あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

文字の大きさ
上 下
89 / 259
level 10

「夜のリゾートの甘い雰囲気は大胆になれます」

しおりを挟む
「酔い覚ましに、少しビーチを歩いてみようか」

食事のあと、ヨシキさんはわたしの手をとり、ビーチへ出た。
グラス一杯のシャンパンだけではもの足りず、わたしたちは結局、赤ワインのフルボトルを一本開けていた。

わずかに群青色を残した漆黒の空には、ポツポツと星が瞬きはじめ、ライトアップされた光が、熱帯樹や教会を仄かに浮かび上がらせている。
なぎさには先客のカップルがポツポツといて、それぞれがひとつのシルエットになっている。
夜のリゾートホテルは、昼間とはまた違った、ロマンティックな雰囲気を醸し出していた。

「足許がふわふわします。少し酔ったみたい」
「大丈夫? それにしても凛子ちゃん、お酒強いね」
「すみません。調子に乗って、たくさん飲んじゃって」
「いいよ。凛子ちゃんって酔うと、頬や耳がピンクに染まっちゃって、すごく可愛いよ」
「やだ」

そう言って、わたしはヨシキさんの腕に絡みつき、肩にもたれかかった。
太陽の下ではこんな恥ずかしいことはできかったけど、お酒の勢いと、夜のリゾートの甘い雰囲気で、つい、大胆になれてしまう。
ヨシキさんもわたしの肩を抱き、しばらくふたりで、夜の浜辺をあてもなく歩いた。
遠くまで来たところで、ヨシキさんは立ち止まり、軽くわたしを抱き寄せる。
寄せては返す波の音を聞きながら、わたしたちはキスをかわした。

「んん…」

いい気分。
もつれるようにふたりは芝生の上に寝転がり、わたしはヨシキさんの上に馬乗りになった。

「キスしてあげます」

そう言いながら腰をかがめ、唇を重ねる。
ヨシキさんがしてくれるみたいに、まぶたや耳、首筋にキスをしていく。シャツのボタンを開けてはだけさせ、胸元にもくちづける。

「人に見られるよ」
「見せつけてあげましょ」
「凛子ちゃんって、お酒が入ると人が変わるな」
「こういうの、嫌いですか?」
「いや。大胆な凛子ちゃんも、すごくいいよ」
「ふふ。わたし、淫乱なのかも」
「大歓迎だよ」
「じゃあ、もっとさせて下さい」

わたしはキスを続けた。
軽く瞳を閉じ、ヨシキさんは気持ちよさそうに、唇をかすかに緩める。
そんな表情を見ていると、こちらまでむらむらしてくる。
もっと攻めてやりたい。

「今度はオレがしてやるよ」

しばらくされるがままになっていたヨシキさんは、逆襲するかのように態勢を入れ替え、わたしを草の絨毯の上に仰向けにした。
一瞬にして景色が入れ替わり、目の前一面に広がった夜空は、キラキラ輝く星が降ってきそうなくらいに綺麗。
ヨシキさんの指や唇が、わたしのからだをなぞっていく。

縦横無尽に快感が走る。
すべてのしがらみから解き放たれ、漆黒の宇宙を漂っているみたい。
たまらない。
わたしは背中をのけぞらせた。
瞳を閉じて、快楽に溺れていく。

「続きは部屋でな」

しばらくは快感に酔っていたが、ヨシキさんはからだを起こし、わたしから離れた。
わたしの腕をとって立ち上がらせ、からだについた草を軽く払ってくれる。
からだがまだ、くすぶっている。
なんだかじらされているみたいで、もっとヨシキさんがほしくなる。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

変態ドM社長は女神の足元にかしずく

雪宮凛
恋愛
モデルとして活躍する彩華は、マネージャーと共に訪れたバーである男と出会う。 彼は、瀬野ホールディングスグループ二代目社長、瀬野智明。 偶然の出会いをきっかけに、二人の歪な関係が始まる――。 タグに目を通し、大丈夫な方だけご覧ください。 ※他の投稿サイト様(ムーンライトノベルズ様、メクる様、プチプリンセス様)にも、同じ作品を転載しています。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...