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「もう高校生なのに門限10時は早すぎませんか?!」
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一昨日の夜と同じ場所に『TOYOTA bB』が止まったのは、まだ門限前の9時半頃だった。
まる1日以上いっしょにいたせいで、別れが辛い。
名残を惜しむように、別れの挨拶をしながらクルマのなかでキスをしているうちに、今日も門限を少し過ぎてしまう。
「…ただいまぁ」
小声で言いながら、わたしはこっそり玄関の引き戸を開けた。
さっさと2階に上がって、自分の部屋に入ってしまおう。
しかし、わたしの帰ってくる気配に気づいていたのか、玄関には母がすでに待ち構えていた。
「今日も遅いわよ。凛子、いい加減にしなさい」
「ごめんなさい」
「ちゃんと門限を守らないと、外出禁止にしますからね」
それはひどい!
思わず不満が口をつく。
「だいたい、10時門限なんて早過ぎます。わたしもう高校生なのに」
「当たり前でしょう。あなたはまだ高校生なのよ。10時でも遅いくらいです。要求や不満があるなら、キチンと義務を果たしたあとに主張しなさい。決められた約束を自分から破っておいて、それに文句をつけるのは、盗人たけだけしいというのよ。だいたい…」
しまった。
母の場合、ひとつ文句を言えば、十倍に小言が増えるんだった。
こうなってしまったら、説教が終わるのを口を噤んでひたすら待つしかない。
ひとしきり小言を吐き出して、母も気が治まったのか、ようやく解放される。
「あの… お父さまは…」
父からも説教を喰らうのかなぁ。
感情的に畳みかけてくるような母のお小言もめんどくさいけど、ぐうの音も出ないくらい正論で攻めてくる父の説教は、心が折れそうになる。
恐る恐る訊いてみた。
だが幸いなことに、外泊の件は母がうまく取り繕ってくれていたみたいで、今回は父からのお咎めはなさそうだった。
『すごい! やっぱりこの人天才かも』
部屋に戻ると、服を着替えながらPCを立ち上げ、昨日ヨシキさんから頂いたDVD-Rを早速セットする。
今しがたの説教のことなどすぐに忘れて、わたしはモニタに見入った。
画面に映し出される美麗な画像に、心躍らせる。
こんなに綺麗に撮ってもらえるなんて、わたしはなんて幸せなんだろう。しかも恋人同士にもなれて、来週にははじめての旅行にも行けるし。
“ピロピロピロ~♪”
そのとき携帯の着信音が鳴った。
このメロディは、優花さんからだ。
「不良娘はもううちに帰ってる?」
開口一番、優花さんはわたしをからかう。
「ええ。さっき帰り着きました。昨日はご迷惑おかけしてすみません」
「そんなのいいって。で、どうだった?」
「え?」
「昨夜はヨシキさんといっしょだったんでしょ?」
「え、ええ…」
「話しなさいよ。なにもなかったなんて、言わせないわよ」
「ええ。無事に、なんとか…」
「なんとかって… もうヤッちゃったの? 凛子城の落城、めっちゃ早かったわね」
「すみません」
「あやまらなくてもいいわよ。まあ、あのヨシキさんなら、『侵略すること火の如し』だろうし」
「…ええ。なんか、すごかったです」
「え~! どうすごかったの? 教えて教えて!」
例によって優花さんの容赦ない追求にあって、わたしは昨夜と今日のできごとを、ことごとく白状させられた。
こうして優花さんに話していると、ヨシキさんと触れあっていた感覚が甦ってくるみたい。
さっき抱かれたばかりだというのに、もうからだが火照ってしまう。
つづく
まる1日以上いっしょにいたせいで、別れが辛い。
名残を惜しむように、別れの挨拶をしながらクルマのなかでキスをしているうちに、今日も門限を少し過ぎてしまう。
「…ただいまぁ」
小声で言いながら、わたしはこっそり玄関の引き戸を開けた。
さっさと2階に上がって、自分の部屋に入ってしまおう。
しかし、わたしの帰ってくる気配に気づいていたのか、玄関には母がすでに待ち構えていた。
「今日も遅いわよ。凛子、いい加減にしなさい」
「ごめんなさい」
「ちゃんと門限を守らないと、外出禁止にしますからね」
それはひどい!
思わず不満が口をつく。
「だいたい、10時門限なんて早過ぎます。わたしもう高校生なのに」
「当たり前でしょう。あなたはまだ高校生なのよ。10時でも遅いくらいです。要求や不満があるなら、キチンと義務を果たしたあとに主張しなさい。決められた約束を自分から破っておいて、それに文句をつけるのは、盗人たけだけしいというのよ。だいたい…」
しまった。
母の場合、ひとつ文句を言えば、十倍に小言が増えるんだった。
こうなってしまったら、説教が終わるのを口を噤んでひたすら待つしかない。
ひとしきり小言を吐き出して、母も気が治まったのか、ようやく解放される。
「あの… お父さまは…」
父からも説教を喰らうのかなぁ。
感情的に畳みかけてくるような母のお小言もめんどくさいけど、ぐうの音も出ないくらい正論で攻めてくる父の説教は、心が折れそうになる。
恐る恐る訊いてみた。
だが幸いなことに、外泊の件は母がうまく取り繕ってくれていたみたいで、今回は父からのお咎めはなさそうだった。
『すごい! やっぱりこの人天才かも』
部屋に戻ると、服を着替えながらPCを立ち上げ、昨日ヨシキさんから頂いたDVD-Rを早速セットする。
今しがたの説教のことなどすぐに忘れて、わたしはモニタに見入った。
画面に映し出される美麗な画像に、心躍らせる。
こんなに綺麗に撮ってもらえるなんて、わたしはなんて幸せなんだろう。しかも恋人同士にもなれて、来週にははじめての旅行にも行けるし。
“ピロピロピロ~♪”
そのとき携帯の着信音が鳴った。
このメロディは、優花さんからだ。
「不良娘はもううちに帰ってる?」
開口一番、優花さんはわたしをからかう。
「ええ。さっき帰り着きました。昨日はご迷惑おかけしてすみません」
「そんなのいいって。で、どうだった?」
「え?」
「昨夜はヨシキさんといっしょだったんでしょ?」
「え、ええ…」
「話しなさいよ。なにもなかったなんて、言わせないわよ」
「ええ。無事に、なんとか…」
「なんとかって… もうヤッちゃったの? 凛子城の落城、めっちゃ早かったわね」
「すみません」
「あやまらなくてもいいわよ。まあ、あのヨシキさんなら、『侵略すること火の如し』だろうし」
「…ええ。なんか、すごかったです」
「え~! どうすごかったの? 教えて教えて!」
例によって優花さんの容赦ない追求にあって、わたしは昨夜と今日のできごとを、ことごとく白状させられた。
こうして優花さんに話していると、ヨシキさんと触れあっていた感覚が甦ってくるみたい。
さっき抱かれたばかりだというのに、もうからだが火照ってしまう。
つづく
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