分も少しは晴れて、身も心も軽くなっているようだ。
勉強にも集中できそう。
ときどきはいらない思考も邪魔してくるけど、なぎなたで雑念を振り払うようにイメージし、わたしは参考書に向きあった。
「あ、、 もうこんな時間か」
なんとか今日の目標までたどり着き、大きく伸びをして、ふと、目の前の時計に目をやると、デジタルの数字はとっくに日付が変わっていて、25日になっていた。
「もう、クリスマスかぁ」
巷ではお祭り騒ぎが続いてるんだろうけど、受験生のわたしには関係ない。
強いていえば、今日から冬休みで、早起きしなくていいという解放感があるくらい。
「まったりお風呂にでも入って、今日はもう寝ようかな」
ひとりごちながら、わたしはチェストから着替えの下着とパジャマを出し、物音を立てないようにしながら部屋を出た。
兄はもう眠っているようで、ドアの向こうからはなんの気配もない。
階段を降りて浴室へ向かう途中、父母の寝室の前を通ったが、こちらも静まり返っていた。
起きてるのはわたしだけか。
われながら、受験生は大変だな。
湯船で手足を伸ばし、のんびり暖まったわたしは、パジャマに着替えて頭にタオルを巻き、部屋に戻った。
ベッドの縁に腰掛け、台所の冷蔵庫から持ってきたドリンクの栓を開けながら、ふと、部屋の片隅に置きっぱなしにしていたショッパーが目に入る。
ヨシキさんからいただいた、クリスマスプレゼントだ。
ドリンクで少し喉を潤したわたしは、改めてプレゼントを取り出し、ベッドに広げてみた。
やわらかな薄地の真っ白なナイティが、雪のようにふわりと舞い降りる。
胸元や裾に散りばめられた星が、クリスマスの夜らしくて、とってもロマンティック。
わたしに似合うと思って。
これを着たわたしといっしょに夜を過ごしたいと思って。
ヨシキさんは選んでくれたんだろな。
わたしのことを想いながら、、、
『凛子ちゃんがそれを着た姿は、しばらく見れそうにないな』
微笑みながらも寂しそうに呟いたヨシキさんの顔が、目に浮かんだ。
わたしと同じように、ヨシキさんも今日のデートを楽しみにしていたんだろう。
いっしょに食事して、クリスマスデコレーションで華やいだ街の雰囲気を楽しんで、キスをして、抱きあって、、、
素敵な聖夜《クリスマスイブ》になるはずなのに、恋人といっしょに過ごせない寂しさ。
なのに、ヨシキさんは文句も言わずに受け入れてくれた。
ちょっとキスをされたからといって、ムキになって拒むわたしが、勝手すぎたかもしれない。
もっと、ヨシキさんの気持ちも考えてあげればよかった。
ナイティを手に取って立ち上がったわたしは、パジャマの前ボタンを外していった。
ズボンも脱いで、ふんわりと真新しい服を頭からかぶる。
あったかい空気を孕んだナイティの裾が、花びらが広がるようにふわりと落ちていく。
姿見に映ったわたしは、白百合の花を逆さにした貴婦人みたい。
だけど、ほんのりと透けて見える肌が、ちょっぴりセクシィ。
すべすべと肌触りもよくて、着心地も最高。
「クリスマスだもん。やっぱり仲直りしとこう!」
鏡のなかの自分に言い聞かせるように、わたしはつぶやくと、机の上の携帯に手を伸ばした。
プレゼントしてもらったナイティを着てる姿を撮って、ヨシキさんに送ろう。
そうすれば、仲直りのきっかけがつかめるかもしれない。
“ピロリロリロ…”
携帯のカメラを立ち上げ、カメラを構えていると、不意にコール音が鳴った。
「え? うそ、、、」
思わず言葉が漏れる。
それは、ヨシキさんからの電話だった。
つづく
さっきまでの鬱々した気分も少しは晴れて、身も心も軽くなっているようだ。
勉強にも集中できそう。
ときどきはいらない思考も邪魔してくるけど、なぎなたで雑念を振り払うようにイメージし、わたしは参考書に向きあった。
「あ、、 もうこんな時間か」
なんとか今日の目標までたどり着き、大きく伸びをして、ふと、目の前の時計に目をやると、デジタルの数字はとっくに日付が変わっていて、25日になっていた。
「もう、クリスマスかぁ」
巷ではお祭り騒ぎが続いてるんだろうけど、受験生のわたしには関係ない。
強いていえば、今日から冬休みで、早起きしなくていいという解放感があるくらい。
「まったりお風呂にでも入って、今日はもう寝ようかな」
ひとりごちながら、わたしはチェストから着替えの下着とパジャマを出し、物音を立てないようにしながら部屋を出た。
兄はもう眠っているようで、ドアの向こうからはなんの気配もない。
階段を降りて浴室へ向かう途中、父母の寝室の前を通ったが、こちらも静まり返っていた。
起きてるのはわたしだけか。
われながら、受験生は大変だな。
湯船で手足を伸ばし、のんびり暖まったわたしは、パジャマに着替えて頭にタオルを巻き、部屋に戻った。
ベッドの縁に腰掛け、台所の冷蔵庫から持ってきたドリンクの栓を開けながら、ふと、部屋の片隅に置きっぱなしにしていたショッパーが目に入る。
ヨシキさんからいただいた、クリスマスプレゼントだ。
ドリンクで少し喉を潤したわたしは、改めてプレゼントを取り出し、ベッドに広げてみた。
やわらかな薄地の真っ白なナイティが、雪のようにふわりと舞い降りる。
胸元や裾に散りばめられた星が、クリスマスの夜らしくて、とってもロマンティック。
わたしに似合うと思って。
これを着たわたしといっしょに夜を過ごしたいと思って。
ヨシキさんは選んでくれたんだろな。
わたしのことを想いながら、、、
『凛子ちゃんがそれを着た姿は、しばらく見れそうにないな』
微笑みながらも寂しそうに呟いたヨシキさんの顔が、目に浮かんだ。
わたしと同じように、ヨシキさんも今日のデートを楽しみにしていたんだろう。
いっしょに食事して、クリスマスデコレーションで華やいだ街の雰囲気を楽しんで、キスをして、抱きあって、、、
素敵な聖夜《クリスマスイブ》になるはずなのに、恋人といっしょに過ごせない寂しさ。
なのに、ヨシキさんは文句も言わずに受け入れてくれた。
ちょっとキスをされたからといって、ムキになって拒むわたしが、勝手すぎたかもしれない。
もっと、ヨシキさんの気持ちも考えてあげればよかった。
ナイティを手に取って立ち上がったわたしは、パジャマの前ボタンを外していった。
ズボンも脱いで、ふんわりと真新しい服を頭からかぶる。
あったかい空気を孕んだナイティの裾が、花びらが広がるようにふわりと落ちていく。
姿見に映ったわたしは、白百合の花を逆さにした貴婦人みたい。
だけど、ほんのりと透けて見える肌が、ちょっぴりセクシィ。
すべすべと肌触りもよくて、着心地も最高。
「クリスマスだもん。やっぱり仲直りしとこう!」
鏡のなかの自分に言い聞かせるように、わたしはつぶやくと、机の上の携帯に手を伸ばした。
プレゼントしてもらったナイティを着てる姿を撮って、ヨシキさんに送ろう。
そうすれば、仲直りのきっかけがつかめるかもしれない。
“ピロリロリロ…”
携帯のカメラを立ち上げ、カメラを構えていると、不意にコール音が鳴った。
「え? うそ、、、」
思わず言葉が漏れる。
それは、ヨシキさんからの電話だった。
つづく
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