あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

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「ちゃんとやれるということを証明してみせます」

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恋人の妹とはいえ、わたしのことを『超絶美少女』だとか『凛子ちゃんみたいな、可愛い妹がほしかった』だとか、やたら褒めて持ち上げて。
今考えてみれば、わたしのこと、懐柔しようとしているみたいだった。
本心では、疎んでいたくせに。
わたしを手なずけて、今度はヨシキさんとも仲良くなろうとしているわけ?

じゃあ、兄はどうなるの?
なにも知らずに優花さんのことを本気で愛していて、結婚の約束までしている兄を、ヨシキさんと天秤にかけるというの?
二股かけるなんて、このわたしが許さない!

「もういいです! 優花さんに相談したのが間違いでした! もう電話しませんから!!」
「凛子ちゃん、まっ…」

一瞬、躊躇ためらう気持ちがかすめたが、勢いの方がまさって、わたしは通話を切った。

『しまった』

そのあとで、罪悪感がじんわりと湧き上がってくる。わたしはほぞを噛んで携帯を握りしめた。

とんでもないことしちゃった。
優花さんがメールの送り主だと、決まったわけでもないのに。
いくら苛立っていたとはいえ、根拠のない妄想が先走って、勝手に犯人だと決めつけちゃって。

優花さんはお姉さんのような存在で、いい友達で、いつもわたしのこと、親身になって考えてくれて…
今回のことだって、優花さんの言うことはもっともだ。
わたしとヨシキさんの関係をはたから見れば、『別れた方がいい』と、だれもが忠告するだろう。
なのにわたしは、被害妄想でなにも見えなくなって、ひとりで空回りして、、、

最低なわたし。
だけど、どうしようもない。

だれもがみんな、敵に見えてくる。
あんなに優しくて、親身でいてくれた優花さんさえも。

それもこれも、あのメールと掲示板のせい。
考えれば考えるほど、すべての元凶だ。
あのメールが来たせいで、みんながわたしから離れていく。
たった一晩で、わたしは奈落の底に落とされてしまった。
どうあがけば、ここから這い上がっていけるのだろう。

もしかしてわたし、メンタル弱いのかな?
なぎなたとか、武道を習っているくせに。
精神修養は大事だって。
自分を律する精神力を養えって、いつも教わっているのに。
勢いに流されて、自分を制御できなくなってしまって。
もっと精神、鍛えなきゃ。

…とにかく頑張らなくっちゃいけない。
見返してやる!

ヨシキさんなんかいなくたって、わたしはちゃんとやれるんだということを、証明してみせる。
コスプレだって、だれからも馬鹿にされないようにしてやる。
『へたレイヤー』だとか、『くずレイヤー』だとか、もう、だれにも言わせない。
美咲麗奈や百合花や魔夢なんかに負けない、すごいレイヤーになってやる。
そのためには、ポージングが上達するだけでなく、もっといろんなコスプレをやって、コスプレSNSで写真をたくさん更新して、注目を集めなきゃいけない。
掲示板で嘲笑あざわらっている奴らを、見返してやる。

とにかく・・・
頑張るしかないんだ!



「ふぅん。それで、もっとお稽古したいの?」

次の回のモデルレッスンが終わったあとだった。
いつものように森田美湖さんとリビングで紅茶を飲みながら、『レッスンを増やせないか』と、わたしは相談してみたのだ。

真意を探るように、みっこさんはその美しい瞳で、わたしのことをじっと見つめていた。
コスプレやメールや掲示板のことは伏せたまま、わたしはみっこさんに深々と頭を下げた。
みっこさんのことを利用するようで申し訳ないと思いつつ、今のわたしには、他の方法は思い浮かばなかった。

つづく
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