あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

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level 22

「これ以上していたら勉強する意志がくじけます」

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「じゃあ、ふたりのクリスマスに乾杯」

ヨシキさんの掲げたシャンパングラスに、わたしも軽くグラスを重ねる。
と言っても、ふたりとも今日はノンアルコールのドリンク。
ヨシキさんはこのあとの運転もあるし、わたしは未成年の高校生モデルなので、もしだれかに、お酒を飲んでいるところを見られたりしたら、大変だからだ。
アルコール抜きの食事はちょっぴり物足りなかったけど、次々と運ばれてくる料理は、期待にたがわず美味しいものだった。

やっぱりヨシキさんに任せておけば、間違いない。
前菜の生ハムもサラミも、噛むほどに味が染み渡ってきて美味しいし、緑のクリスマスリースが描かれたミネストローネは、トマトの酸味がやわらかく舌を包み込み、ハーブの香りも上品。
お魚料理は豪華に伊勢海老。メインディッシュのチキンのローストも、皮はパリパリで身はジューシー。申し分ない美味しさだった。

以前、ノマドさんと食べた『有名レストラン』のイタリアンも美味しかったけど、目の前にいるのがノマドさんじゃ、申し訳ないけどどきめかない。
雰囲気も味のうちなんだと、ヨシキさん以外の人と食事をして、初めて気がついた。
『他の男を知ったら、オレのよさがわかる』なんてことを言っていたヨシキさんだけど、まんざら驕りでもなかった。
やっぱり、ヨシキさんと食べるごはんが、いちばん美味しい。


 食事を終えてレストランを出たのは、まだ日の高い2時頃。
駐車場に停めていた黒の『TOYOTA bB』の助手席のドアを、ヨシキさんはさりげなく開けてくれる。

「ありがとうございます」

ひとことお礼を言って、わたしはクルマに乗り込む。
最初の頃は戸惑っていたこの『お姫様乗車』にも、すっかり慣れてきた。

「今日はありがとうございました。ご馳走さまでした」

ヨシキさんが運転席に座ったタイミングを見計らって、わたしは食事のお礼を告げた。

「どういたしまして。美味しかった?」
「はい。とっても」
「よかった。凛子ちゃんが喜ぶ顔を見れて、オレも満足だよ」
「ありがとうございます」
「凛子ちゃん…」

ひとことささやいたヨシキさんは、わたしのあごに指をかけるとクイっと自分の方に持ち上げ、キスをしてきた。

「ん、、、」

ヨシキさんの肩にわたしも腕を回し、受け入れる。
最初は挨拶程度の軽いキスだったものが、少しずつ熱を帯びてくる。
わたしの舌に自分の舌を絡め、ヨシキさんは官能をくすぐってきた。


「だっ、ダメです。もう」

快感に引きずり込まれそうになったわたしは、あわててヨシキさんを押し返した。
これ以上していたら、早く帰って勉強するって意志が、くじけてしまいそう。

「いいだろ。もっと凛子ちゃんがほしい」
「ダメ、、、 早く帰って、勉強しないと」
「勉強ね。クリスマスイブくらい特別だろ」
「それに、だれか見てるかもしれません」
「いいじゃん。見せつけてやろうぜ」
「ダメです! わたしはモデルです。そんなスキャンダルは困ります!」

からだをよじってヨシキさんを突き放しながら、わたしは強い口調で言った。

「クルマ出して! もう帰ります!」
「…」

『しまった』と後悔したけど、もう遅い。
勢いに任せて、感情的になってしまった。
こういう言葉こそ、喧嘩の元になってしまうのに、、

案の定、一瞬冷ややかにわたしを見返したヨシキさんは、『はぁ』とひとつ、ため息をつくと、運転席に座り直してシートベルトを締めた。
なにも言わないまま、イグニションキーを回してエンジンをかける。
クルマの流れが途切れない車道に、『TOYOTA bB』は無理やり割り込んでいき、急加速をした。

「…」
「…」

無言ドライブが続く。
さっきまでの楽しい食事が嘘のように、雲行きが怪しくなってきた。

つづく
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