あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

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level 17

「負け犬になんか、絶対になりたくないです!」

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     level 18

 次の日曜日。
わたしはやっぱり、イベント会場のコスプレブースにいた。

ヨシキさんと別れたあの夜から一週間。
彼からはまったく、連絡くることがなかった。

わたしの方は、一日だってヨシキさんのことを考えなかった日はないっていうのに・・・
どうせその程度の存在としか、思われていなかったのか。
寂しいのを通り過ぎて、腹が立ってくる。
ここでわたしがイベントに行かず、ヨシキさんだけがのうのうと他のレイヤーを撮ったりするのは、口惜しいし、なにより腹が立つ。
周りが敵だらけのイベント会場なんて、正直行くのはイヤだったけど、ここでわたしが引いてしまえば、メールを送りつけてきたヤツや、わたしのことをうとんでいる人たちの思うツボだ。

負け犬になんか、絶対になりたくない。

あんな掲示板のことなんか気にもせず、他のレイヤーやカメコと楽しんでいるところを、悪口を書いている連中に、そしてなにより、ヨシキさんに見せつけてやりたい。
『オレがいなくても凛子ちゃんは平気なんだな』というのを思い知らせてやるためにも、わたしはイベントに行かなきゃならない。
新たに調達したコスプレ衣装を身に纏い、わたしは会場に乗り出した。



「美月姫~!!! ななななんとっ! 今日は『散華転生』の一番人気。『お市の方』コスではないですか~~~~っ  キャ━━━ヽ│*゚∀゚*│ノ━━━━!ッ!!
お市の方は細川ガラシャと並ぶ戦国一の美形で、聡明で勇ましくて、歴女の桃李のイチオシキャラです~ (≧Д≦)ゞ
美月姫はもうお市の方そのもので、ふっ、ふつくし過ぎますぅ~ (☆Д☆)
桃李、感動にあまり討ち死にしそうですぅ~~~っっっ (((o≧▽≦)o」

更衣室から出てきたわたしをすぐに見つけた桃李さんが、興奮したように駆け寄ってきた。

そう。
この日のためにわたしは貯金をはたいて、『散華転生』の高価な衣装と装備を揃えたのだ。

『散華転生』は以前、桃李さんからゲームを借りてプレイして楽しかったし、キャラクターや衣装が素敵で、コスプレしてみたいなと思っていた。
『リア恋plus』は、コスプレといっても、いつも着ている学校の制服みたいで、『特別な衣装を着ている』という実感が乏しい。
だけどこの、歴史アクションロールプレイングゲームの『散華転生』は、キャラクターの衣装が豪華で、時代がかったコスチュームを着られるという、スペシャル感がある。
なかでも『お市の方』の衣装は、打ち掛けと甲冑かっちゅうがきらびやかで豪華絢爛。
意匠を凝らしたコスチュームは、まさにコスプレの華で、変身願望を満足させてくれるものだった。
その分、値段も高く、高校生の自分には気軽に手が出せず、なかなか購入の踏ん切りがつかなかったけど、今回のことで意を決したのだ。
だいいち、いつも『江之宮憐花』のコスプレだけじゃ、みんなからバカにされるし、飽きられる。
みんなの注目を集めるにも、『散華転生』のコスプレは最適だった。

「桃李さん、どうですか?」

胸元の開いたコルセット風の和洋折衷の甲冑に、錦糸を織り込んだ潤色じゅんしょくな色打ち掛け。派手な装飾のついた薙刀をたずさえ、わたしは彼女の前でクルリと回ってみせた。
大振り袖が広がって、短い打ち掛けがフワリと舞い上がり、西洋風のクリノリンが裾からのぞく。

「もうっ! もうっ!! 素敵過ぎて言葉が出ませんっ Y(>_<、)Y
是非是非わたしに一番槍をお申しつけください!! わたしのこのキスデジちゃんで、美月姫の麗しいお姿を。見事お撮りさせていただきまするっっ (ж>▽<)y ☆」
「うむ、あいわかった。そなたに頼むとしんぜよう」
「ははぁっ。いざ!」

調子に乗って応えたわたしに、桃李さんも悪ノリしてくる。
いや。
彼女のことだから、天然なのかも、、

つづく
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